【い】
井上萬二(いのうえまんじ)
1929-。12代酒井田柿右衛門、奥川忠右衛門といった名工に師事し、当代随一の白磁の名手と称される。「形そのものが文様」とされる白磁は、加飾に頼らず、造形だけですべてを表現するシンプルで端正な美しさが大きな魅力です。その卓越したろくろ技術に裏打ちされた、一点のゆがみもない完璧なフォルム、そして凛とした風格は、まさに白磁の神髄といえるでしょう。

今右衛門(いまえもん)
十三代今右衛門(1926-2001)。このマグで使われている「吹墨」の技法は、十三代今右衛門が再び現代に蘇らせた今右衛門窯の代表的な技法です。今右衛門家は、江戸期に鍋島藩(現・佐賀県)の御用赤絵師となって以来、代々「色鍋島」の制作を続けてきました。

【こ】
コスタ・ボダ(こすた・ぼだ)
北欧を代表するクリスタルメーカー。1742年に創業したコスタ・ガラス工房と、同工房の職人が独立して起こしたボタ工房が、1963年に合併して誕生しました。独創的なデザインとマイスターと呼ばれる熟練技術者の技が響き合って生まれる作品は、最高の透明感と北欧の清冽な大自然が集結したような美しさを誇ります。その高い品質はスウェーデン王室に認められ、王室御用達の栄誉にも輝いています。

【し】
ジアン(じあん)
ジアンの故郷は、ロワール河流域に位置する町です。創業した1821年当時は、多くの王侯貴族が城を構え、狩りを楽しんでいました。彼らの間で評判になったのが、ジアンが手掛ける紋章入りの食器です。それは、イギリスの銅版転写に着色石版刷りを加えた多色刷りの技術を有していたジアンが、最も得意とするものでした。その後も陶器本来の温かみと雰囲気のある絵柄で人気を博し、今では世界中に愛好者を持っています。特に19世紀後半に開発された深みのある青は「ジアンブルー」と呼ばれ、ジアンを代表する色として広く知られています。

修道院ビール(しゅうどういんびーる)
ヨーロッパの修道院で自給自足の生活がおこなわれるなかで製造されたビール。伝染病を媒介しない「命の水」として製造。中でもトラピスト会修道院が製造するものは特別に「トラピストビール」と名乗ることができます。その他の修道院の、伝統的な手法をもとに造られるビールは「修道院ビール」と呼びます。いずれも上面発酵の「エール」です。びん詰めしたのちにびん内熟成されるのが特徴。びん一本一本で味が変わり、アルコール度数は高めで、濃厚な味わいがあります。

熟成(じゅくせい)
ビール製造工程のひとつ。麦汁に酵母を加えアルコール発酵させて約1週間で「若ビール」になります。この若ビールを貯蔵タンクに移し、0℃の低温で1〜2カ月間じっくり熟成。このようにじっくり熟成したビールがラガータイプと呼ばれるビールになります。ラガーとはドイツ語で「貯蔵・熟成する」という意味です。

蒸留酒(じょうりゅうしゅ)
醸造酒を熱してできた蒸気を冷やして液体として回収したお酒。純粋アルコールが沸騰する温度は約78℃。水分よりも先にアルコールの方が蒸気になり、そのアルコールの蒸気を集め、冷やして液体にすると、もとのお酒よりもアルコール濃度の高いお酒が作られます。できあがったばかりの蒸留酒は無色透明ですが、タルに詰めて熟成させると琥珀色に変わります。またタルのなかで少しずつ蒸発するため中身は減り、アルコール度数も下がっていきます。

ジョッキ(じょっき)
飲むためだけではなく、ときに注ぐことも用途に入れた器。ジョッキには、しばしば口縁部に注ぎ口が付けられています。またジョッキの把手の多くは、持ちあげるとボディの重心が、反対側の注ぎ口へと自然に傾くようにつり把手型とする工夫がなされています。

【す】
スコッチ・エール(すこっち・えーる)
スコットランドのエディンバラで生まれたビール。ほかのエールと比べて低温で発酵させて造られています。アルコール度数は高く、モルトの存在感が特徴的です。もともと、強いビールを好むベルギーへの輸出用に開発されたスタイルで、ベルギーでは「スコッチ」というと、ウイスキーではなくこのエールを指すといわれています。ホップの風味は弱く、モルトの存在を強く感じるスコッチエール。モルトが特徴的に表れ、カラメルのような甘みが感じられます。

鈴木藏(すずきおさむ)
1934-。現代の志野焼を代表する陶芸家。「藏志野」は、ガス窯による焼成で窯変の偶然性に頼らず、独自の志野の世界を表現しています。茶の湯が隆盛を誇った時代に、茶陶として珍重された美濃の志野焼は、長石釉で焼いた日本で初めての白い陶器として知られており、絵柄の入った絵志野や、ねずみ色の地の色と白の文様とのコントラストが魅力の鼠志野が有名です。

スプリング・バレー・ブルワリー(すぷりんぐ・ばれー・ぶるわりー)
祖国を遠く離れた日本でビール醸造に乗り出すことに決めたコープランドが1870年頃、横浜・山手の123番地など4区画の土地に設立したビール醸造所。この一帯は「天沼」と呼ばれており、コープランドは周辺に豊富に湧き出ていた良質な水がビール醸造にふさわしいと判断。完成した醸造所はスプリング・バレー・ブルワリーと名づけられました。醸造に使う道具や機械類、麦芽、ホップなど原料の大部分をアメリカから輸入すると、ただちにビール醸造が始められました。

【ち】
チチャ(ちちゃ)
中南米の伝統的なトウモロコシビール。かつて茹でたトウモロコシの実を噛んで唾液と混ぜ、唾液中の酵素によってでんぷんを糖分に変えて造っていたため口噛み酒ともいう。現在では基本的には大麦のビールの造り方とほとんど同じです。トウモロコシを水に浸して発芽させ天日で乾かし、石臼ですりつぶしてから水と混ぜて煮ます。それをろ過してからびんに入れて自然発酵させます。発酵をはじめてから1週間程度で飲めるようになります。

チョコレートビール(ちょこれーとびーる)
スタウトなど黒いビールを醸造する際に、「チョコレートモルト」を用いたり、カカオの豆やエキスを加えたりしたビール。風味はまるでビターチョコレートのようで、深い苦みや甘みが感じられます。ビール醸造に必要不可欠な麦芽。その麦芽を焙煎する際、温度を高くしてつくるのがチョコレートモルトです。ベースモルトとも呼ばれる、ピルスナーなど淡色のビールに用いられる麦芽は、70℃程度で焙煎され、薄い茶色をしています。チョコレートモルトはさらに高い160℃で焙煎、まさしくチョコレートに近い色になります。

チルドビール(ちるどびーる)
工場から販売店の店頭まで流通過程も含めて完全に冷蔵した状態で配送されるビール。チルドとは冷蔵の意味。冷蔵状態が必要な理由はろ過をせず生きた酵母をそのままびん詰めしているため。すこしくもって見える見た目は酵母やたんぱく成分であり、これがあってこそ豊かな味と香りが楽しめるビールです。

沈壽官(ちんじゅかん)
薩摩焼の「白もん」といえば、近世より島津藩御用達の上手物として珍重された名品です。李朝白磁を源流とする柔らかな象牙色の地肌、繊細で典雅な透彫・浮彫の技法は、明治期の名工・十二代沈壽官によって世界的な評価を獲得しました。その伝統は十四代壽官(1926-)と息子・十五代へと受け継がれ、現在に至っています。

【て】
低温殺菌法(ていおんさっきんほう)
「近代細菌学の祖」とされる19世紀フランスの科学者ルイ・パスツールが考案した殺菌法。パスチャライゼーションともいう。1876年、彼は「酵母という微生物」が活動することで発酵が起こることを発見。酵母によるアルコール発酵が、学問的な裏付けをもって、明確に認識されるようになりました。パスツールは、醸造家たちがもっとも恐れるビールの酸化も、バクテリアや雑菌の働きが原因であるとし、繁殖防止システムを考案しました。出荷前のビールを60〜70度で20〜30分間加熱することで、酵母の活動を止め、ビールの品質保持に効果をあげました。これにより、びん詰めビールの長期保存も可能となりました。

【て】
デルフト・ブルー(でるふと・ぶるー)
17世紀半ば、オランダの街デルフトで生まれた、白地にコバルト・ブルーの鮮やかな絵付けをした「デルフト・ブルー」。中国磁器の影響を強く受けて製造された背景を持ち、「デルフト焼き」の代名詞として人気を確立していきます。チューリップや風車など日常の風景も絵の題材にし、同じ頃に活躍したオランダの画家フェルメールの作品にも登場するほど、人々に親しまれていました。

デルフト焼き(でるふとやき)
16世紀後半に、ヨーロッパで屈指の品質を誇っていた「マジョリカ焼き」がオランダ南西部のデルフトに伝わり「デルフト焼き」となりました。15世紀後半からスペインに支配されていたオランダは、焼き物もイスラム風スペイン陶器の影響下にあり、16世紀に入り、そこへイタリア・ルネサンスの波が流入しました。のちにデルフト・ブルーの製造に成功し、「デルフト焼き」は、オランダ諸都市の陶芸作品全般を総称するようになります。

【と】
ドゥーフ・ハルマ(どぅーふ・はるま)
ヘンドリック・ドゥーフが残したオランダ語の辞書。日本滞在中に編纂。オランダ船の来航が途絶え、商館長としての仕事が激減したドゥーフは、オランダ人のフランソワ・ハルマがつくった『蘭仏辞典』をもとに、蘭日辞典を編纂・制作をおこないました。完成はドゥーフ帰国後の1833年。清書した一部が幕府に献上されました。福沢諭吉も読んだと言われる『ドゥーフ・ハルマ』は、幕末の蘭学者にとって、なくてはならない辞書でした。

糖化(とうか)
麦芽の中に含まれる酵素アミラーゼによってでんぷん質が糖分に変わること。細かく砕いた麦芽に湯を入れ、釜で煮た米を加え、糖化釜に移しかえながら温度を上げることで、麦芽の酵素の働きで、でんぷん質は糖分に変わります。糖化の工程でつくられるものが麦汁です。

ドッペルボック(どっぺるぼっく)
ドイツ発祥で、香ばしい風味が漂う、透き通った外観のビールです。「ドッペル」とは、ドイツ語で「ダブル」という意味。アルコール度数が高く、モルトの甘みや香りが強いのが特徴です。色合いは美しいルビー色。ドッペルボックはもともと、修道士たちによって造られたビール。断食中の栄養源として、「液体のパン」と呼ばれたそうです。ドイツで最も「強い」ビールと呼ばれることもあるほど濃厚でハイアルコール。飲む際の最適温度は8~10℃と高め。

トラピストビール(とらぴすとびーる)
ヨーロッパの修道院で伝統的に造られてきたビールの中でも、トラピスト会修道院のもとで造られる上面発酵のビール。トラピストビールは、トラピスト会修道士の協会が定める条件を満たさなければいけません。修道院の中で醸造していること。修道士が醸造もしくは醸造の監督をしており味などについて決定権を持っていること。利益は修道院の運営管理に用い余剰分は慈善事業に充てること。以上の3つ。上面発酵タイプで、びん内で熟成させるエール。多くは、発酵を促すために氷砂糖を使用しています。しかし醸造方法について細かな定義はないため、醸造所ごとに造り方は異なり、個性が光るビールが生み出されています。

【な】
生ビール(なまびーる)
熱処理をしていないビール。酵母の働きを止めるために熱処理をしますが、醸造の技術が進歩して、熱処理の代わりに、ろ過によって酵母や微生物を完全に取り除くことができるようになりました。日本では生ビールとドラフトビールを同じものと定義しています。ドラフトビールの語源は、樽詰めビールという意味ですが、諸外国では熱処理したものでも樽詰めならドラフトビールと呼び、一方、熱処理しないビールでも樽詰めでないとドラフトビールと呼ばない国も多くあります。

【の】
ノンアルコール・ビールテイスト飲料(のんあるこーる・びーるていすといんりょう)
アルコール0.00%のビールテイスト飲料。酒類ではない。アルコール分1%未満の飲み物は日本の酒税法の範囲から外れます。これまでのビールテイスト飲料は、発酵工程で微量のアルコールが発生してしまい、0.5%程度のアルコールが含まれていました。しかしビールの麦汁製造技術と香味調合の技術を駆使し、アルコールを生成しない新製法によってノンアルコールのビールテイスト飲料がつくられました。

【は】
麦汁煮沸(ばくじゅうしゃふつ)
ろ過した麦汁を煮沸すること。麦汁を煮沸することで、麦汁の殺菌、ビールの混濁の原因となるタンパク質の熱凝固による除去、色度の上昇、不快な臭いの除去などがおこなえます。また、煮沸時に、ハーブ類を加えると、その香味が麦汁に移ります。現代のビールづくりでは、ホップがこの段階で加えられています。

