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醸造学部

No.108

いま、クラフトビールが面白い!
〜市場のキーワードは「競争」から「共創」へ〜

いま、クラフトビールが面白い!〜市場のキーワードは「競争」から「共創」へ〜

昨年4月の酒税法改正でビールの定義が大幅に緩和され、いよいよ存在感を増してきたクラフトビール。その多彩な魅力と盛り上がりの背景を、現場の最前線に立つSVBの島村さんのお話を聞きながら学びます。

島村宏子さん
PROFILE 島村宏子 さん

キリンビール入社後、営業開発部、キリンホールディングス経営監査部などを経て、2015年1月スプリングバレーブルワリー(SVB)に出向しプランニングディレクター、18年10月から現職。

いま、クラフトビールが面白い!

――ズバリ、クラフトビールの魅力と人気の秘密を教えて下さい。

ビールって選んでいいんだ! そんなクラフトビールの多様性が浸透してきたように感じます。肩肘張らず、その日の気分でビールを選ぶ。ビール本来のカジュアルな魅力は生かしつつ、そこに造り手(ブリュワー)たちの創意工夫が加わった多彩な味わいは、ビール好きはもちろん、これまでビールを敬遠してきた人たちにも着実に訴求しています。

クラフトビールについて語る島村宏子さん
昨年10月にSVB2代目社長に就任した島村さん。営業に始まり、外食産業での知見を積み、ビールだけではなく、洋酒部門にも携わり、本社の監査部という異色のキャリアの持ち主ながら、「技術系の個性豊かな従業員が多いSVBにあって、私はいたって普通です」とのこと。

――似たような現象として、かつて「地ビールブーム」というものがありましたが、クラフトビールと地ビールの違いはどこにあるのでしょうか。

「地ビールブーム」が起こった90年代後半は、ビールづくりそのものよりも、ご当地を盛り上げる「町おこし」が先行してしまい、産業としては定着しませんでした。技術的に未熟で品質が不安定だったことも一要因です。その点、現在のクラフトビールは、本当にビールづくりが好きなブリュワーたちが技術を磨き上げ、品質や個性にこだわったビールをつくり起業して、身の丈に合ったブルワリー(醸造所)の経営をしています。お客さんはそんな彼らの志に共感して集まっているのです。

クラフトビール市場推移と「ビール」カテゴリー内構成比
市場における年2%前後の伸び率は、クラフトビールの人気が一過性のものではなく、ゆっくり着実に根付いていることを証明している。

――「ビールづくり」の純粋な評価が、クラフトビールの人気となっているわけですね。

ただビールをつくればいいのではなく、その背景にある独自のストーリーやブリュワーの個性や思いが、クラフトビールならではのブランド力を高めているのです。ワインや日本酒や焼酎がそうであったように、これからのビールも、造り手であるブリュワーの存在がより前面に出てくるようになるのではないでしょうか。

ブリュワーズ・ナイトの様子
SVB横浜の月いちイベント「ブリュワーズ・ナイト」は毎回50名を超す盛況ぶり。中には特定のブリュワーを目当てとする参加者もおり、「推しメン」ならぬ「推しブリュ」が誕生する日も近い?
SVB東京、国内で2基しかない透明タンク
SVB東京には国内で2基しかない透明タンクを店内に設置。客は醸造工程をながめながらビールを飲むことができる。

――ビールを飲むお客さんに変化はありますか?

本当に飲みたいものを素直に主張できる人が、とくに若い女性の間で増えているように思います。SVBでも「これってピルスナーですか?」といった質問が自然に出たりしますから。感度の高い女性が、慣習にとらわれずに自分のスタイルを追求する姿勢は、どこかファッションに通じるものがありますね。たとえば今日はワイドなワンピースに細身のスラックスを合わせようといった具合に、その日の気分でフルーツ系のビールを飲んだり、パンチの効いたIPAを飲んだりする。そういう選択肢ができるアイテムとしてビールが認識されつつあるような気がします。

SVB東京、店内の様子

クラフトビールは社会も変える!?

――今後さらにクラフトビールを盛り上げていくためには、なにが必要でしょうか。

クラフトビールの魅力はなにより多様性。新しい素材の発見や、ブリュワーの突拍子もないアイディアなど、人々の予想を超えたワクワクするような展開が今後も期待できます。確かに生産効率は決して良くないし、爆発的な人気も期待できないかもしれません。けれど、ゆっくり時間をかけてブランドの価値を高めていくことが大切だと考えています。そのためにはビール会社が競い合う「競争」ではなく、皆で共に創る「共創」の精神でやっていく必要があります。「クラフトビール」の浸透を一過性のブームで終わらせず、産業として定着させるのは、製品自体の味や品質で勝負するのは当然ですが、この市場を、皆で手を携えながら全体を盛り上げていくことが重要です。

――なにか具体的に行動をおこしていることはありますか。

キリンでは遠野産のホップを推進して、日本産のホップを広めていくプロジェクトをおこなっています。そうすることで、それに携わる農家の方々の生活も改善でき、地方の特産品と東京を結ぶことで市場も活性化できる。結局クラフトビールとは、地域に根づいて社会課題を解決しながら進んでいくことでしか、産業として成立しないんです。それが軌道に乗りつつあるというのが、いま現在の状況ではないかと思います。

遠野での様子
小規模生産ながら東北産らしい奥ゆかしい香りは、海外でも徐々に評判となりつつある。

――キリンが開発した一台で4種類のクラフトビールが味わえる「Tap Marché(タップマルシェ)」は、そうした市場の活性化に大きく貢献しているようですね。

重要なのは4種類のセレクトをお店に任せていること。こちらが特定の銘柄を押し付けるのではなく、そのお店のスタイルに合ったビールを選べばいい。それが飲食店の本来の姿だと思いますし、その方がお客さんはもちろん売る側も楽しいですよね。自分の店の個性をアピールする機会になるわけですから。ビール会社と飲食店とお客さんが対等の関係というのかな。余計なプレッシャーを感じずに、純粋にビールが好きというだけで成り立つ関係というのが、これらからの時代に相応しいのかもしれません。

Tap Marché
クラフトビール普及の最強兵器(?)「Tap Marché(タップマルシェ)」。選べるビールの銘柄も随時拡充中とか。
「従業員みなの情熱を実行に移すのが私の仕事。ビールはもっともっと面白くなる」と語る島村さん。
「従業員みなの情熱を実行に移すのが私の仕事。ビールはもっともっと面白くなる」と語る島村さん。

あらゆる垣根を超えて拡がりをみせるクラフトビールの輪。島村さん自身「予想を超えた所でいろんな動きがある」と驚くように、自由で自然な盛り上がりは、日本のビールの新しいあり方を示していると言えるでしょう。そんなクラフトビールから、今後ますます目が離せそうにありません。

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