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旅の取材記
素材のおいしさを引き出すための、ひと手間。

オアハカから車で40分ほど離れた、羊毛の織物で知られるテオティトラン・デル・バジェという村。この村に住む7人家族のお母さん、アンヘラさんは民族衣装を身にまとい、私たちを出迎えてくれました。庭に植えられているライムの木から熟した果実をとり、「これから今日の分のアグア・デ・リモンを作るから、あなたたちもお飲みなさい」と明るい声で言いました。

「アグア・デ・リモンは売られているものもあるけど、私は自分で作るの。今はエスプリミドールを使う人も多いけど、手で搾った方がおいしいと感じるから、私は使わないのよ」と、手でライムを搾りはじめます。お砂糖の量も控えめのアンヘラさんのアグア・デ・リモンは、実にスッキリとした味わい。家庭それぞれの味があることを改めて感じさせられました。
続いて作ってくれたのが、テオティトランの伝統料理のスープ『ラヒア』。「機械で挽いたトウモロコシ粉は、おいしくないの。だから市販のものは買わず、自分ですりつぶすの」と、手入れの行き届いたメタテという道具でトウモロコシをすりつぶします。すりつぶしたトウモロコシとカボチャの花、チェピィルと呼ばれるハーブを煮込み、ライムを搾っていただくスープは、家族の誰もが大好きな料理。

「小さい頃からお母さんが作っているのを見て覚えたから、レシピは頭の中にあるのよ」という料理上手なアンヘラさんに料理をおいしく作るコツを聞くと、「自然の食べ物を大切にして、自然本来の味にこだわることね」という答えが返ってきました。素材本来の味が引き出されているから、塩とライムのシンプルな味付けだけでもおいしくいただける。そして素材の味を出すために、ひと手間を惜しまない。メキシコのお母さんたちの料理の哲学を学びました。

受け継がれる料理の知恵と、家族への愛情。

ゲストハウスを営むコンチータさんと、彼女の娘で料理の先生をしているノラさんにもメキシコの味を教えてもらいました。ふたりが作ってくれたのは、魚介類のマリネ『セビッチェ』。ライムとオレンジの果汁を合わせたマリネ液に湯通しした白身魚を漬け込み、サイの目切りにしたタマネギ、キュウリ、アボカド、熟す前のマンゴー、パクチーを和え、最後に塩とライム果汁で味をととのえたもの。白身魚の淡白さと、塩とライムの味つけが非常にマッチしていて、「塩とライム」を組み合わせたときのおいしさを心底感じる料理でした。
料理上手なふたりにも、「塩とライム」がなぜ合うのか訊ねてみました。「ライムの酸味が塩味を中和するの。ライムを加えることで、しょっぱさが丸くなって、味わいが増すのよ」とノラさんが言うと、コンチータさんは「ライムが塩を引き立てるのか、塩がライムを引き立てるのかは分からないわ。でも、もし塩とライムがなくなったら、困ってしまうのは分かるわね」と笑いながら答えてくれました。
メキシコのキッチンに欠かせない存在、塩とライム。素材本来の味を大切にしているから、シンプルな味つけでおいしい料理ができる。そして、ごまかしのきかないシンプルな味つけだからこそ、ひと手間を惜しまない。メキシコのお母さん一人ひとりの料理の知恵と、家族への愛情。それが代々受け継がれる尊さ。大切なことをたくさん教えてもらいました。

メキシコ オアハカの知恵から
インスピレーションを
受けて生まれた商品
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