ビールの歴史
古代種「エンマーコムギ」は
穂刈りがラクだったから3000年も栽培された

古代エジプトで栽培されていたのは、現在はほとんど栽培されていないエンマーコムギ種だった。1メートル以上の高さがあったエンマーコムギは、平均身長が160センチくらいの古代エジプト人が、かがまずに麦の穂を刈るのにちょうどよかったため、3000年近くも栽培されたのだ。
ムギという、現在はほとんど栽培されていない種が利用されていました。
エジプトでの麦の刈り入れは、「穂刈り」といって、麦の穂の部分だけを刈っていきます。
というのも、根っこのところから刈り入れをすると、かがまなくてはいけないから重労働です。腰が痛くなりますね。
でもエンマーコムギは背が高い。1メートル以上あります。古代エジプト人の平均身長が160センチぐらいですから、麦の穂の部分だけをカットする穂刈りは高さがちょうどいい。だからエンマーコムギをずっと3000年間栽培していたんです。
でも、皆さんがご存じの麦畑は、1メートルもの高さはないでしょう。いま栽培されている種類の麦はエンマーコムギに比べてかなり背が低いわけです。
なぜなら、低いほうが倒れにくいから。つまり収穫率がいいわけです。
ですからその後、麦刈りが奴隷の仕事になってしまいますと、奴隷がやるんだから腰が痛くなろうがきつかろうがどうでもいい。そうすると倒れないのがいいということで、品種改良でどんどん麦の丈が下がっていったということなんですね。
by 吉村作治 早稲田大学名誉教授 エジプト考古学者