試合詳細レポート

2003

キリンチャレンジカップ2003
4月1日 U-22日本代表×U-22コスタリカ代表

 U-22日本代表がU-22コスタリカ代表を迎えた<キリンチャレンジカップ2003>は、1-1の引き分けに終わった。来月1、3日に開催されるアテネ五輪アジア地区2次予選の壮行試合と位置づけられたこのゲームは、愛知県豊田市の豊田スタジアムに2万2560人の観衆を集めて行われた。

 コスタリカは2001年のU-20世界選手権(ワールドユース)で、グループリーグを3戦全勝で突破した強豪である。今回の来日メンバーではGKドルモンド、CBサラサール、MFロペスらがワールドユース出場組だ。同大会でグループリーグ敗退に終わっている日本にすれば、世界との距離感を測る格好の機会である。

 ゲームの主導権は日本が握った。攻撃的MFの松井が2トップの大久保と中山を操り、6分、9分と際どい場面を作り出す。さらに石川と根本の両アウトサイドがタイミングよく前線へ飛び出し、攻撃に厚みを加えていた。阿部と森崎和のダブル・ボランチも、最終ラインをサポートしつつ効果的に攻撃に絡んでいった。

 最初の決定的な場面は32分。1本のタテパスから阿部が左サイドを抜け出し、ライナー性のセンタリングを中央へ。フリーで飛び込んだ大久保が左足で合わせたが、シュートはワクを外れた。2分後、今度は松井が左サイドを突破し、大久保がフリーでヘディングシュートを放つ。これもワクを捕らえることはできなかったが、ゴールの予感が豊田スタジアムを駆け抜ける。

 そして37分、青の歓喜が弾けた。ゴールまで約25メートルの距離で得た直接FKを、阿部が右足で鮮やかに蹴り込んだのである。本来であれば左足の根本が蹴ることの多い位置だが、GKが左足のキックを予測したポジションをとっていることを見た2人が相談し、阿部がキッカーとなった。彼らの狙いどおりに、5枚のカベの右側を巻いたボールはゴール右スミに吸い込まれたのだった。

 その後も日本は、リズミカルかつ力強くボールを回していく。ユニホームを引っ張られても、腕をつかまれても、主審のホイッスルを吹くまではプレーをやめない。松井が、大久保が、石川が、貪欲にゴールを目ざしていった。「世界レベルでは技術だけでは通用しない。ここからはそれがベースにあって、強く逞しくなっていかないと世界の頂点には近づけない」という、山本監督の言葉を裏づける頼もしい姿があった。

 後半に入ると、コスタリカが攻勢を仕掛けてくる。早めの交代で全体の運動量低下を抑え、新たに投入されたフレッシュな選手が日本のゴールを脅かしてきた。それでも日本は、試合の主導権を譲らない。森崎和がいきなり右足ミドルを放ち、中山のヘディングシュートが鋭くゴールを襲う。途中出場の駒野が右サイドでアクセントとなり、原や田中の俊敏な突破が相手DFにプレッシャーをかけていく。微妙なタイミングのズレやシュートの精度を欠いたことで追加点は奪えなかったものの、宮崎で行われた事前合宿でフィニッシュまでのパターン練習を繰り返してきたこともあり、コンビネーションが熟成してきたことをうかがわせた。

 70分に喫した同点ゴールにしても、角田の横パスがブレネスにわたり、そのまま持ち込まれてシュートを決められたのだが、この場面から選手たちは重要なものを学んだ。ブレネスに対応した青木は「一つひとつのプレーの重みを感じた」と悔しさをにじませ、阿部は「一瞬の怖さを知った」と振り返った。それこそは、山本監督がこの試合に求めた「世界基準」だったのだ。

 試合後、山本監督は「チームとしての方向性は見えた。課題は出たが、自信もついた」と振り返った。若いチームには、成功も失敗もすべてが経験として蓄積されていく。アテネ五輪への本格的な第一歩は、確実に記されたと言っていいだろう。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■4月1日 愛知・豊田スタジアム
U-22日本代表 [1ー1] U-22コスタリカ代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) GK 林卓人
 2) DF 角田誠
 3) MF 森崎和幸
 4) MF 阿部勇樹
 5) DF 三田光
 6) FW 中山悟志
 7) FW 大久保嘉人
 8) MF 石川直宏
 9) MF 根本裕一
10) DF 青木剛
11) MF 松井大輔
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) GK 林卓人
     2) DF 角田誠
     3) MF 森崎和幸
     4) MF 阿部勇樹
     5) DF 三田光
     6) FW 中山悟志
     7) FW 大久保嘉人
     8) MF 石川直宏
     9) MF 根本裕一
    10) DF 青木剛
    11) MF 松井大輔

写真提供/(c)Jリーグフォト

<U-22代表監督> 山本昌邦

<出場選手>

■4月1日/愛知・豊田スタジアム
U-22日本代表 (1) 1 <阿部>
U-22コスタリカ代表 (0) 1 <ブレネス>
日本    
GK
DF 角田 青木 三田
MF 石川(駒野) 阿部(森崎浩) 森崎和(鈴木) 根本 松井(田中)
FW 大久保 中山(原)
コスタリカ    
GK ドラモンド
DF ビジャロボス ポルトゥゲス ウマーニャ サラサール ミラー(ブレネス)
MF ロペス ボラーニョス(マリン) ディアス
FW サボリオ(アギラル) スコット(エルナンデス)

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

<ポスター・パンフレット>

  • 試合ポスター 名将、アーセン・ベンゲル監督が試合結果を予想した大会告知ポスター。ベンゲル監督の予想は3-1で日本の勝利。さて、実際の結果は・・・?試合レポートをどうぞご覧ください。
  • 試合パンフレット
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