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ビール用語事典 Vol.7

難解なビールの専門用語をやさしく解説するビール用語辞典のVol.7。「お」から「へ」までを紹介します。

【お】

大倉陶園(おおくらとうえん)

1919年、大倉孫兵衞が「全く商売以外の道楽仕事として、良きが上にも良き物を作りて」をモットーに創業した大倉陶園。当初から、ヨーロッパの新しい生地に日本の伝統的な呉須や漆蒔きなどの絵付けを施し、独自の装飾技術を展開させてきました。後に宮内庁御用達となり、1974年には迎賓館に製品を納めるなど、日本が誇る洋食器ブランドとして確かな地位を築いています。

大樋長左衛門(おおひちょうざえもん)

十代大樋長左衛門(1927-)。340余年にわたる大樋焼の伝統を守りながら、現代的な造形作家としても多彩な創作活動を行い、2011年には文化勲章を受章するなど高い評価を得る。千利休ゆかりの茶陶として名高い楽焼の、正統な脇窯とされているのが金沢の大樋焼です。その特徴は、艶をおびた飴色の陶肌。

【か】

加藤卓男(かとうたくお)

1917-2005。幸兵衛窯の六代目に生まれ、多岐にわたる活動で知られています。古代ペルシア陶器の研究に打ち込み、25年にわたって中近東を遍歴。さらに18年かけて、幻の名陶ラスター彩の復元に成功。その後、正倉院御物の奈良三彩の復元も手掛け、三彩陶によって95年に人間国宝に認定されました。中世六古窯のひとつにもかかわらず、時代に応じて灰釉陶器や織部など多彩な陶磁器を生み出してきた美濃焼。

カレワラ(かれわら)

フィンランドの叙事詩「カレワラ」をモチーフに、北欧最大の製陶場アラビアを代表するデザイナーが手がけた名作。庶民の暮らしに寄添う作品を生みつつ、高いデザイン性を追求するスカンジナビアン・デザインは、素朴で温かみのある絵柄と親しみやすい作風で、多くのファンの心を捉え続けています。叙事詩「カレワラ」は、長くロシアの支配下にあり、1917年に悲願の独立を勝ち取ったフィンランド国民にとって、民族意識を高め、独立運動の精神を支えるもの。1835年に書物として発表されて以来、多くの芸術作品にも影響を与えてきました。

【て】

テレジアンタール(てれじあんたーる)

テレジアンタールは1421年創業のガラス工房です。現在のブランド名は、バイエルン国王ルードヴィヒ1世妃テレジアに由来しています。グラヴィールの繊細さ、ヴェネチアに由来する技法の華麗な玉飾り、繊細なカットやエナメル装飾など、高度な技術と豊富な経験をもった熟練の職人たちの手作業によって生み出されています。美の探究者、ルードヴィヒ2世が限りなく愛したといわれるバイエルンガラスの歴史が息づいています。

【は】

バーレイワイン(ばーれいわいん)

アルコール度数の高いエールを作る目的でつくられたビール。多くのビールが5%前後ですが、バーレイワインは8〜12%。大麦(バーレイ)で作る酒(ワイン)の意味ですが、この名が広まったのは20世紀に入ってから。以前は「オールドエール」「ストロングエール」「ストックエール」などと呼ばれていました。アルコール度数を上げるために、長期発酵と長期熟成は半年以上の。濃厚なボディに負けないよう、麦芽もホップもたっぷりと使います。そしてじっくりと熟成される過程で木樽の香りが移り、複雑な風味を作り出します。

焙燥(ばいそう)

ビール製造工程のひとつ。水に浸された原料の二条大麦が発芽し麦芽になりますが、焙燥はその成長を止める工程です。麦芽に湿風(熱風)をあてて感想させます。焙燥で麦芽に焦げ色をつけると、その色がビールの味やコクに大きく影響します。黒ビールの濃い色は、麦芽の焦がした色と風味によるものです。

麦芽(ばくが)

ビールに欠かせない原料の一つ。大麦を発芽させたものが麦芽です。水分と空気をあげると2日から5日程で発芽します。ある程度成長した段階で、乾燥させて根っこを取り除くと麦芽の完成です。麦芽は、ビールの色味、うまみと香り、泡に大きな影響を与えるもので、ビールの性格を決める大事な原料なのです。

麦汁冷却(ばくじゅうれいきゃく)

煮沸の終了した麦汁は、発酵に適した温度まで冷却されます。現代のビール造りでは熱交換器で短時間に冷却されますが、以前は、自然冷却でとても時間がかかりました。

ハトホル(はとほる)

エジプトのビールの女神。さまざまな資料、壁画やレリーフに描かれたビールについての記述の中に、ハトホルの祭りの様子があります。「大量のビールが集まった巡礼者達に配られ、皆は頻繁に酔っていた」という内容で、当時のビールは神様や死者への供え物としても重要であったことがわかります。また同時に薬としても使われ、古代エジプト人にとってビールはとても身近なものであったと考えられています。

【ひ】

ビアスタイル(びあすたいる)

ビールの種類のこと。ビールづくりでは、原料や醸造方法を組み合わせることで、様々な味わいのビールがつくられ、細かく100種類以上に分類されています。ビアスタイルは、発酵方法の違いで大きく3つに区分されます。ラガー酵母を使い下面発酵させるラガー系。エール酵母を使い上面発酵させるエール系。これら2つ以外の方法でつくられる「その他」に分かれます。そして、さらに地域や原料で細分化していくと、100種類以上のビアスタイルにもなるのです。

ビールカクテル(びーるかくてる)

ビールはちょっと苦手という人でも楽しめるビールをベースにしたカクテル。生の野菜や果物を使うことで栄養も取ることができます。ビールの苦みはほとんどなくなり、炭酸が心地よい爽快感を作ります。生トマトをつかったレッドアイや自家製のジンジャーシロップで作るシャンディガフなどアレンジして楽しむことができます。

ビオトープ(びおとーぷ)

工場などの排水を利用した野生生物が移動生息できる空間。キリンビールは環境保全活動の一環としてビール工場にビオトープを形成し、自然と共生していくビール造りを目指しています。使った水をきれいにして返すことにさまざまな工夫をこらして努力しています。

備前焼(びぜんやき)

岡山県備前市周辺を産地とする焼物。昔から変わらない「無釉・焼き締め」の技法で「土と炎の芸術」と呼ばれる備前焼。ビールを注ぐと、地肌の細かな土の粒子が反応してクリーミィな泡を発生させるので、陶器ならではの贅沢な味わいになります。備前焼は「ビールが喜ぶ器」と称されています。

ビターエール(びたーえーる)

イギリスの伝統的なたる詰めのエール。たる詰めのビターエールは酵母が浮遊し、完全に透明ではないけど、酵母の香味とホップの香り豊かな味わいが特徴です。イギリスではこれをろ過せずに常温で飲むのが一般的です。イギリス国内にはビターエールを楽しめるパブが約6万件もあるといわれています。

ビターホップ(びたーほっぷ)

苦味を加えるために使われるホップ。苦味のホップともいう。香りのホップはアロマホップといい、目的別に2種類を使い分けたり、選りすぐりの1種類のホップでまかなったりします。近年ではホップも品質改良が進み、香りのいいビターホップや苦味の強いアロマホップもあります。一般的には麦汁にビターホップを加えてから一時間以上煮込み、新たにアロマホップを加えて香り付けをする製法が主流でした。

ビットシカリ(びっとしかり)

シュメール人からアッカド人へと支配が変わった紀元前1700年代、メソポタミアの古代都市バビロンに存在したビール醸造所兼ビアホールのこと。バビロン市内には至る所にビットシカリがあったと記録が残っています。そこでは「サビツム」と呼ばれる女杜氏がビールをつくり、「クバウ」と称する女将が男たちにビールを振舞っていました。古代メソポタミアでは、女性がビール造りのすべてを取り仕切っていました。

ピラミッド(ぴらみっど)

古代エジプト文明の象徴とも言える巨大建造物。エジプトでは、これまで100基ぐらいのピラミッドが見つかっています。そのうち最大のピラミッドが、ギザにあるクフ王のピラミッド。高さ147メートル(現在は136メートル)、底部の一辺の長さが230メートル、石の数にして約300万個。現在のような建設機械などない4550年前のエジプトでつくられていました。ピラミッド建造の報酬としてビールが与えられていたので、一般庶民は喜んでピラミッド建造に従事していました。

びん(びん)

ビールの容器のひとつ。ビールびんは回収されたびんをまた使用するリターナブル。再利用されるびんは工場で入念に検査されています。検査は機械で自動化されており、空になって洗浄されたびんを検査する「空びん検査」、中にビールが入っている状態のびんを検査する「実びん検査(入味検査)」があります。

【ふ】

ブラウンエール(ぶらうんえーる)

ベルギーのフランダース地方の東側で造られるエール。西側で造られるのがレッドエール。総称してフランダースエールと言います。レッドエールと同じく酸味のある味わいですが、カラメルモルトやチョコレートモルトを使用し、豊かなモルトの風味を持つところが異なります。オーク樽ではなく主に金属製のタンクで熟成させます。

フランダース・エール(ふらんだーす・えーる)

ベルギーのフランダース地方で造られる酸味が特徴的なエール。フラマン語で「ジュール(酸っぱい)ビール」と呼ばれることもあります。西の方で造られるレッドエールと、東で造られるブラウンエールの二種類があります。プラムやブラックチェリーのようなフルーティーな香りと、爽やかな甘酸っぱさが、くせになる味わいです。

フルーツビール(ふるーつびーる)

「醸造の工程でフルーツを用いた」ビールの種類。レッドアイのようなビールカクテルとは異なります。製法はさまざまで、醸造の途中でフルーツを漬け込むもの、フルーツエキスを加えるものなど。最近は日本のクラフトビールでも増えてきました。ビールの爽快感とフルーツのフレッシュな香りが楽しめ「ビールはちょっと苦手」という方にも好まれています。

フレーバー(ふれーばー)

香味のこと。味覚と嗅覚には「ある物質の存在を感知する」という共通の機能があり、通常は味とにおいは区別しにくいため、味と一体化した「香味(フレーバー)」として表現されることが多くあります。ビールの香味成分としては、麦芽香、エステル香、ホップ香などが代表的。他にも600種類以上の成分があり、それぞれが少しずつ混ざり合ってビールの香りとなっています。

【へ】

ヘーフェヴァイツェン(へーふぇゔぁいつぇん)

南ドイツ伝統の小麦ビール、ヴァイツェンの中で、特に酵母をろ過していないビール。「へーフェ」とは、ドイツ語で「酵母」という意味。たんぱく質が豊富な小麦を用い、酵母をろ過していないため、白く濁っています。ホップの苦みは少なく、泡立ちが豊かなスタイルです。ヘーフェヴァイツェンは、フルーティーな香りが特徴。バナナやバニラ、風船ガムを思わせるような香りがするものもあります。これらの香りは人工的に風味づけされたものではなく、醸造の過程で酵母の働きによって生まれます。

ペールエール(ぺーるえーる)

ビターエール以外のエール。びん詰めのペールエールはアルコール分を強め、炭酸ガスを加え、ろ過、殺菌を行なってびん詰めされています。長時間の輸送保存に耐えることを目的としています。そのためペールエールは海外への輸出にも適しているのです。