“茶葉へのこだわり”を大切に、ブランドを守っていく。『午後の紅茶』を支える味づくりの背景

キリン公式noteより(公開日2022年10月30日)

気軽に飲めるおいしい紅茶飲料がまだなかった時代に、日本初のペットボトル入り紅茶として開発された『午後の紅茶』。1986年に誕生して以来、36年間、“いちばん身近な紅茶”として、多くの人の日常に寄り添ってきました。 

冷えると濁る性質がある紅茶ですが、開発チームが編み出した「クリアアイスティー製法」によって、透き通る色鮮やかな状態を保ったまま本格的な茶葉のおいしさが味わえるようになりました。

そんなはじまりから現在まで、定番のストレートティーやミルクティーなどはもちろん、フルーツティーや無糖など、時代に合わせた味づくりを研究してきた『午後の紅茶』。その茶葉や品質へのこだわりは、まだまだ伝えきれていない部分でもあります。

 商品の裏側にある、度重なる試行錯誤の道のり。そこにはどんな工程があり、どんな思いがあるのでしょうか。 

今回は、日本紅茶協会が制定した11月1日『紅茶の日』にあわせて、『午後の紅茶』のさらなる魅力をお届けするため、『午後の紅茶』開発担当の長井美保に、普段はなかなかフォーカスされることのない味づくりの背景を語ってもらいました。

【プロフィール】長井 美保 

キリンビバレッジ株式会社 商品開発研究所 飲料開発担当。2021年入社。『午後の紅茶』の開発チームとして「おいしい無糖」シリーズなどを担当。さまざまな角度から紅茶を研究し、商品の根幹となる“味づくり”を担う。

紅茶葉の奥深さを学び、発見していく日々

─長井さんは「おいしい無糖」シリーズなどの開発を担当されているんですよね。

長井:
はい、『午後の紅茶』開発チームの一人として、さまざまな商品に携わらせていただいています。もともと小さい頃から食への興味が強く、学生の頃は落ち込んだときにいつもおいしいものから元気をもらっていたんです(笑)。そのなかでも“味づくり”の部分に興味が湧いていったことが、入社のきっかけになりました。『午後の紅茶』はやっぱり長い歴史のある大きなブランド。プレッシャーもあったのですが、自分がその一部に関われるのはとても嬉しかったです。

─商品開発って、具体的にどんなことをするんですか?

長井:主な仕事としては、みなさんが飲んでいる『午後の紅茶』のペットボトルの中味を開発しています。最初にマーケティング部から「こんなコンセプトで、こんな商品をつくりたい」という話が来るのですが、そこから「どんな味にするか?」を考えて、試飲を重ねて形にしていくような流れです。コンセプトに合った味にするために、さまざまな改良を加えて最終的な味づくりをしていきます。

─マーケティング部と協力しながら、一緒につくっていくんですね。

長井:そうですね。例えば「食事に合うもの」とか、「華やかな気分になれるもの」など、イメージやキーワードから紐解いていって、実際の味に落とし込んでいくのが私たちの仕事です。その過程で何パターンも試作を用意して、味が決まったら製造に入ります。ラボでつくった味が工場できちんと再現できているかなどの確認もあるので、発売まではだいたい半年から1年くらいの時間をかけています。

─なるほど、それは長い道のりです。マーケティング部から「こういうものを」と言われても、「それはきついな、難しいな」っていうこともありますよね?

長井:そうですね、ときにはそういうこともあります(笑)。でも、難易度が高い商品になると早い段階からコンセプトが上がってくるので、検討期間をしっかり設けながら味をつくっていくことができます。開発チームには10人ほどのスタッフがいるのですが、和気あいあいとした雰囲気があって、若手でも意見を言いやすいんです。だからこそ色々なアイデアが出てきて、試飲をくり返す作業も楽しいですよ。

─長井さんが開発を通して感じている、やりがいや面白みはどんなところですか?

長井:当たり前のことではあるのですが、やっぱり開発を通して紅茶を飲む時間、紅茶に向き合う時間がすごく増えて、改めて“茶葉”の魅力を感じています。産地によって味がまったく違うので、「このフルーツにはこの茶葉が合うかもしれない」といった新たな発見もたくさんあって。入社してから、ずっと学び続けている日々です。

商品開発の現場から見る、『午後の紅茶』のつくりかた

─『午後の紅茶』は定番商品を数年ごとにリニューアルするなど、安定した味づくりのために進化を続けていますよね。そのなかで大事にすることはなんですか?

長井:『午後の紅茶』チームのなかでも、味のリニューアルはすごく大切な作業だと考えています。なので、歴代の商品を試飲して、「『午後の紅茶』にとって大事な部分はここなんじゃないか」といったディスカッションを行います。ブランドの大切なところを守りながら、よりおいしく進化させていくっていうところは、やっていて本当に難しいなと感じている部分ですね。
 
─「味」ってとても揺らぎやすいもので、全員が同じおいしさに向かっていくのは簡単ではないですよね。

長井:そうですね。ときには官能訓練のようにいろいろな香りの成分を飲んでみて、「これはこういう味だよね」といった認識合わせをチームで行ったり、試飲と評価をくり返したりします。

「ストレートティー」は「ミルクティー」や「レモンティー」に比べてよりシンプルだからこそ、茶葉感にはこだわっていて、通常の茶葉と細かく粉砕した茶葉を一緒に抽出する「マイクロ・ブリュー製法」を採用しているんです。そうすることで、『午後の紅茶』らしい華やかな香りやコクが生まれるんですよ。
 
─フルーツティーなどはどうですか?
 
長井:フルーツティーを開発するときは、実際に生のフルーツを試食しながらどう取り入れていくかを話し合って、品質を保ちながらジューシーさや香りを限りなく近づけていく作業をします。素材に合う茶葉の種類を考えつつ、抽出時間や温度を少しずつ変えて味をつくっていく。商品によっては飲むシーンを想定して、一日かけて500mlを試飲してみたりもします。「ずっと飲み続けているとくどくなったりしないかな?」といったところも確認して、最後までおいしく飲めるかを確かめるんです。
 
やっぱり『午後の紅茶』が大事にしているのは茶葉感だと思うので、それを守りながら新たな味にチャレンジしていくというのは、永遠の課題だなと思っています。

時代に合わせた味づくりの変遷と、変わらないおいしさ

─時代によって求められる味が変わってくる、というのも開発の課題ですよね。『午後の紅茶』の味づくりにおいては、どんな変化を感じていますか?
 
長井:今の時代は砂糖をあまり摂りたくない方も多いので、もともと飲んでいただいている方にも変わらず「おいしい」と思ってもらえる微妙なバランスで、甘さが気にならない味づくりなども工夫しています。

そういったニーズから「おいしい無糖」シリーズも人気が高まっています。「おいしい無糖」は、もっと日常的に食事に合う紅茶を楽しめるよう、高い温度と低い温度の2種類で抽出した茶液を混ぜる「ツイン・ブリュー製法」にすることで、すっきりとした飲み口になっています。無糖だからこそ感じる茶葉の旨味や紅茶本来のおいしさっていうのが伝われば嬉しいですね。
 
─やっぱり時代としてはヘルシー&ナチュラルという方向なんでしょうか?
 
長井:そうですね、カフェインゼロや免疫ケアなどの商品は、おいしいだけじゃなく身体に貢献できるものとして身近に感じていただけていると思います。例えば「カフェインゼロ ピーチティー」にはカフェインが入っていないのですが、かといって甘すぎると抵抗がある方もいらっしゃるので、香りの華やかさや紅茶との相性を重視して原料を選んでいます。

ただ、身体の健康を考える反面で、“心の健康”や“癒し”も忘れたくないなと思っています。ちょっとしたご褒美感や背徳感、贅沢な味わいが楽しめるような感覚も『午後の紅茶』は、大事にしているんです。
 
例えば今秋発売した「季節のご褒美 FRUITS TEA グレープ」は、ブドウの品種を吟味してよりジューシー感を意識しつつ、「セイロンティーのシャンパン」と呼ばれるスリランカ産ヌワラエリア茶葉を合わせて、上品な味になるようつくりました。
 
─『午後の紅茶』という基本を守りながら、今どんなものが求められているのか、敏感にアンテナを張っていくバランス感覚が必要なんですね。
 
長井:“『午後の紅茶』の大事な部分”を意識して積み重ねながら、気になった市場品をチームのみんなで食べてみたり、流行についてブレインストーミングしてみたり。「この要素を取り入れたら面白いかも」というアイデアはいつも考えています。

“淹れたての紅茶”に負けない味をめざして

─「これからの午後の紅茶」についても少しお聞きしたいのですが、開発チームの若手として、先輩社員たちからどんなことを受け取っていますか?
 
長井: 私が入社して最初に担当した商品が「おいしい無糖」シリーズだったので、『午後の紅茶』らしさとすっきり感をどう両立するかという部分は試作の中でとても勉強になりました。そういった実務を通して、『午後の紅茶』というブランドに関することも教えていただいています。
他にも、紅茶の茶葉の産地での味の違い、抽出の条件など、本当にいろいろなことを、身をもって学ばせてもらっています。
 
─開発者として感じている『午後の紅茶』の魅力や、この先につないでいきたいと感じる部分はどんなところでしょう?
 
長井:定番のおいしさと幅広いフレーバーがあって、その日の気分で選べる楽しさがあるのは『午後の紅茶』の大きな魅力だと思います。ただ、『午後の紅茶』は日本で初めてペットボトル飲料として紅茶を発信したという歴史もあるので、「紅茶本来の良さ」という部分は、もっともっと伝えていきたいところ。フレーバーだけじゃなく、“茶葉”の魅力に注目していただけるような商品づくりもしていきたいです。
 
紅茶のことを知れば知るほど、新たな魅力が生まれてくるので、そんな紅茶文化を学ぶ楽しさがもっと広まればうれしいですね。個人的には、「淹れたての紅茶」にしかない香りやおいしさをもっと追求してみたい。手淹れの紅茶しか飲まない、という方にも届くような商品を目指して、これからチャレンジしていきたいです。

文:坂崎麻結新しいウインドウで開きます
写真:飯本貴子新しいウインドウで開きます

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