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史学部

No.27

「ビールの魂」ホップの登場!

 ビールの産業化と呼応するように、この時代、いよいよホップがビールに添加されるようになる。ビールの歴史における最大の進歩、それはホップの使用に他ならない。まさにビールのために生まれてきたようなホップ。その特性はおよそ次のとおりである。

 ・ビールに独特の芳香と爽快な苦みを与える。
 ・ビールを澄んだ透明感のある液体に変える。
 ・ビールの泡立ちを良くする。
 ・雑菌の繁殖を抑え、ビールの腐敗を防ぐ。

「いいことずくめじゃないか!」

そんな歓喜の声が醸造業者たちの間で聞こえてきそうであるが、ホップ入りビールが広く浸透するまでには、数世紀もの長い年月を要したのであった。

 西アジア原産とされるツル草のホップが、ヨーロッパに伝来したのは8世紀半ば。ドイツ南部バイエルン州のハラタウで、スラヴ系ヴェント人の戦争捕虜がホップの栽培をおこなったのが最初といわれている(*1)。しかしこの時点でホップがビールに添加された記録はない。

 822年、ドイツ北部ヴェーヴェルンのコルヴァイ修道院で、ホップ入りビールが醸造された最古の記録が残っているが、その後、北部でホップの添加が定着した形跡はなく、ビールといえば種々のハーブを複雑に配合したグルート・ビールの時代が長く続いた(*2)。

 ホップがようやく注目されるのは12世紀初頭、ドイツ南部ビンゲンの女子修道院長でありドイツ薬草学の祖と称されるヒルデガルトが、ビールにおけるホップの特性について、初めて詳細な記述をおこなったことであろう(*3)。以後、ホップの名は徐々に浸透し、北部ではアインベックが14世紀半ばにいち早くホップ入りビールを販売し名声を確立。ホップ発祥の地である南部では15世紀からホップ入りビールが主流となり、やがて北部にかわって醸造業を牽引していくことになるのである。

 とはいえ、グルート・ビールの需要は依然として根強く、ホップ入りビールが真のグローバル・スタンダードとなるには、さらに数世紀もの年月を要するのであった。 

(*1)大草昭『ビール・地ビール・発泡酒』文芸社P185
(*2)山本幸雄『ビール礼賛』東京書房社P60
(*3)村上満『ビール世界史紀行』東洋経済新報社P35

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