患者さんのクオリティ・オブ・ライフ向上を目指す。協和キリンの取り組み

キリンは、「食」「医」「ヘルスサイエンス」という3つの事業領域を展開しています。「医」の領域を担う協和キリンでは、病気と向き合う人々が「生活が劇的によくなった」と感じて笑顔になる、Life-changingな価値の創出を目指しています。
この目標の実現に向けて、注力しているのが「骨・ミネラル領域」、「血液がん・難治性血液疾患領域」および「希少疾患」における研究です。まだ有効な治療法のない病気に向き合い、新薬の開発を進めることで、患者さんの負担を極限まで減らせるよう尽力しています。
さらに近年では、創薬テクノロジーにおいてより効果的な治療薬を提供するため、遺伝子レベルでの治療や細胞そのものを活用した新しい治療法の確立にも取り組んでいます。一度の投与で疾患の根本的な原因から改善できる。そのような未来を実現することが、患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上につながると信じています。
対症療法しかなかった病気の新薬を開発。患者さんの負担を大きく軽減

「骨・ミネラル領域」の取り組みの一つに、くる病・骨軟化症の治療薬の開発があります。くる病・骨軟化症とは、骨の石灰化(骨を硬くすること)が妨げられることによって、骨の形が変わったり、痛みなどの症状が現れたりする病気のことです。子どもでこれらの症状がみられる場合にくる病、成人でみられる場合に骨軟化症と呼ばれます。
難病「XLH」の治療を革新する
この病気の一つであるXLH(X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)は、骨の形成に必要なリンやビタミンDが腎臓から漏れ出てしまい、骨の成長や維持に支障をきたす難病です。およそ2万人に1人が発症する希少疾患で、多くの患者さんが成長不全に苦しんでいます。
協和キリンは、この病気の治療薬としてクリースビータを開発。2018年に、アメリカおよびヨーロッパの一部で販売を開始し、現在では日本を含め、50を超える国や地域に展開しています。
それまでのXLH治療法といえば、リンとビタミンDを補充する対症療法が主流でした。しかしこの治療法は、1日に何度も服薬が必要なうえに、腎臓の石灰化という副作用が伴います。
これに対し、クリースビータによる治療は、2〜4週間に1回の注射で済みます。また、血中リン濃度を正常域に上昇・維持することで、痛みの緩和や骨の成長の改善も期待できます。これによって、患者さんの生活の質の向上に大きく貢献できました。
世界初、「FGF23」がリンの過剰排出を抑えることを発見
クリースビータは、骨代謝を研究する過程でリンに注目したことから、開発が始まりました。
リンは、カルシウムの次に体の中に多く含まれる大切な栄養素で、骨や歯を作る主な成分です。ただ、カルシウムと比べると、体内でリンがどのように調整されているのかの研究は、世界的にもあまり進んでいませんでした。協和キリンは、そこに新しい発見のチャンスがあると考えたのです。
2000年、血液中のリンが少なくなる病気の研究から、FGF23というホルモンが体内のリンを調整するうえで重要な役割を果たしていることを、世界で初めて発見しました。しかし、FGF23には血液中のリンを減らす働きがあるものの、そのまま薬として使うことはできませんでした。
そこで協和キリンでは、FGF23の働きを抑えることで、体内のビタミンDが増え、腎臓からのリンの過剰な排出が抑えられる事象について研究。FGF23の働きを抑えるために、人間の体内で作られる抗体と同じような物質を再現する技術「完全ヒト抗体作製技術」を使うことで、クリースビータという新薬の開発を実現しました。
不治の病に光を。画期的な技術の開発により、希少疾患の治療法を確立

協和キリンでは、クリースビータに代表されるとおり、人体の仕組みを深く理解し、その知識を活かした新薬の開発に取り組んできました。さらに2024年には、遺伝子治療のパイオニアであるOrchard Therapeutics社(以下Orchard社)の完全子会社化によって、遺伝子治療分野における世界的なリーダーとしての地位を獲得。
病気の根本的な原因に働きかける治療法の研究・開発に先進的に取り組んでいます。
新たな創薬技術で希少疾患「MLD」に挑む
その事例として、MLD(異染性白質ジストロフィー)の治療法の開発があります。MLDは、酵素の欠損によって神経障害を引き起こす遺伝性の希少疾患です。重篤な場合は、歩行能力や言語能力を失い、発症から5年以内に命を落とすリスクがあるにも関わらず、これまでは有効な治療法がありませんでした。
こうした課題にアプローチしたのが、造血幹細胞(血液細胞のもととなる細胞)を活用した革新的な創薬技術プラットフォームを持つ、Orchard社です。プラットフォームをもとに、体内のさまざまな場所で新しい血液細胞を作り続ける造血幹細胞の特性を応用することで、Lenmeldyという治療法の開発に成功しました。
この治療法は、従来の方法では難しかった脳内の代謝異常を改善することで、MLDの治療を可能にします。また、一度の治療で酵素機能が正常化するため、病気の進行を抑制または遅延させることが期待できます。
2024年3月、Lenmeldy は、MLDの根本的な原因を治療する方法としてアメリカで唯一の承認を取得しました。これによって、患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に、大きく貢献できる可能性が開かれたのです。
協和キリンでは現在、Lenmeldyと同じプラットフォームを活用して、ほかの希少疾患の治療法を探っています。これからも注力する疾患領域を中心とした新薬の開発や、新たな技術の獲得を通じて、Life-changingな価値を創出し、病気と戦うすべての人に笑顔を届けていきます。
※内容・登場社員の所属は公開当時のものです
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