“紅茶文化”そのものを根づかせ、広げていきたい。『午後の紅茶』エキスパートがめざすもの

キリン公式noteより(公開日2022年11月1日)

午後の紅茶』について、誰よりも詳しい人。商品だけじゃなく、紅茶の歴史や文化についてもよく知っていて、たくさんの人々に紅茶の魅力を伝えられる人。そんな「紅茶のエキスパート」という存在がいることをご存知ですか?
 
『午後の紅茶』が取り組んできた社内資格制度で、さまざまな試験や研修を経て紅茶について深く学び、専門家としての知識をつけた従業員は現在およそ300人。その裾野は少しずつ確実に広がっています。
 
紅茶だけじゃなく、“紅茶文化”そのものを根づかせ、多くの人に伝えていきたい。そんな活動がキリンで始まったのは、『午後の紅茶』のアドバイザーを25年以上務めていた紅茶研究家・磯淵猛さんの存在が大きなきっかけになったそう。
 
11月1日の『紅茶の日』にあわせて、『午後の紅茶』のさらなる魅力をお届けするため、今回は磯淵さんのもとで紅茶を学んできた社内講師の高井美奈と、営業担当であり「紅茶Jrエキスパート」の資格を持つ片岡瑞希に話を聞きました。

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【プロフィール】高井 美奈

キリンビバレッジ株式会社 営業部戦略推進担当主査。1990年入社。紅茶アドバイザー、フードコーディネーターの資格を持ち、キリンの社内資格制度「午後の紅茶エキスパートプログラム」の講師を務める。

【プロフィール】片岡 瑞希

キリンビバレッジ株式会社 営業部『午後の紅茶』担当。2014年入社。福岡や広島などでスーパーの個店営業や法人営業を経験後、本社営業部へ。2019年に「紅茶Jrエキスパート」の資格を取得。

「午後の紅茶 エキスパートプログラム」が生まれるまで

─まず高井さんにお聞きしたいのですが、「紅茶エキスパート」というのはどんな資格なのでしょうか?
 
高井:『午後の紅茶』や紅茶そのものについてしっかり語れて、セミナーやイベントを通して啓蒙活動までしていけるような人材をつくるために、2016年頃から始まったキリンの社内資格です。もともとは2019年に亡くなった紅茶研究家の磯淵猛先生がきっかけでつくられました。
 
磯淵先生は『午後の紅茶』のアドバイザーを長く務めてくださっていたんですが、当時から「せっかくペットボトル入り紅茶No.1の企業なんだから、もっと紅茶を語れる人がいないと。僕がいなくなったらどうするの?」とおっしゃっていました。そこから、そういう人材を育てるために、「紅茶エキスパート」の制度を始めたんです。
 
─なるほど。どういう人がエキスパートになれるのでしょうか?
 
高井:まずは紅茶の歴史や茶葉の種類、産地や淹れ方など、基礎知識を覚えることから始まって、ひと通りきちんと紅茶のことを語れるようになってもらいます。それから筆記試験、実技試験、研修などを経て、エキスパートの資格を取るという流れですね。3年ほど前まではある程度の役職がある従業員しか取れなかったのですが、それだとなかなか裾野が広がっていかないので、今は「紅茶Jrエキスパート」という枠をつくり、誰でも挑戦できるようになっています。
 
─片岡さんは、2019年に「紅茶Jrエキスパート」を取得されたんですよね。

片岡:そうですね。メーカーの従業員であり、営業として商品を売っていく立場だったので、まずは紅茶のことをもっと知りたいなと思ったんです。もともと紅茶が好きだったこともあり、磯淵先生のセミナーには何度も参加させていただいていました。私にとって高井さんは、『午後の紅茶』の商品や紅茶そのものの魅力を社内でいちばん伝えてくださるレジェンドのような存在なんです。
 
高井:レジェンドって(笑)。片岡さんとは女性従業員に向けた研修プログラム「キリン・ウィメンズ・カレッジ(※)」を通して、いろいろ話をしたのが最初のつながりでしたね。「紅茶エキスパート」と「紅茶Jrエキスパート」を合わせると今は300人近くに増えて、やっと広がってきたのかなという感じがします。

※キリンが女性活躍推進に向けて取り組んでいる、女性従業員を対象にビジネスリテラシーを備えた次世代リーダー育成を目的とした選抜型研修。

“紅茶文化の父”である磯淵猛さんに学んだこと

─磯淵猛さんは、紅茶専門店を営みながら多くの著書を出版し、セミナーやメディアを通して日本に紅茶文化を伝えてきた方。『午後の紅茶』のアドバイザーでもあったんですね。
 
高井:
そうですね。磯淵先生の言葉があったからこそ、会社としても「紅茶シェアNo.1だからいいやじゃなくて、No.1だからこそもっと紅茶を知らないといけない」という姿勢に切り替えていくことができたと思います。
 
私はキリンが開催した紅茶セミナーがきっかけで、2008年頃から磯淵先生の弟子として紅茶を学ぶようになったんですよ。去年からは「紅茶エキスパート」の講師という立場になり、先生から教わったことを従業員に伝えています。
 
─片岡さんも、磯淵さんのセミナーに通っていたんですよね?
 
片岡:はい。本当に気さくな方で、紅茶のセミナーって少し敷居が高く感じていたのですが、そういうことを全然感じさせない楽しい雰囲気が印象的でした。紅茶についての知識がとにかく豊富で、参加するたびに毎回違うお話をしてくださっていましたね。

高井:そうそう。私も磯淵さんのところに通いはじめて、「紅茶でこんなに歴史が動いたんだな」とか、「『午後の紅茶』が日本の紅茶文化に与えた影響はこんなに大きかったんだな」とか、本当にいろいろなことを知ったんですね。それで、これはちゃんと従業員みんなに教えないといけないし、紅茶の歴史や面白さを知っているのと知らないのとでは、商品にかける思いがまったく変わってくると思ったんです。
 
─磯淵さんの存在は、『午後の紅茶』になくてはならないものだったんですね。
 
高井:だからこそ、磯淵先生が亡くなられたときは「紅茶エキスパート」を増やすという目標を絶対に実現させなければいけないと感じましたし、「先生の意志を私に継がせてください」と上に直談判したんです。今はだいぶそれに近づいてきたかな。先生には「まだまだだよ」と言われそうですけどね(笑)。

日々の活動のなかで感じる「紅茶の時間」の大切さ

実際の紅茶セミナーの様子

─「紅茶エキスパート」の活動のひとつとして、一般の方に向けた「紅茶セミナー」の開催がありますが、どういった内容なのでしょうか?
 
高井:まずは紅茶の歴史や楽しみ方、『午後の紅茶』についての基本的なお話をしてから、アレンジティーを体験してもらったり、紅茶に合うフードなどをご紹介していく内容になっています。全国のエキスパートがさまざまな場所で行っています。
 
今年は「全国47都道府県のご当地お弁当レシピ」という「おいしい無糖」とのコラボ企画を各地のエキスパートが中心になって開催したんです。大変な企画でしたが、みんなすごく頑張ってくれて地域ごとにとても盛り上がりました。
 
片岡:そうですね。私もJrエキスパートの一人として活動してきたのですが、どんどんエキスパート、Jrエキスパートの人数が増えてきて、各エリアでの旗振り役も多くなってきた印象です。こうして広がってきたことで、例えば広島だけでやっていた活動を中四国全体でできるようになり、エキスパートたちの一体感も強まってきているのかなって感じます。

─そういった活動のなかで、記憶に残っている出来事はありますか?

高井:2019年に長野県で紅茶セミナーをやったときのことは、よく覚えています。その年、台風19号で千曲川が決壊して大きな被害ありましたので…。災害が起きてから1ヶ月ちょっとでセミナーだったので、開催するかしないかすごく悩みました。
 
でも、楽しみにしていた方を裏切らないためにと結局開催したんです。そうしたら帰り際に参加者の方が手を握って、「私は家が被災して、今日来るか来ないかものすごく悩んだけれど、美味しいスイーツと紅茶もいただけて、楽しい時間を過ごせました。来てよかったです 」と声をかけてくださりました。毎日、片付けなどに追われている日々を過ごすなか、気分転換に参加してみようと思い立って来てくださったみたいです。今思い出しても涙が出てしまうんですが、やってよかったと心から思いました

─「紅茶を楽しむ時間」って実はとても特別なんだなと感じるエピソードですね。片岡さんはいかがですか?
 
片岡:私はまだたくさん回数を重ねているわけではないのですが、セミナーの実演で紅茶を手淹れしたときに「今まで飲んだ紅茶の中でいちばん美味しかった」と言っていただいた瞬間は、素直にとても嬉しかったですね。
 
『午後の紅茶』はもちろんですが、まずは紅茶そのものの楽しさをお伝えして、より好きになってもらえたら。セミナーがそのきっかけになったらいいなといつも考えています。

『午後の紅茶』が茶葉にかけてきた思い

─今は紅茶の楽しみ方ってすごく多様になっていて、商品のバリエーションやシーンもどんどん増えていますよね。エキスパートのお二人は「これからの紅茶の楽しみ方」についてどんなことを感じていますか?
 
高井:今はいろいろなメーカーさんの紅茶飲料が出てきていますが、私は「茶葉本来の味わい」を楽しむ方向にまた戻っていくんじゃないかなと感じています。
 
海外だけじゃなく国産紅茶の生産者さんも増えているので、茶葉に注目が集まれば、品質や生産現場もより良くなっていくはず。じっくり飲みたいときは手淹れで、気軽に飲みたいときはペットボトルで。そうやって紅茶市場や茶葉そのものが広がっていくことが『午後の紅茶』の本望ですね。
 
片岡:私も家では手淹れの紅茶を、外では『午後の紅茶』を、という感じでシーンによって楽しみ方を変えています。例えば何かを食べるとき、そこに紅茶があったらよりおいしく感じるといつも思っていて。紅茶には、暮らしをより豊かなものにしたり、リラックスさせてくれたりする魅力があるんですよね。

高井:茶葉によって本当に味が違うので、例えば5種類くらい用意して飲み分けてみたり、「この茶葉にはこの食事が合うかな?」とか、楽しみ方を広げていってほしいですね。気分やシーンに合わせて茶葉を変えていくのも面白いですよ。
 
─いろいろな紅茶の楽しみ方があるなかで、エキスパートとして改めて感じる『午後の紅茶』の魅力や、「もっとこうしたい」と思うことってありますか?
 
高井:『午後の紅茶』の良さは、アフタヌーンティーの文化を日本中に広めるというコンセプトはもちろんですが、やっぱり商品設計によって茶葉を変えていることですね。「ストレートティー」も「ミルクティー」も「レモンティー」も「おいしい無糖」も、商品によって茶葉をすべて変えるって、実はすごいことだと私は思っているんです。
 
そうなると、製造ラインにしても、ひとつの商品をつくったあとに、すぐ別の商品をつくることはできなくて、全部洗ってメンテナンスしてからやらないと味が残ってしまう。生産性を考えるとコストもかかるし、これを全種類やるわけですから、本当に大変です(笑)。天候によって同じ茶葉でも味が変わりますから、味を揃えていくための苦労も大きい。そういう隠れた部分をちゃんと伝えないといけないですね。
 
片岡:私も、本当にそう思います。茶葉への思いや品質の高さをもっと伝えることができたら、商品の価値も上がっていく。営業としては、『午後の紅茶』というブランドの価値をより深く広めていくことが大事だなと感じます。

人から人へつないできた文化を、次の世代へ

─そのためにも、『午後の紅茶』を知り尽くした「紅茶エキスパート」を増やしていくことはとても大切ですね。次の世代に向けて、どんなことを伝えたいですか?
 
高井:ブランドの価値を伝えることが目的ではありますが、人材を育てていて思うのは、「日々の生活のなかで紅茶の知識を活かせるようにしてあげたい」ということなんですよね。
 
例えば「キリンビバレッジに勤めているんだ」と周りに話したときに、「じゃあ紅茶のこと詳しいんでしょ?」って言われたりするじゃないですか。そういうときに、ちょっとした紅茶の話ができて、「やっぱりすごいな」と感心してもらえるような人になってほしいなって。従業員みんながそうなれれば、キリンにいる意味や意義を感じられるようになるはずだから。
 
私が磯淵先生から教えていただいた紅茶の話を、そうやって社内のみんなに伝えていくことで、キリンの紅茶文化を継いでいければいいなと思っています。
 
片岡:そうですね。エキスパートとして学んだことを日々の活動で活かせて、それが自分のためにもなるっていうのはすごく大事なことだと思うので、こういった制度があるのは本当にありがたいなと感じています。
 
自分もまだまだですが、後輩たちには自社商品に自信をもって語れるような人になってほしい。誰もが知っている歴史ある商品だからこそ、さまざまな角度から魅力を語っていく必要があるんだよってことを、次の世代に伝えていきたいですね。

「紅茶の日」に合わせたスペシャルムービーを公開しました!

親しみのある「午後ティー」という愛称で、お客様ひとりひとりの暮らしに寄り添ってきた「午後の紅茶」も、今年で発売36年を迎えました。

36年前、「午後の紅茶」を発売に導いた先輩方に、現在「午後の紅茶」に携わるキリン社員から手紙を贈ることにしました。

これからもお客様ひとりひとりの暮らしに寄り添っていきたい。そんな想いを未来へと繋いでいきます。

文:坂崎麻結新しいウインドウで開きます
写真:飯本貴子新しいウインドウで開きます

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