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旅の取材記
ことわざにも表われている、お茶への親しみ。

ベトナムの人々に一番よく飲まれているのはシンプルな緑茶。日本の緑茶は玉露など、甘みを楽しむものが多いですが、ベトナムの緑茶はその渋みと濃さを楽しむのが基本。お茶屋で緑茶について訊ねると、みんな口をそろえて「緑茶は苦い方がいい!」と答えます。「渋くて濃い緑茶でも、最後に苦みではなく甘みが残るのが良い緑茶なんだよ」と、教えてくれました。

市内でお茶屋を営みながら、ベトナム茶道の伝承活動をされているスオンさんに、お茶に関する話をうかがいました。茶葉からお茶をいれる若者が少なくなっているものの、今でも花嫁修業の一環としてベトナムの人たちに受け入れられているベトナム茶道。その歴史は王朝時代までさかのぼり、古くからベトナムの地に根付いているようです。

スオンさんにベトナム茶道の作法にのっとったお茶の飲み方を教えてもらいました。茶葉を入れた急須に熱湯を入れて2分ほど茶葉を蒸らした後、器にいれます。まずはお茶の香りを楽しみ、手で口元をおおいながらお茶をいただきます。3秒以上お茶を口の中にふくみ渋みと苦みを楽しみ、ゆっくりと喉に流し入れる…というのがベトナム茶道のお作法。細かい作法や流儀を重んじる日本の茶道と比べると、お茶そのものの味を楽しむことを目的としているようで、堅苦しくない自由な雰囲気が感じられました。

昔から伝わるベトナムのお茶に関することわざを、スオンさんから教わりました。「水が一番、茶が二番。いれる人が三番で、茶器が四番」。これは、茶葉と一番相性が良いのは、その茶葉がとれた土地の水であるということわざだそう。たとえ高価な茶器がなくても誰でもお茶は楽しめること、作法よりもおいしさを引き出し合うものを組み合わせる方が大切なこと。そんなことを伝えることわざに、お茶はベトナムに住む全ての人たちに親しまれていることを実感しました。

一日のはじまりは、一杯のお茶から。

ハノイから車で3時間ほど離れた場所にある、タイグエン省のラ・バン村。この村で茶畑を営むナムお母さん一家を訪れました。

7人の子供と、13人の孫に囲まれて生活しているナムお母さん。茶畑での仕事は子供たちが引き継ぎ、孫たちや庭で飼われている動物の世話をしながらのんびりとした生活をしています。そんなナムお母さんの一日は、朝起きてまず家族のために温かいお茶をいれることからはじまります。「お茶を飲むのは、朝起きてから、お昼ご飯を食べた後、お昼寝の後、そして夕飯を食べた後の1日4回。お茶をいれるのが私の仕事なのよ」と、お茶を飲むことが生活の一部になっていることを教えてくれました。

「ベトナムのお茶の特徴は香りと味の濃さ。飲んだ後で口の中に一瞬、甘みが広がるの。家族団らんの場にお茶は欠かせないわね」と言うナムお母さん。旦那さんも息子さんたちもお酒は飲まず、家族全員お水と温かいお茶しか飲み物は口にしないのだそう。子供たちにとってお茶は苦くないのかと訊ねると「最初は苦いっていうけど、だんだん飲めるようになっていくわね」と教えてくれました。世代を問わず、お茶を愛するベトナムの人たちの文化が家族団らんの場から生まれていることを感じさせられる一言でした。

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