若き「鷹」の日本と未来の王者の洗礼

　93年10月のアメリカワールドカップ・アジア最終予選で、本大会まであと一歩のところで出場権を逃した日本代表は、94年3月に、イタリア・ASローマ において現役時代“ローマの鷹”と呼ばれたブラジル人のパウロ・ロベルト・ファルカン監督を招聘し、前園真聖、岩本輝雄ら若手選手を次々と抜擢。この大会でチーム再建に向けての新たなスタートを切った。当初、アルゼンチン代表が来日予定だったが、マラドーナの入国問題で取りやめになった。代わりにオーストラリアが呼ばれ、広島で初戦が行われた。試合は前半、浅野哲也が直接ＦＫからの豪快なミドルシュートを決め日本が先手を取ったが、後半に入って追いつかれ1-1で引き分けた。第2戦はフランス代表がオーストラリア代表を1−0で撃破。優勝の行方は第3戦の日本代表対フランス代表戦の結果次第となった。フランス代表は94年アメリカワールドカップ出場を達成できなかったが、98年フランスワールドカップ優勝の主力であるデサイー、ジョルカエフに加え、かつてのスター、カントナ、パパン、ジノラらを集めた“ドリームチーム”。うまさと強さを兼ね備え、 ジョルカエフ、パパン、オウンゴール、ジノーラと4点を連取し、力の差を見せつけた。日本はオランダから帰ったばかりの若きエース・小倉隆史の代表初ゴールで一矢を報いただけだったが、世界のトップレベルの実力を肌で感じ取る貴重な経験となった。