試合詳細レポート

2008

キリンカップサッカー2008
5月24日 日本代表×コートジボワール代表

  今年で29年目を迎えた『キリンカップサッカー』は、日本代表にとって貴重なテストマッチの機会である。過去の大会は、FIFAワールドカップやAFCアジアカップなどへの、確かな助走となってきた。
  初出場のコートジボワールと、今大会4度目の出場となるパラグアイを迎えた『キリンカップサッカー2008』も、重要な意味を持っている。アフリカと南米の強豪とのゲームから、目前に迫った2010FIFAワールドカップ南アフリカTMアジア3次予選に向けて、チーム力をアップさせていかなければならないからだ。
  豊田スタジアムで『キリンカップサッカー』が行なわれるのは、今回が初めてだった。当日はあいにくの雨模様となったが、日本代表を応援するサポーターやファンが早くからスタンドに詰めかけ、国際試合ならではの熱気に包まれていた。
  日本代表も期待に応えた。アフリカの強豪コートジボワールを1-0で退け、2年連続の『キリンカップサッカー』優勝へ大きな一歩を踏み出したのである。
  日本の先発メンバーには変動があった。3月のバーレーン戦に続いてスタメンに名を連ねたのは、DF中澤佑二(横浜F・マリノス)、駒野友一(ジュビロ磐田)、MF今野泰幸(FC東京)、FW大久保嘉人(ヴィッセル神戸)の4人のみ。GKには楢正剛(名古屋グランパス)が起用され、初代表の長友佑都(FC東京)が左サイドバックに抜てきされた。また、中澤とセンターバックのコンビを組んだ田中マルクス闘莉王(浦和レッズ)も、岡田武史監督のもとでは初出場である。
中盤には海外組の名前があった。ドイツ・ブンデスリーガのVfLヴォルフスブルグに所属する長谷部誠と、フランス1部リーグのル・マンからサンテティエンヌ移籍が発表されたばかりの松井大輔が、岡田監督指揮下で初出場を果たすのである。また、大久保のパートナーとなる2トップの一角には、豊田スタジアムをホームとする名古屋グランパスの玉田圭司が指名された。
  新たなタレントを迎えた攻撃陣は、開始早々から躍動する。6分、闘莉王のオーバーラップを起点に左サイドでダイレクトパスがつながり、長友がゴールライン際までえぐってクロスを供給する。飛び込んだ大久保が右足ボレーで合わせるが、惜しくもゴール右へ逸れていった。
  16分の決定機はリスタートから。遠藤保仁(ガンバ大阪)の左CKを、ニアサイドに飛び込んだ大久保が右足で合わせる。シュートはゴールカバーに入っていた相手DFにかき出されてしまったが、バリエーション豊富な攻撃に得点の予感が漂う。
  そして21分、雨の豊田スタジアムに歓喜が訪れた。右サイドでボールを奪った日本は、今野がタテのスペースへスルーパスを通す。タッチライン際を走り込んだのは、ボール奪取から足を止めずにランニングした長谷部だ。
「中がフリーだったので、合わせるだけだった」というドイツ帰りのMFが、ライナーのクロスをゴール前へ。DFを引き連れて大久保がニアサイドへ飛び込むと、ゴール正面の玉田はまったくのフリーとなる。
  Jリーグで好調を維持する背番号11のレフティーは、ストライカーの責任をきっちり果たした。左足に確かな感触を残したボレーシュートが、GKの股間を破ってゴールへ転がり込んでいく。「いいボールが来た。狙いどおり」と振り返った玉田にとって、2010FIFAワールドカップドイツTMのブラジル戦以来となる国際Aマッチのゴールである。
コートジボワールのバヒト・ハリルホジッチ監督も、「日本は最初の20分、より組織的でプレスもしっかりかけていた」と、納得するしかなかった。
  この得点シーンに象徴されるように、日本の攻撃はスピーディで正確だった。「前へ前へという意識をずっと徹底されている」と今野が語るように、相手ゴールへ近いところでボールを奪い、そのままの勢いでフィニッシュへつなげていく岡田監督の意図が、チームに浸透していることをうかがわせている。
  コートジボワールが無抵抗だったわけではない。ディディエ・ドログパ(チェルシー)らの主力を欠いているものの、来日した選手は欧州各国クラブに所属している。個々のポテンシャルは高い。「失点したあとから、我々は本来のプレーをやるようになった」とハリルホジッチ監督が振り返ったように、アフリカ特有の身体能力を生かした攻撃で、日本に圧力をかけてきた。
  しかし、日本の守備陣は慌てなかった。1対1ではクリーンかつハードにプレーし、相手のスピードや個人技を粘り強く潰していく。後半終了間際に訪れたピンチは、シュートコースをきっちり消した楢の好判断で危機を回避した。また、初代表を記録した21歳の長友も、「ここまでやれるとは思わなかった」と岡田監督に言わしめる活躍で、無失点の勝利に貢献している。
  チャンスの数が必ずしもスコアに反映されなかったのは、雨に濡れたピッチコンディションの影響もあっただろう。後半はやや足が止まってしまった印象もあるが、そのなかでも勝ち点3をつかんだのは大きい。
  3月のバーレーン戦敗退のショックは、この日の勝利で払拭できたはずだ。過去1勝2分け2敗と苦戦しているパラグアイからも勝利をつかめば、チームはさらに自信を深めるに違いない。27日に埼玉スタジアム2002で行なわれる『キリンカップサッカー2008』の最終戦は、いつも以上に見逃せないゲームとなりそうだ。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■5月24日 豊田スタジアム
日本代表 [1ー0] コートジボワール代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) GK 楢 正剛
 2) MF 長谷部 誠
 3) DF 田中 マルクス闘莉王
 4) DF 中澤 佑二
 5) FW 玉田 圭司
 6) DF 遠藤 保仁
 7) DF 長友 佑都
 8) DF 駒野 友一
 9) MF 今野 泰幸
10) MF 松井 大輔
11) FW 大久保 嘉人
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) GK 楢 正剛
     2) MF 長谷部 誠
     3) DF 田中 マルクス闘莉王
     4) DF 中澤 佑二
     5) FW 玉田 圭司
     6) DF 遠藤 保仁
     7) DF 長友 佑都
     8) DF 駒野 友一
     9) MF 今野 泰幸
    10) MF 松井 大輔
    11) FW 大久保 嘉人

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> 岡田 武史

<出場選手>

■5月24日/豊田スタジアム
日本代表 (1) 1 <玉田>
コートジボワール代表 (0) 0
日本    
GK
DF 中澤 田中 駒野 長友
MF 遠藤 松井(香川) 今野 長谷部
FW 玉田(矢野) 大久保
コートジボワール    
GK アリスティド・ブノワ・ゾクボ
DF エマニュエル・エブエ エティエンヌ・アルトゥール・ボカ マルク・アンドレ・ゾロ
メイテ・アブドゥラエ ギー・ロラン・ドメル(イゴール・アレクサンドル・ロロ)
MF シアカ・ティエヌ ディディエ・ゾコラ エメルス・ファエ(セイドゥ・ドゥンビア)
カンガ・アカレ(カイン・カンディア・エミル・トラオレ)
FW ブバカル・サノゴ

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

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