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「本当のうまさ」を求めて 最高品質の哲学を探る対談企画 第1弾 本麒麟×バーミキュラ スペシャル対談「本当のうまさ」を求めて 最高品質の哲学を探る対談企画 第1弾 本麒麟×バーミキュラ スペシャル対談

愛知ドビー株式会社 代表取締役副社長 土方智晴 キリンビール株式会社 マスターブリュワー 田山智広愛知ドビー株式会社 代表取締役副社長 土方智晴 キリンビール株式会社 マスターブリュワー 田山智広

大ヒット商品であるバーミキュラと本麒麟の両者が考えている「本当のうまさ」をテーマに、お客様に応えてきたこと、追求してきたこだわり、そして今後の話などを、愛知ドビー株式会社 代表取締役副社長 土方智晴氏をお招きして、キリンビール マスターブリュワー 田山智広と対談しました。
※ 2020年11月13日に実施した対談内容となります。

お互いの商品の印象

Q.初の対談ということで、お互いの商品の印象はいかがでしたか?

田山)今日はお話しできるのをとても楽しみにしていました。ぜひバーミキュラのフライパンを事前に使ってみたいと思っていましたが、タイミング的に買ったら、手元に届くのが3~4カ月ということで、間に合わないな、と思い、貸して頂けないかご相談させて頂きました。フライパンを使ってみた感想ですが、正直おどろきましたね。前評判は高かったので、相当なものだろうと思っていたのですが、まずはシンプルな目玉焼きから作ってみたら、これが今まで作った目玉焼きのなかで最高においしいな、というのがレシピ本通りに作ったらできてしまったんですね。面白いな、と思って、色々理屈も調べてみて、なるほどな、と思いました。最近ですと、私も在宅勤務が多いので、昨日も使う機会があって、ステーキを焼いてみたんですね。本当に今までだったら、例えば肉だったら、何の肉料理にしようか、ハッシュドビーフにしようかな、ビーフストロガノフにしようかな、とか色々凝ったことを考えるんですけど、このフライパンならシンプルにステーキでいいじゃんって言う風に変わったんですね。あまり、ステーキそのものを家で食べる習慣がなかったんですが、やっぱり肉のうま味もしっかり感じられますし、本当に上手に焼けるので、なるほどな、と思って、借り物ではなく、自分のものにしたいな、と思って使っていました。

土方)私も実は、最近はクラフトビール以外飲んでいなかったんですね。そんな状況で、なんの先入観もなく「本麒麟」をいただいたのですが、本当にびっくりしまして、こんなにおいしいんだと思いました。私、ビール類とか新ジャンルとかに限らず、基本的にバーミキュラの料理に合うようなお酒しか飲まないんですよ。クラフトビールの苦みや甘みが好きで、それが合うと思って飲んでいたんですけど、実際本当にびっくりして。最初のコクのある凄く心地のいい苦みと、バーミキュラがいつも凄く大事にしていて、口から食べ物がなくなったあとも続くような甘みとか余韻とか、雑味のなさがですね、それが僕たちがおいしいと思っていることなんですけども、まさに「本麒麟」って、心地よい甘みがずっと続きながら、雑味がないんですよ。バーミキュラの味のコンセプトに凄く合っていて、例えば、バーミキュラの料理って、結構きつい調味料はあまり合わないんですよ。凄く優しい、いつまでも続く甘みが特長なので。(本麒麟を飲んでみて)ジャンルってどうでもいいな、って凄く痛感させられました。それぐらいおいしかったです。

田山)端的に言うと、どこが違うかっていうか、どう表現されますか?

土方)そうですね。五感それぞれであるんですが、味覚本来の話でいくと、やはり余韻ですね。最初にもインパクトがあるんですが、口からなくなった後も、ずーっと甘みが、心地よい甘みが残っていて、雑味を感じない。やっぱり、化学調味料の料理の味って、一気に感じるおいしさはあるけど、後味は、噛んだガムのような味になってしまう。そこを凄く気を付けています。

田山)フライパンが違うだけでこんなに味が違うのか、って正直凄く驚きましたね。後味、うま味が残るって言うのは、どう言う理屈なんですかね?

土方)我々も開発当時から、とにかく素材本来の味を引き出すものをつくるんだ、とやってきまして、ただのそれって言葉だったりとか、体験で感じた、こういうものがバーミキュラらしい味というのがありまして、実はそれ、うちの社員みんなが感じていることなんですよ。専属シェフが料理を作ったりすると、「これはバーミキュラらしくない」とか「これはバーミキュラらしい」とか言うんですけど。結局はやっぱり、雑味のなさとか、味に関しては、それが皆の共通項だと思います。

田山)余計なものがないっていうところが、むしろ本来素材が持っている味を引き立てる。凄く分かります。我々も凄くそれを意識していて、いきなり本題に入ってしまうんですけど、おいしいものは、その場だけでおいしいではだめだと思うんですね。日常の普段使いも、また飲みたくなる、と思っていただく事、実はアフターテイストがとても大事だと思っています。飲んだときのおいしさも大事ですが、実はそこの違いがめちゃめちゃ大きい。ですので、今の話をお聞きして、共通するものがあると思って聞いていました。

コロナ以前からお客様に支持される理由コロナ以前からお客様に支持される理由

Q.2020年はやはり激動の1年だったと思いますが、2つのブランドはコロナ以前から厚い支持を集めてきました。何故ここまで支持され続けているのでしょうか?

土方)やはり、なんで今、これだけのたくさんのお客様に我々のような小さな会社の商品が、愛していただけるか考えると、私たちは、「世界一おいしいものを作れるような鍋をつくりたい。」と考えていて、とにかく世界に誇れるような商品をつくりたい、とにかくお客様に喜んでいただくことが会社の利益になるということを、社長である兄と、バーミキュラをつくるときに約束して、今もやり続けています。実際、お客様に、おいしいものをお届けすることはやり続けなければいけなくて。「おいしい」って凄く曖昧な言葉で、皆おいしいって言うじゃないですか。でも「おいしい」を伝えることは凄く難しくて、言葉にして伝えれば伝えるほど分かりにくくなってしまう、伝わらないと思うんですけども。実際に食べていただくのが一番いいと思うのですが(笑)バーミキュラを使って作った料理は、想像を超えたおいしさなんだ、ということをやり続けることによって、もし上手く使えないお客様がいたら、自社のアフターサポートがあるんですけども、それを通じて必ずサポートし続ける。バーミキュラのおいしさへの信頼というのは10年間ずっと積み重ねていて、今も新しいフライパン、新商品を出しても、お客さんが「バーミキュラがおいしいというならおいしい」 「バーミキュラが最高傑作であるっていったら本当においしい」と言っていただいています。

田山)本当においしいというキーワードがそのものだと思いますね。このブランドもちょうど3年前に出させていただきまして、本当に、おかげさまでずっと高い支持をいただいていまして、販売も好調に推移しておりまして、かなりお客様にご支持いただいていて。これは何なのかというと、本当においしさ、うまさというところに尽きると思うんですね。それも気取った、変わったおいしさではなくて、普段使いって言うんですかね、「日常の本当に大切な日々の時間にしっかり信頼できるおいしさ」、っていうのが、ご支持いただいている理由かな、と思っていますし、そのために我々もこだわってつくっていますし、そんな勢いのあるブランドですね。

想定している「お客様像」

Q.お客様の信頼、普段使いというキーワードがあったかと思いますが、具体的に2つのブランドはどんなお客様を想定しているのでしょうか?

田山)普通のビール類好きのお客様が、「これいいじゃん」って選んでいただいていると思います。ビール類が好きで好きでたまらない、という人や、本当に日常の中で欠かせないものになっている、というお客様に強く支持いただいていると思います。それはやっぱりうまさというのがベースにあって、よく「めりはり消費」とか言いますが、私もこればっかり飲むわけじゃなくて時にはクラフトを飲むこともあるんですけども、でも、ひとつの定番として、普段安心して飲めるおいしさが、支持されているポイントかな、と思っています。

土方)毎年毎年ご購入いただいて、本数が伸びているって凄いことだな、と思っているんですが、それはリピーターが多いんですかね?

田山)リピートも確実にありますし、新しいお客様が増えてきているのも大きな要因ですね。

土方)飲んだ方がおいしいよ、と人に伝えたくなるおいしさだったり、「本麒麟」があると料理がおいしく感じるし、幅広い料理にあうと思うので、そういうところでお客様が増えているのかもしれないですね。

田山)商品設計にも関わりますが、後味もさっぱりすっきり、余計なものもないですし、料理とはとてもあうと思いますね。一度飲んでいただけると気に入っていただけるんですよ。家庭の料理に合うと思うんですよね。

土方)私も一発で気に入りましたので。

田山)まだ飲んでいないというお客様もいらっしゃるので、そういった方がきっかけがあって、飲んでいただいてご支持いただいているのかなと思います。

土方)そうですね。バーミキュラは高額商品ではあるんですけれども、日々上質に生きたい、丁寧な暮らしをされたい方、特別な非日常もあるんですが毎日の日常の中で小さな感動を積み重ねていくような暮らしって丁寧でいいですよね、と思う方がお客様だと思っていて、最近はそれに加えて、ライスポットという炊飯器兼調理器を出してからトップ中トップのシェフが気に入って使ってくれるようになりました。素材の味を引き出すんだっていう方がシェフのなかでも増えていて、そこでバーミキュラの良さを感じられててプロユースとして特にトップの方はよく使っていただいています。

田山)私も使ってみて、料理したくなったんですよね。最初目玉焼きの話をしましたが、初めてバーミキュラを使った時、うまくできたんですが、もうちょっとうまくできたんじゃないかな、って。マニュアル通りにやるんですが、毎回目玉焼きをつくるたびにちょっとした工夫を加えて、たかが目玉焼きをつくるということなんですけど、それが、次、どうしようかな、というワクワク感が伴うと言うんですかね。本当に、今までだったら、ただ食事を作ろう、と思っていたけど、そこの時間の質が変わった気がします。この商品の凄いところだし、おいしくできるからこそプロもこれを使ってよりおいしくしようという気持ちがわくんじゃないかな、と思いました。

土方)料理が楽しくなる、料理をすると自分の想像以上の味に、あんまり努力してないのに、なんかすごくおいしくなる。普通に作っても、自分が想像よりもおいしくなる、というのが凄く大事だと思っていて、それが、感動体験になると思っています。そうすると料理が楽しくなって、たくさんの人に食べてほしくなる。人を家に呼びたくなる、とかそういうコミュニケーションツールになったら凄く嬉しいな、と思っています。

お客様が身近で最高だと思うものを選ぶ理由お客様が身近で最高だと思うものを選ぶ理由

Q.共通するキーワードが日常、日々を上質にというものかと思いますが、お客様が身近で最高だと思うものを選ぶようになったのは、何故だと思いますか?

土方)今はやはり情報化社会になって、たくさんの情報があふれているなかで、もともと、特別だったりとか神秘的だったりとか、そういうものがそうではなくなってきている気がしていて、それよりも日常の中で、本当に自分がいいと思う物を選ぶ。その感動が欲しいっていう欲求が、見せびらかして自慢するとかということよりも、本当に自分がいいと感じたものにお金を投資していたりとか。そういう時代になってきているのかな、と思っています。

田山)ひとつ面白い話を思いついたので話しますね。アメリカとかって、クラフトの市場がものすごく比率が高いんですけど。それこそIPAとか、かなりとんがった商品をいっぱいつくってきていたクラフトブリュワリーさんが、2,3年前からピルスナ―をつくり始めたんですね。ピルスナーって普通に近いビールでして、我々が飲むタイプに近いものなんですけど、これってどういうことだろう、ってなったんですけど、色んなものを経験して、一巡してくるみたいなことだと思うんですけど、やっぱりここに帰ってくる。それがやっぱりピルスナーだったのかなと思ったりしました。嗜好品なんかも、TPOにあわせていろんなものを選んで生活を豊かにしようとされていると思うんですけど、普段飲むときに、安心して飲めるいいもの、変わったものではなくて、日々飲みたいもの、に変えていく、ということが、アメリカのクラフトなんかを見てもそういう風になってきてるのかな、って思ったりしまして。日々の、毎日が晴れの瞬間ではないので、日々の日常を大事にしたいという気持ちが高まっていて、ちょっとした上質感であったり、いいもの、確かなものをチョイスすることが大事なポイントだったのかな、と思いますね。

土方)「本麒麟」を飲ませて頂いて、凄く丁寧につくられた料理のように思うんですよね。雑味がない丁寧につくられた料理のような凄く優しい味はどのようにつくられているんですか?ポイントはやはり手間暇ですか?

田山)設計と、それを支える技術。そして、これはやっぱり大量に製造しなければいけないので、大きなスケールで製造する、商品管理の仕方、つくり方など総合的なところでできています。雑味のなさは、原材料からこだわっていますし、できるだけそういう雑味を押さえて、でも、うま味をだしていこう、というところの「技術」。と言ってしまえば、それに尽きるんですが、ものづくりの技術を尽くして、実は凄くそこにこだわっている、ということですね。というのも、「本当においしい」って、その場限りのおいしさではないと思っているんですよね。ビール類ですと、「また飲みたいな」、食事ですと、「また食べたいな」、と思わせるおいしさが我々が目指しているところです。そういった意味では、アフターテイストっていうのは凄く大事で、それを支える雑味みたいなものをつくって、そして余韻があって、それがある程度したら消えていくことで、また飲みたいな、と思えるような味のバランスをつくることに相当注力していますね。それと、長期低温熟成ですので、そこで雑味成分を出来るだけ取り除く熟成工程を経て、丁寧につくっています。

土方)ものづくりの話になるんですけど、鋳物の商品ってつくるのが凄く難しいんですね。バーミキュラ自体も一万個の試作品をつくって、やっと出来たことを発表して、新聞とかにも掲載頂いて。凄くたくさんの注文も頂いたのにも関わらず、製造的な問題で、次の日から全く製造できなくなってしまったり。今でも毎日製造部門と話し合いながら、「こういうことが起こったから、もしかしたらこうなんじゃないか」、とか議論します。本当に極端な話をすると、今はまぐれで出来ているだけだ、という認識なんですよ。田山さんの記事を拝見した時に、「ビールづくりをなめてはいけない」という言葉に凄く感銘を受けました。我々のものづくりと似ているな、と。キリンさんの中でもこれだけたくさんのおいしい、同じ最高品質を保ちながら商品をつくることは難しいと思っていて。

田山)そうですね。原材料は、麦もホップも一つ一つ性質が違うので、ビール類をつくるのも大変です。一番難しいのは酵母。というのも、酵母というものは生き物で、発酵させてビール類というのはつくるのですが、生き物なのでなかなか手名付けるどころか、我々が酵母に操られているじゃないかってくらい振り回されていますね(笑)ただそこを、酵母や原材料と向き合う、素材と向き合う、という姿勢を取ることで、ポテンシャルを引き出して、願わくば我々の思い通りに発酵して、というのを製造のところで心掛けていますね。

土方)同じような工程設計で同じようにつくったつもりでも、違うものができたりするんですかね?

田山)ありますね。そこをできるだけコントロールすることが腕の見せ所ですし。私、バーミキュラさんの理屈が整っているのが素敵だな、と思っていて。我々もやっぱり同じで、実は、原理原則には徹底的にこだわっていて、そこを追求するようにしています。それだけではいいものはつくれないので、何が大事かっていうと五感。つまり原理原則を徹底的に追求し、理屈でアプローチするんだけど、最後は五感で、目も耳も含めて、五感で取り組むことで、おいしいビール類をつくることができると思っています。これが、キリンのフィロソフィーというものであって、我々が凄く大事にしている考え方なんですね。

土方)これだけたくさんの商品を、そういう思いでつくっているというのを分かっている人は少ないのではないですか?

田山)そうですね。どうでしょうね。やっぱり我々当事者になると、そことずっと格闘しているので。

土方)私たちも、バーミキュラをつくる前は、元々下請けをやっていたんですけども、最初、小ロット生産ばかりやっていて、大量生産って楽でいいな、ってうちの社長である兄と話をしていたんですよ。同じやり方を徹底すればいいし、管理もしやすいし、と。でも実際、バーミキュラを量産というか、単一的につくってみて、同じものを最高品質でつくり続けるのってこんなに難しいんだということが分かって凄く反省したんですよ、2人で。大量生産って無茶苦茶難しいね、って話をしてたんですけど、そういう難しさってやってみないと分からないと思いましたね。

技術へのこだわり

Q.技術的なお話は、おふたりのお顔が輝きますね。さまざまな技術のお話の中でも、是非ここを見てほしい!という一押しのポイントがあれば、教えていただけますか?

田山)「本麒麟」のこだわりについては語り尽くしているんで。(笑)長期低温熟成の話や、原材料にこだわっていることだったり。原材料で言うと、よくホップの話をするんですね。ドイツの貴重なヘルスブルッカーホップを一部使用していますが、実はホップは複数使っているんです。キリンは100年以上、特に「キリンラガービール」を中心につくっていた中で、ホップはずっとこだわっていました。中でも、チェコのザーツというところのホップを、「最高級ホップ」として評価していまして、これを一部使うことが、ある意味キリンのDNAになっていました。ただ、これを一部使うのはキリンではまず大前提というところがあって。「本麒麟」でも一部使っていますが、ただあまりにも当たり前のことだったので、あまり喋っていませんでした。(笑) でも世界的に見ても最高級のホップをベースにしていることが、実は「本麒麟」の良さを下支えしています。こだわっているところというとそんなところもあります。

土方)バーミキュラフライパンのコンセプトは、食材から出る余分な水分を一瞬で蒸発させることによって、食材のうまみを凝縮することです。「瞬間蒸発性能」は一番の特長です。でも実はいい性能があっても、使いにくいと毎日使っていただけない。僕たちは毎日使っていただくことに価値があると思っているので、使いやすくしないといけないというところがあります。バーミキュラのお鍋は、約3ミリぐらいの鋳物で、それでもすごく薄いのですが、フライパンにすると4~5キロになって、片手で持てないんです。なので、このバーミキュラのフライパンは1.5ミリの肉厚で鋳物をつくり、さらにこのホーローコーティングは800度で焼かないといけないんですね。800度のコーティングって、ほぼないんです。大体塗装は200度、高くても250度とかで焼き付けます。800度は、鋳物の変態点を優に超す温度なので、気を付けないと、いくら形が出来ていても、グニャグニャにひずんでしまいます。バーミキュラの鍋でもひずんでしまうので、この3ミリの肉厚でつくるのもすごく難しいんです。なので、1.5ミリのものを800度で焼くとぐにゃぐにゃになると初めから分かっていました。それを実現するのが1番難しかったです。あとから削ることは実はできないんです。ストレスがかかるので、焼いたときにそのストレスが解放されて、ひずんでしまうんです。何百回何千回もひずみました。ホーローコーティングを維持しながら、ひずまないように、1.5ミリと言いながらも、建築のように20パーツに分けて設計しています。0.1ミリ加減で設計して、お手本はないので、型をつくって焼いてを繰り返して、ホーロー加工で1.5ミリの形状を維持することを実現できました。

田山)すごいですね。そういうこだわりって語りたくなりませんか?(笑)

土方)そうですね。(笑) 今回一番我慢したところがそこで、やっぱりバーミキュラの密閉性やライスポットの熱源の良さも、つくっている本人としては語りたくなるんですが、あまり言っていなくて。一番重要なのは、お客様に感動していただけるというところで、このフライパンで、もやし炒めや目玉焼きを作った時に、僕たち本当にみんなで感動したんですよ。普通の目玉焼きで感動できるってすごいよね。その時、お伝えしなくてはならないのは、技術ではなく、感動体験であると。「感動の目玉焼きができます。」や「箸が止まらないもやし炒めができます。」とかそういうことばっかり言っていますね。

田山)さっきは中味の話しかしませんでしたが、リボンの幅や文字の大きさ、麒麟のデザインなど、パッケージのちょっとしたデザインは細かいところでちょっとずつこだわっている部分はありますね。あまりそういう話はしていませんが、中味だけでなくパッケージも相当こだわっています。

土方)すごく良く分かります。商品を楽しんでいただけるためには、お客さんが気付いていないようなところまでこだわり抜かないと喜んでいただけないと思っています。なので、考えうることは全部やるじゃないですか。みんなの想いが、デザイナーや技術など、いろんな人の想いが一体となって商品ができるので、最後失敗できないというところで、考えうることは全部やりますよね。そういうところが一体になったものが、お客様に喜んでいただけて、ヒット商品になると思います。

田山)そういったものの全てが、お客様のおいしいに繋がっていれば良いということですね。

開発のスタート地点

Q.技術や細部へのこだわりのお話を伺うことができましたが、次は逆に大きな部分、開発のスタート地点はどのようなものだったのでしょうか?

土方)いつも商品を開発するとき、料理から考えるんですよ。バーミキュラで水なしでカレーができたら、めちゃくちゃおいしいんじゃないか、というところから発想しました。次は世界一おいしいごはんが炊けるようにと、ライスポットという炊飯器を開発しました。フライパンに関しては、自分史上最高の目玉焼きを焼けるようになりたいと思って。そのためには自分が考えるおいしい料理、 ライスポットだと低温調理機能でローストビーフを作れるんですが、そういう料理から、自分の腕でも絶対失敗しないように、 お店以上の味を出せる調理器具にしたいな、と考えていくことが多いですね。

田山)お客さんのシーンから考えるということですよね。「本麒麟」にとどまらず、全ての商品は、お客様が実際に手に取って飲んでいるシーンや、どういう人がどういうタイミングでおいしい体験をするかを起点として発想する。その点は共通していますね。

土方)ちなみに、田山さんが開発されるときに、よくマーケットインとかプロダクトアウトといった市場目線、お客様目線のニーズから入るのか、技術から入るのか、どちらが多いですか?

田山)どちらも大事だと思っています。出発は、マーケットというよりお客様の気持ち。どこに何を求めているかがスタートだと思うんです。ただ、そこに対して、プロダクトアウト的な部分というのは必ず必要だと思います。ニーズを満たすためには、「こんなことができます。」がないと、うまく商品にならないと思うんですよね。

土方)ずっと技術開発していないと丁度いいものはないですもんね。

田山)そうですね。壁打ちをやり、対話を重ねて模索を重ねることで、中味が定まっていくことですかね。

土方)我々も全く一緒で、ある日、ぱっとコンセプトみたいなものが出来上がるというか。そういった偶然から出来ることが多くて。商品が3つ目とかになると、それでもいいのかなと思うことがありますね。

田山)そうですね。キーワードが出てくるタイミングが大事だと思いますね。今回の商品も、奇をてらわずに直球ど真ん中へ投げるもので、お客様がそこにニーズがあるだろうと。当然パッケージデザインはおろか、名前も決まっていないところからスタートするわけで。この商品に大事だったのは、「本麒麟」という名前だと思います。我々が伝えたいメッセージが伝わるので。それが決まると、デザインがうまく連動していく。そして中味も明確に方向が決まっていく。まずはお客様のインサイトがあって、こうやって応えようという、そのもやっとしたものが、何か1つのキーワードが出てくると、まとまってくることがあるんじゃないかなと思いますね。

土方)1つの言葉から、一気にみんなのイメージが共有化されていくことは多い気がしますよね。

田山)そうですね。選択肢が幅広くある中で、1つの方向にベクトルが定まるには、言葉の力は大きいかなと思いますね。 土方)「本麒麟」という名前を聞いただけで、自信がある商品だというのが分かりますよね。

田山)大きな賭けではありましたが、それだけ力を入れた商品ということで、お客様にも分かりやすいメッセージになったと思いますね。

土方)僕たちもネーミング付けるときっていつもすごく悩んで、みんなで議論しています。フライパンもいろいろな案があって、僕が最終的に「バーミキュラ フライパン」と決めてしまったのですが、バーミキュラの最高傑作なので、本物感を感じてもらおうと、僕たちもそういう名前にしました。名前ってすごく重要ですよね。

これからのお客様像

Q.これまでのお話と今年の激動を踏まえ、来年の日本ではどんな商品がお客様に支持されると思いますか?

田山)コロナがどうなるか分からない状況の中で、確実に元には戻らないと思うんです。今までの当たり前が、全部覆って当たり前じゃなくなったと痛感するようになったと思います。逆に言うと、今まで日常生活をしていた中で、仕事のやり方も含め、意識せず当たり前と思っていたことを見直すきっかけになったのかなと。これは1つのターニングポイントなので、考え方が変わると元には戻らないというところがあると思います。お酒業界の事情で言うと、外飲み需要より家飲み需要が増えたとか。お客様のマインドの変化は大きいと思いますね。日頃当たり前だと思っていた常識や時間の過ごし方を、必然的に見直さざるを得なくなったというのは、続くんじゃないかと。その中で、日々の時間に対する大事さや、場合によっては命の危機感や不安感も感じていると思います。今生きていて、楽しい時間が過ごせるという大切さが意識されるようになっています。そうすると、日々の日常の楽しい幸せの時間が大事になってくると思いますね。その中で、普段の時間を彩ることができる商品はお客様にも支持いただけるのではないかと感じています。「おいしい」という感情は、生きる力を引き出すと思うんです。「おいしさ」を感じるのは、生き物としてたくましく生きていくための備わった能力という点からすると、「おいしい」と感じる力が、生きる力を引き出すと思うんです。そこに少しでも貢献できる商品をこれからも提供したいですし、「本麒麟」を皆さんに支持していただけるとうれしいです。

土方)「おいしいは生きる力だ」というのは、僕たちも何度も経験したことです。バーミキュラライスポットの開発も、何度も諦めそうになったのですが、ある日、何度も試作してようやく出来て、塩昆布と食べたごはんの味がすごくおいしくて、「このおいしさはお客さんに届けたいよね」と元気が出たことがあります。残業していた時もうちのシェフがハンバーグを作ってくれて、それもすごくおいしかった。バーミキュラビレッジの建設もすごく忙しくて、もうダメかもと思うこともあったのですが、シェフが作ってくれたハンバーグで乗り切れたんです。我々の展望としては、バーミキュラのフライパンは現状4カ月ほどお待たせすることになっているのですが、クオリティーを落とさない製造も含めて増産体制を検討しているので、元々月産5千台を予定していたものが、今1万5千台ほどになっていて、ようやく来年年明けぐらいからは、2万台になんとか増産できそうです。それに伴って日本の中でしっかりとお客様に届けられるようになったら、春にアメリカ、中国への展開が決まりそうです。

これから求められる「本当のうまさ」

Q.その中でもズバリ、これから求められる「本当のうまさ」とは、どんなものでしょうか?

土方)おいしさって、いろんな段階があると思っています。実際につくって、自分が思っていたよりもおいしくできた、人に食べさせたくなった。最終的に我々が目指すのは、「人間関係が変わるようなおいしさ」ができたら一番いいと思っていて。おいしい料理ができて、誰か人を呼びたい、ホームパーティーをやりたいなど、今までなかった人間関係ができてくること。そういうところまでできると、我々がつくっている意味があるなと思います。

田山)素晴らしいですね。さっきも少し言いましたが、本当においしいというのは、いつでもおいしいって言うことだと思います。ゴージャスな料理もおいしいですが、3食毎日はきついと思うこともあるかと思います。さっきの塩昆布のごはんのお話もそうですが、また食べたくなる、飲みたくなるのがすごく大事かなと。それと、おいしいという感情は生きる力を引き出すという話と絡むのですが、おいしいという感情は、頭の中、心の中のおいしさもすごくあると思います。例えば、ため息をつきながらおいしいというシーンはないじゃないですか。おいしいと言うときは、気持ちも上向きになります。時間をポジティブに変えてくれるし、勇気が湧いて鼓舞されるような、前向きに繋がるようなおいしさをぜひつくっていきたいなと思います。

本麒麟×バーミキュラ 年末にふさわしい楽しみ方

Q.最後に、この対談の読者の皆様がやってみたくなるような、年末にふさわしい料理や飲み方を教えてくれませんか?

土方)「本麒麟」を飲んで、どういう料理を一緒に食べたいかと考えると、ものすごくたくさん思い浮かびました。「本麒麟」の苦みはすごくいい苦みで、すごく料理に合うんです。それに合うような一品を作ろうと思って。バーミキュラフライパンを使うと、「瞬間蒸発性能」で、ものすごく綺麗に焼き色が付くんです。これはご家庭だとなかなかできないのですが、これを使ってラムチョップのソテーを作って食べてみたら、めちゃくちゃ合うんです。ぜひやっていただきたいです。ラムチョップの焼き色が付いたところが、うま味が凝縮していて、「本麒麟」の苦みとものすごく合うんです。ラムの甘みと「本麒麟」の甘みが重なって、めちゃくちゃおいしいです。ぜひバーミキュラを買って試していただきたいです。(笑) もう一個、バーミキュラのお鍋を使う料理なのですが、うちのシェフがジャーマンポテトを作ってくれました。バーミキュラで無水調理をすると、野菜嫌いな人も食べられるようになるんです。お芋も変な食感がなくなってクリーミーになって、甘くなるのですが、甘いものとビール類はあまり合わない印象があったんです。でも、「本麒麟」はやさしい余韻が長続きしながら雑味がないので、甘いものにも合うというのがびっくりしました。甘いものにも合わせていただきたいですね。

田山)「本麒麟」はいろんな料理と合うので、ちょっとしたひと手間というか、料理と一緒に楽しんでいただくのがいいかと思います。こだわりがおいしさを高める部分でもあるので、ビール類を飲むのも、例えばグラスにこだわるとか、冬で缶を触るのは冷たいので、一度グラスに注いで、そしてそのグラスもお気に入りにするとか。冷えたものが良ければグラスを冷やしておくとか、そういった「本麒麟」を飲むプロセスのどこかに、ちょっとした自分なりのこだわりをつくると、それだけでおいしさの次元が高まっていきます。それとこだわりの料理があれば、完璧じゃないですか?

土方)僕実は、「本麒麟」を飲むときのこだわりがあって、ちょっとぬるめで、12度ぐらいがベストなのですが。

田山)冬はちょっと温度高めの方がいいですね。

土方)それをグラスに注いで、ワイングラスに注ぐのもいいのですが、すごく香りが華やかになります。僕のこだわりは「本麒麟」を12度で飲むことです。

田山)さすがツウですね(笑) ワイングラスのような口の広いグラスを使うと、香りもすごく出てきますし、温度が上がるほど香りが出てきます。先ほど申し上げた、いい香りが味わえると思います。

対談を終えて

Q.最後に、本日の対談の感想をお聞かせください。

土方)今回田山さんとの対談をさせていただけるということで、いろいろな記事も読ませていただいて、本当にものづくりにこだわっている先輩としてぜひ勉強させていただきたいと思っていたので、大変勉強になりました。我々も手探りで、味に対する追求やものづくりに対する追求も、自分たちのやっているやり方を自問自答しながらやっているのですが、自分たちの進んでいる道は間違っていないと確信できました。ありがとうございました。

田山)私もこの対談をとても楽しみにしていました。というのも、フライパンひとつで、どこまでできるのだろうか?と正直思っていたんです。実は、この企画がある前に、自宅のフライパンの調子が悪くて、あまりこだわらずに買い換えたのですが、フライパンってぞんざいに扱われていたのだなと分かりました。実際にバーミキュラを使ってみて、ちょっとした日常に使うものだからこそ、こだわりのものを使うことの豊かさがすごく分かりました。今日対談をさせていただいて、これをつくるのはものすごく大変なんだとよく分かりました。我々はよく、原材料は農産物です、酵母は生き物です、というところで難しさを語っていたのですが、農産物でも生き物でもないけれど、物の加工ってすごく難しくて、そこに職人さんの技と経験、知識だけでなく知恵がちゃんとあり、それが伝承され、でもその中で偶然の要素があり、いい物がつくれたときの喜びがこの小さな商品に凝縮されている。価格だけの価値は十分あると思いました。ありがとうございました。

※キリンビール伝統の低温熟成期間を1.5倍にした製法/当社主要発泡酒比

「本麒麟×バーミキュラ」スペシャルレシピ ラムチョップのソテー 赤ワインビネガー風味「本麒麟×バーミキュラ」スペシャルレシピ ラムチョップのソテー 赤ワインビネガー風味

バーミキュラ フライパンは熱伝導に優れ、肉から出た余分な水分を飛ばしながら焼けるので、表面はカリッと、中はジューシー。ビネガーソースがラムによく合い、本麒麟のコク深いうまさ、上質な苦みとの相性も抜群。

<材料>
  • ラムチョップ2本
  • にんにく(スライス)1片
  • フレッシュハーブ
    タイム・ローズマリー・セージなど
    適量
  • オリーブオイル大さじ3杯
  • 小さじ1/2杯
  • 粗びき黒こしょう少々
  • 赤ワインビネガー大さじ2杯
  • りんごジュース大さじ3杯

フライパンから煙が出てきたら、ラム肉を2本まとめてトングで挟み、脂身のほうからフライパンに押しつけるように焼きつけます。
フレッシュハーブは手に入るものでかまいません。イタリアンパセリ・バジル・ローリエなどもよく合います。

<つくり方>
  • 1 ラム肉ににんにく・ハーブ・オリーブオイル大さじ1をまぶし、1時間ほどおく。
    加熱直前ににんにく・ハーブを取り除き、全体に塩・黒こしょうをまぶす。
  • 2 フライパンを基本の強火で30秒ほど予熱し、オリーブオイル大さじ1をなじませる。底面全体からゆらゆらと煙が出てきたら中火にし、ラム肉2本をトングで挟み、脂の面から入れて2分ほど焼きつける。
  • 3 フライパンにラム肉を広げて焼き、出てきた脂をスプーンなどでかけながら、両面を1分くらいずつ加熱する。こんがりとしたきつね色になり、指で押してみて肉に弾力が出てきたら、いったん取り出す。
  • 4 フライパンの脂をキッチンペーパーなどで拭き取り、オリーブオイル大さじ1、①のにんにくとハーブを入れて中火で1分ほど加熱する。いい香りがしてきたら赤ワインビネガーを加え、半量になるまで1分ほど煮詰める。
  • 5 ④にりんごジュースを加え、とろみが出るまで1分ほど煮詰める。ほどよく濃度がついたら③のラム肉を戻し入れ、よく絡ませて完成。

「本麒麟×バーミキュラ」スペシャルレシピ ジャーマンポテト「本麒麟×バーミキュラ」スペシャルレシピ ジャーマンポテト

バーミキュラでじゃがいもをハーブとともに風味よく蒸し上げます。
すっきりキレのある本麒麟が、無水調理で甘みが存分に引き出されたじゃがいもをより一層引き立てます。

<材料>
  • じゃがいも
    (よく洗い、皮つきのまま4等分)
    6個
  • スライスベーコン(1cm幅に切る)6枚
  • にんにく(つぶす)1片
  • ローズマリー4枝
  • 小さじ1/2杯
  • 粗びき黒こしょう適宜
  • オリーブオイル大さじ1杯

じゃがいもは水分が抜けないように、皮をつけたまま無水で調理します。

<つくり方>
  • 1 バーミキュラにオリーブオイル・にんにくを入れて【弱火】で約3分加熱し、にんにくのいい香りがしてきたら、じゃがいも・ベーコン・塩・こしょうを入れて木ベラなどでひと混ぜする。
  • 2 ローズマリーをのせてフタをし、【弱火】で25分加熱する。
  • 3 じゃがいもに火が通っていれば完成。

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