世界的な社会課題の一つである肥満。
キリンは、その課題解決につながる
新たな研究成果を生み出しました。
ビールの原料であるホップを
熟成させて生まれる
「熟成ホップ由来苦味酸」に
体脂肪を低減させる効果があることを
解明したのです。
さらに、この熟成ホップ由来苦味酸を
さまざまな飲料や食品に利用できる
「熟成ホップエキス」
の開発にも成功しました。
※画像はイメージです。
脂肪組織には、
一般に知られている
白色脂肪組織のほかに、
活性化すると脂肪を燃焼させる
褐色脂肪組織があります。
非臨床試験の結果、
熟成ホップ由来苦味酸には
褐色脂肪組織を
活性化させる働きがあることが
わかりました。
さらに、臨床試験においても
腹部全脂肪面積が優位に低下しており、
体脂肪を低減させる効果がある
ことが確認されました。
(図1参照)
このことから、
熟成ホップエキスに含まれる
熟成ホップ由来苦味酸が
脂肪を燃焼させ、
体脂肪が低減した
と考えられました。
図1 熟成ホップの体脂肪低減効果
新鮮なホップには「α酸」という
苦味成分が含まれており、
ビール醸造の過程で
「イソα酸」に変化します。
このイソα酸は様々な効果、
作用が期待されるものの、
苦味が非常に強いもので
実用化への課題とされてきました。
そこで着目したのが
古くから苦味をまろやかにする
と言われていた熟成したホップ。
熟成ホップに含まれる
成分を調べたところ、
新鮮なホップにはない
未知の成分を発見しました。
これを「熟成ホップ由来苦味酸」
と名付け、
研究を続けていくと、
イソα酸より苦くない上に、
体脂肪を低減させる効果
があることを突き止めました。
図2 ホップ中の苦味成分と熟成によるメリット
今回、研究チームが確立した
効率的にホップを熟成させる
「加熱熟成技術」は、
従来の方法では、
約10カ月間必要だった熟成期間を、
従来の約100分の1(数日間)
にできるようにした
画期的な技術です。
また、さまざまな飲料や
食品に展開できるよう、
熟成ホップを水で抽出して
エキス化しました。
こうして、
熟成ホップ由来苦味酸を含む新素材
「熟成ホップエキス」
の量産が可能になりました。
抽出した熟成ホップエキス
「もっとおいしく、
もっとカラダのことを
想ったビールがあればいいのに。」
そんな素朴な想いから
ホップの研究開発が始まりました。
ホップの苦味に
機能があることを突き止めたものの、
その苦味を制御するのは苦労の連続で、
もう研究をやめたほうがいい、
と会社から言われた時代もありました。
しかし諦めずに試行錯誤を重ね、
最後に辿りついたのは、
新鮮なホップをあえて熟成させる
というビール製造とは真逆の発想。
これにより、苦味を抑え、
体脂肪低減効果を持つ
熟成ホップエキスを開発し、
ノンアルコール・ビールテイスト
飲料である
カラダFREEにも
活かすことができました。
ここに至るまで
多くのハードルがありましたが、
国内外の権威ある学会で
高く評価され、
ついに商品として
お客様の手元に届く日が来るのは、
研究者として嬉しい限りです。
様々な食品に応用できる可能性がある
熟成ホップエキスの
ポテンシャルを活かし、
今後も世の中に
さらなる驚きを提供したいと思います。
キリンホールディングス株式会社
健康技術研究所
山崎 雄大