[ページの先頭です。]

ページ内を移動するためのリンクです。

[ここから本文です。]

醸造学部

No.113

クラフトビールが「とりあえずビール」をかえる!
〜Tap Marchéが切り開くビール文化の新たな地平〜

クラフトビールが「とりあえずビール」をかえる!

PROFILE 石井綾子さん

キリンビール入社後、エリア担当、量販企業担当、チェーン飲食店担当などの営業を経て、2016年12月より企画部タップ・マルシェチームに参加。好きなクラフトビールは「オンザクラウド」。

クラフトビールがより身近に味わえる4タップ・ディスペンサー「Tap Marché(以下タップ・マルシェ)」。今回はその開発時から関わり、現在は全国展開のプランニングを手がける石井さんにお話をうかがい、タップ・マルシェの魅力をたっぷりと語ってもらいました。

タップ・マルシェとは何なのか。

――なぜタップ・マルシェは革新的なプロダクトと称されているのでしょうか。

タップ・マルシェはキリンのクラフトビールだけを搭載しているわけではありません。茨城の「常陸野ネストビール」や三重の「伊勢角屋麦酒」、宮崎の「宮崎ひでじビール」など、まったく資本関係のないブルワリーとも協働し、企業の枠を超えて自由に銘柄を選ぶことができます。また、クラフトビールは醸造家の想いとこだわりが詰まったビールですが、専門店などの限られた飲食店で飲めるものになっていました。それがタップ・マルシェを通じて全国で、様々な業態のお店で、気軽に楽しめるようになった点が評価されているのではないでしょうか。

初めてづくしの開発プロジェクト

――タップ・マルシェの開発に動き出した動機はなんだったのですか。

居酒屋などでよく「とりあえずビール」という言葉を耳にします。もちろんそれはビールが日常生活に浸透している証拠ではあるのですが、一方で、日本酒やワインはいろいろ選べるのに、ビールはいつまでたっても「ビン」か「ジョッキ」だけ。そんな現実にどこか歯がゆさを感じてもいました。ビールも本来は個性豊かな100種類以上のスタイルがある飲み物。その楽しさを多くの人に知ってもらいたいという思いがありました。

――とはいえ、クラフトビールのディスペンサー開発という、これまで経験のないプロジェクトには困難も多かったのではないですか。

ディスペンサーはもちろん、ステンレスの樽に代わるペットボトルの樽もイチから作り上げたもの。すべてが新しいことずくめでした。最初はみんなで、ディスペンサーの形を段ボールで組み立てながら頭を悩ませる等、そんなところから始めていましたから(笑)。

飲食店が抱えるクラフトビール導入のハードルとは

――もっとも大きな問題はなんですか。

いろいろありますが、「選ぶ楽しさ」を実現しようとした時には、やはり「容量」と「スペース」ですね。従来クラフトビールを入れる樽は10〜30ℓの大容量のものが主流でした。なので仮に4銘柄のクラフトビールを置こうとすると、少なくとも10リットルの樽が4本必要になってきて、ただでさえバックヤード(調理場)がぎりぎりの飲食店にとっては、スペース的に大きな負担となっていました。また、大容量ゆえに、何日も樽が空かずに味が劣化するという品質管理の問題も避けて通れませんでした。

――うーん、難しい問題ですね。

あとは仕入れ先の問題ですね。様々な種類のクラフトビールを扱おうとした時、1つ1つのクラフトビールについて、それぞれのブルワリーと相談し仕入れルートを作っていく必要がありました。ただ逆に言いますと、こうした問題を解決すれば、多くのお店でクラフトビールをお取り扱い頂き、その先のお客様にもクラフトビールの魅力を知っていただけるという自信はありましたので、ならば解決してやろうじゃないかという意気込みでいました。そうして誕生したのがタップ・マルシェなのです。

急速に広がるタップ・マルシェの世界

――2018年に全国展開をスタートしたタップ・マルシェは、その年に早くも設置店舗数7000店を達成し、ビール界に旋風を巻き起こしています。そうしたなか、2019年末には13,000店を目指しているそうですが、現在の状況はいかがですか。

おかげさまで今年も順調に、様々な業態でタップ・マルシェを導入いただいています。毎日40店とか50店のお取り扱い開始のご連絡を頂き、タップ・マルシェがクラフトビール導入におけるハードルを下げられていることの現れかと嬉しく思っています。

――設置店舗はどういったお店が多いのですか。

カフェダイニングやフレンチ、イタリアンなどのお店はもちろん、和食店や焼鳥・海鮮など の大衆居酒屋、中華料理店など幅広いお店で導入いただいています。 クラフトビールの特徴として、店員さんが味や風味を説明したり、お客さん同士が飲んだ感 想を言い合ったりするなど、コミュニケーションが生まれやすい飲み物という点が上げられます。これまでビール専門店でしか聞かれなかったようなクラフトビールを通じたコミュニケーションが、専門店ではないお店にまで広がってきています。

――なるほど。

そうした会話の一つとして、もつ煮や焼き鳥といったしっかりとした味わいの料理にはしっかりとした苦味の「496」がいいとか、新鮮なお刺身料理には白ワインのように爽やかな「オンザクラウド」がベストといったような食とビールのマリアージュ。すなわち食事に合わせて自分好みのビールを選ぶ楽しさが、徐々に広まっています。意外なところでは、喫茶店などでスイーツとクラフトビールのペアリングを提唱する店舗などもあるそうです。「チョコレートケーキとアフターダーク」とか確かに相性が良さそうですよね。

――タップ・マルシェの設置店が順調に増える中で、クラフトビールの銘柄はお店側が自由に選べるということもあり、人気にばらつきが出ているではないですか?

それが意外にも、どの銘柄も幅広く飲んでいただいているんですよ。私が驚いたのは、宮崎ひでじビールに「九州CRAFT日向夏(発泡酒)」という商品がありまして、名前に九州が入っていますから、注文は九州限定か東名阪にある宮崎料理のお店ぐらいかと思っていました。ところが発売初日には42都道府県から注文を受けたんです。お客様の嗜好をこちらで決めつけてはいけないということを改めて痛感しました。

タップ・マルシェが人とビールを自由にする

――最近では映画館やブックカフェなど、飲食メインの業態以外のところで、タップ・マルシェを設置する動きが広まっているとか。

映画館で映画を観ながら、ゆっくり時間をかけて味わったり、ブックカフェやコインランドリーといった地域交流の場では、コミュニケーションの活性化にもひと役買ったりと、このような広がりは当初まったく予想していませんでしたが、営業現場がアイディアをめぐらせて開拓してくれた成果だと思っています。タップ・マルシェというまったく新しいモノが、どういう可能性を持ち、どういった価値を生み出していくのかということを、彼らがとことん考えてくれたからこそ広がった世界ですね。

――それは面白いですね。

タップ・マルシェを通してもっとビールを自由に、元気にしてきたい。そしてゆくゆくは、日本でもクラフトビールが当たり前のものになって、世代や文化を超えた様々なコミュニケーションの場が生まれたら、そのとき初めて、「とりあえずビール」とは異なるビール文化が、日本にも定着したと言えるのではないでしょうか。(石井)

中世ヨーロッパの時代。領内で定期的に開かれるMarché(マルシェ:市場)は、様々な人と文化が自由に行き交う一大交易地として、大いに賑わったと言われています。タップ・マルシェもそれにならい、日本各地にクラフトビールの自由市場を形成していきたい。ビールに自由を!という石井さんの願いは、ビールを愛する人すべての願いでもあるでしょう。

おすすめコンテンツ

TOPへ戻る

[ここからフッタです。]

先頭へジャンプ