飲料を通じたCSVを目指して。「午後ティー HAPPINESSプロジェクト」第一弾となる、熊本県産いちごティー誕生秘話

熊本城の被災をはじめ、県内各地に甚大なる被害をもたらした熊本地震。キリングループでは地震発生の5カ月後から復興応援活動を開始し、これまでさまざまな活動に取り組んできました。その一環として行ったのが、熊本県産いちご『ゆうべに』のブランディング支援です。

その『ゆうべに』を使用し、2021年6月に発売となるのが『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』。この商品がどのようにして生まれたのか。熊本に、そして全国のお客さまに、どんな価値をもたらすのか。

『ゆうべに』のブランディング担当者と、商品企画に従事したキリンビバレッジの社員が、これまでの歩みを振り返りながら、開発の背景を語り合います。

野田憲さん
JA熊本経済連

熊本県産いちご『ゆうべに』のブランディングを担当。『キリン 午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』の開発においては、商品計画段階から原料調達・圃場案内・味覚確認をはじめ、さまざまなご協力をいただく。

山岡加菜
キリンビバレッジ株式会社マーケティング部 ブランド担当

2015年入社。営業部を経て2019年より本社マーケティング部に異動し、主に小岩井ブランドを担当。2020年10月より午後の紅茶担当となり、『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』の開発に従事。

熊本とキリングループが歩んできた復興への道のり

—— 2016年、最大震度7を記録した熊本地震。キリングループでは地震発生の5カ月後に「復興応援 キリン絆プロジェクト 熊本支援事業」を発足させました。

山岡:キリングループが熊本への復興応援を始めたのは、2016年10月からです。熊本県特産の農産物支援などの「食産業復興支援」、阿蘇エリアの観光事業や熊本市街地などの「地域の活性化支援」、日本サッカー協会と連携したサッカー教室などの「心と身体の元気サポート」の3つを柱に、地域のニーズに寄り添いながら復興から未来へつながる活動の支援を推進してきました。

その取り組みは支援事業だけにとどまらず、キリングループの事業を通じた取り組みとして現在も継続中です。

私自身、震災直後のニュースで見た熊本城の様子に大きな衝撃を受けましたが、熊本の皆さんが受けたショックは、私が想像できないほど大きかったと思います。

野田:そうですね。前震のあとも強い揺れが続いて、本震が発生したのは真夜中のことでした。周辺地域はパニックでしたし、私も「このまま、熊本の町が消えてしまうんじゃないか」という恐怖に駆られました。

それからの復旧はとても大変でしたし、今も完全に復興したわけではありません。だからこそ、キリンさんをはじめとする多くの支援に感謝しています。

特に今回ご一緒した『午後の紅茶』は、個人的にも“あのCM”がすごく印象に残っていたので、お話をいただいたときは嬉しかったですね。

山岡:南阿蘇鉄道の見晴台駅を舞台にした『午後の紅茶』のCMですね。震災発生の半年後から、南阿蘇村を舞台にシリーズでCMを制作しましたが、上白石萌歌さんの美しい歌声はもちろん、周辺の素晴らしい自然風景にも大きな反響をいただきました。

  • (CMの舞台となった南阿蘇鉄道の見晴台駅。駅構内には『午後の紅茶』の自販機が現在も設置されています)

山岡:嬉しいことに、あのCMをきっかけに熊本を旅行された方も多かったと聞いています。

野田:そうなんです。見晴台駅は無人駅ですし、それまでは熊本の人間でもあまり知らないようなスポットだったんですよ。県内在住の私でさえ、「ここはどこだ?」と一瞬わからなかったほど(笑)。

それがCMの放送以降、南阿蘇鉄道はじめ見晴台駅の認知度がぐんと上がって、県外の方に南阿蘇を紹介するときには「『午後の紅茶』の、あのCMの舞台です」とお伝えしているくらいです。今では南阿蘇の大切な観光資源のひとつになっています。

山岡:ありがとうございます、そう言っていただけて嬉しいです。2019年に「復興応援 キリン絆プロジェクト」で熊本のボランティアに参加して、そこでお手伝いしたのが南阿蘇鉄道の除草作業だったので、実は私個人としても、南阿蘇は思い入れの強い土地なんです。

ボランティアの思い出はたくさんありますが、それと同時に熊本の食べもののおいしさも印象的でした。フルーツや野菜、名産のあか牛も。あか牛はすっきり食べられるのに、とても旨味が強いことに驚きました。

野田:熊本には、キリンさんにもご支援いただいた「くまもとの赤」というブランドがあるくらい、“赤い特産品”がたくさんあります。あか牛もそうですし、トマトもスイカも生産量日本一。私がブランディングで関わっているいちごの『ゆうべに』もそのひとつですが、おいしい食材が採れる理由は水質の良さにあると言われています。

熊本県内の水道水は約8割が地下水で賄われていて、“蛇口をひねればミネラルウォーター”といわれるほど水がきれいなんです。熊本で撮影された『午後の紅茶』のCM第二弾に登場した白川水源も、県内を代表する有名な水源。水が透き通っていて、とても美しいんですよ。

  • (環境庁の「名水百選」に選ばれている白川水源は、『午後の紅茶』熊本復興支援CM第二弾のロケ地にも)

“しあわせの赤い絆”が育む、『ゆうべに』の味

—— 豊かな水資源を礎に、美食の宝庫である熊本県。なかでもキリングループでは、熊本県産のオリジナルいちご『ゆうべに』のブランディング支援を行いました。

山岡:はい。「キリン絆プロジェクト」の食産業復興支援の一環として、『ゆうべに』のブランディングをお手伝いさせていただきました。今、こうして野田さんとお話ができているのも、「キリン絆プロジェクト」によってできた関係があってこそです。

野田:『ゆうべに』という品種が生まれたのは2015年です。手塩にかけて開発した品種を、さぁ周知していくぞ、というタイミングで発生したのが熊本地震でした。

農家さんも私たちJA職員も非常に意気消沈していましたが、それだけにキリンさんの支援が力になりました。キリンさんのお力添えのもと、『ゆうべに』のキャラクターまで生み出すことができて。

山岡:「ゆうべに三兄弟」ですよね。このキャラクター、本当にかわいいんです。それに、三兄弟である理由にも感動させられました。それぞれに太郎・次郎・三郎という名前があり、この3人がいちごの栽培、さらには絆も表現していると教えていただいて。

野田:いちごは、親株から伸びたランナー(つる)から子株が生まれ、子株から伸びたランナーから、その年に出荷されるいちごが生まれます。これを栄養繁殖といいますが、農家さんは親株のことを太郎、子株のことを次郎、そこから生まれる新たな株を三郎と呼ぶそうです。

これが名前の由来ですが、栄養をつなげるランナーは、絆のつながりに似ていますよね。そこで『ゆうべに』のキャッチコピーも「しあわせの赤い絆」としたんです。

山岡:私たちは被災地の皆さんと築いた絆を大切に、復興応援を続けてきました。『ゆうべに』のキャッチコピーを知ったとき、熊本の農家さんとのシンパシーを感じたんです。そして何より、フレッシュな『ゆうべに』の味わいに感動しました。甘味と酸味のバランスがとても良くて、上品な味。甘さに丸みがあるというか。

野田:そうなんです、『ゆうべに』はフレッシュさが魅力。程よい酸味が甘味を引き立て、爽やかな香りを楽しんでいただけます。ほかの品種よりも大ぶりで、スマートな円錐型も自慢です。

商品を通じたCSVの実現を目指して

—— その『ゆうべに』を使用し、2021年6月に発売となるのが『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』です。

山岡:『午後の紅茶』は誕生から今年で35周年を迎えます。これは、全国のお客さまのおかげに他なりません。そんなお客さまへの感謝の気持を伝えるための取り組みのひとつが、「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」の立ち上げです。

具体的には、復興応援先の国産素材を使用した商品の発売と、売り上げに応じた寄付を行う継続的な国内復興応援プロジェクトです。

その第一弾として生まれたのが『午後の紅茶for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』。熊本県産素材のおいしさに魅力を感じたり、熊本復興応援に共感し、この商品をより多くのお客さまに手に取っていただくことで、商品を通じたCSV(※1)の実現を目指します。今回、商品の企画段階から野田さんにはたくさんのご協力をいただきました。本当にありがとうございます。

野田:いえいえ、私たちこそです。『ゆうべに』のブランディング支援をいただいていた当時、キリンさんが応援してくれるならと、まずは私たちJA職員が奮い立ち、奮闘する職員の姿を見た農家さんもまた、さらに生産に力を入れてくださいました。キリンさんの支援が、農家さんと私たちの絆を強めてくれたんです。

そして再び、今回は商品を通じてキリンさんと手を携えることができる。全力で協力しようと、お声がけいただいたときから決めていました。

山岡:プロジェクトの第一弾として熊本の『ゆうべに』を選んだのも、復興応援を通じて築いてきた、現地の皆さんとの絆があったからです。

野田さんには『ゆうべに』の調達だけでなく、熊本県産紅茶の歴史なども教えていただきました。この商品の主役はもちろんおいしいいちごなのですが、紅茶(を代表する)ブランドとしては、紅茶葉も熊本産※2を使用したく、ご協力をお願いしました。

野田:実は熊本は、紅茶との関わりが深い土地なんです。国内に紅茶葉の栽培を根付かせようと、日本政府が紅茶伝習所という施設を設置したのが明治8年。
その設置した場所こそが、熊本県山鹿市です。

山岡:熊本産のいちごと、熊本県産の紅茶葉。相性抜群な味わいに仕上げることができたと自負しています。いちごを用いた飲料というと、いちごミルクのような、こっくり甘い味を想像される方も多いと思いますが、『ゆうべに』の特長であるフレッシュさ、上品で華やかな甘さを感じていただけるはずです。

野田:私も試飲させていただきましたが、「おいしい」の一言に尽きますね。山岡さんのおっしゃる通り、『ゆうべに』特有の甘さが生きていて。ストレートに甘いのではなく、ふんわり香るような、まさに上品な甘さ。甘いものが苦手な方にも楽しんでいただけると思いますし、『ゆうべに』の瑞々しさもそのままです。

熊本と育んだ絆を、さらに全国へとつなぐために

—— 熊本とキリングループの絆が生んだ『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』。味わい以外の部分からも、両者の絆を感じられます。

山岡:パッケージにあしらったリボンも熊本と全国のお客さまを結ぶ絆を表現していますし、発売に合わせて制作したウェブCMも絆がテーマです。熊本の皆さんとキリングループの絆はもちろん、この絆を全国のお客さまにつなぐことが私たちの役目だと思っています。

今回、「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」として、商品の売上1本につき3.9円を被災地復興に活用する取り組みも行いますが、それだけでなく、商品を飲んでくださるお客さまが熊本の農家の方々を想像できるような、そんな映像に仕上がっているはずです。

キリン 午後の紅茶 「あなたのおいしいが、誰かへの応援になる。熊本応援いちご午後ティー」篇 27秒 

野田:ウェブCMに出演しているのは、本物の農家さんです。こちらもキリンさんからお声がけをいただいて、熊本で『ゆうべに』を栽培されている方にお願いしました。

実際に映像を拝見しましたが、とても自然な笑顔ですよね。自分が育てた『ゆうべに』を使った飲料が、全国の“誰か”の手元に届いて、おいしく飲んでくれている。そんな様子をイメージして自然とこぼれた笑顔ではないでしょうか。

山岡:CMで表現したかったのは、まさにそうした目に見えないつながりです。全国のお客さまに『午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー』を手に取っていただくことで、寄付金というかたちでも、被災地に想いを馳せるというかたちでも、熊本とのつながりを感じていただきたい。

私たちが商品に込めた想いを実感いただけたなら、皆さんにあたたかな、ハピネスな気分になっていただけるのではないか、と。

野田:少なくとも熊本の人間は、ハピネスな気分になれるに違いありません。私のように農業に携わる者だけでなく、『ゆうべに』をはじめとする特産品は県民の自慢です。なので、商品を手に取るたび、ウェブCMを見るたびに誇らしい気持ちになります。

山岡:生産者の皆さんが誇りを持って育てた味わいをお届けし、全国のお客さまにおいしいと感じていただけたなら、『午後の紅茶』にとっても、キリングループにとっても大きな支えになります。

そんな風に生産者も消費者も私たちも、三方良しの関係性を築いていくことが、CSVのひとつのかたちなのかもしれません。これからも生産地との絆を大切に、その絆を全国に広げるような取り組みを続けていきたいと思います。

午後ティーHAPPINESSプロジェクトサイト 

  1. CSV…”Creating Shared Value”の略。社会課題への取り組みによる「社会価値の創造」と「経済価値の創造」の両立により、企業価値向上を実現すること。
  2. 熊本県産紅茶葉5%使用(果汁0.1%)