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ビール用語事典 Vol.4

難解なビールの専門用語をやさしく解説するビール用語辞典のVol.4。今回は「ふ」から「ろ」までを紹介。

【ふ】

ブルワリー(ぶるわりー)

ビールなどを醸造する場所を表す英語。醸造所。1869年、横浜山手46番地に日本で最初のビール醸造所ジャパン・ブルワリーが開設されました。経営者は居留外国人のローゼンフェルト。ここの醸造技師として働いたのが、のちにコープランドとスプリングバレー・ブルワリーの共同経営をすることになるヴィーガントです。スプリングバレー・ブルワリーは、1870年、コープランドによって、周辺に良質な水が豊富に湧き出していた横浜・山手の天沼に設立されました。

【へ】

ペアリング(ぺありんぐ)

ペアリングとは、ビールのフレーバーを見極めたうえで、料理を組み合わせていくこと。ワインの世界では、“Mariage(マリアージュ:結婚)”と呼ぶ。ペアリングのポイントとなるのは相乗と調和です。同一の味覚を合わせると、その味覚が倍増することを相乗効果といいます。異なる味覚を合わせて、いっぽうの味覚がより際立つことを調和効果(対比効果)といいます。

ヘネケト(ヘケト)(へねけと)

古代エジプトの象形文字でビールの意味。神や死者の供養物リストに頻出する言葉。食べ物を表す文字はパンとビールを組み合わせたような象形文字で表されています。ビールは、古代エジプトでは神への捧げものでした。ビールの神は女神ハトホルで、ハトホルの祭りでは大量のビールが巡礼者に配られたと伝えられています。

ヘレンド(へれんど)

東洋の磁器に大きな影響を受けた作品が有名なヘレンド。創業は1826年。シノワズリ(中国趣味)のテーブルウエアで、ヨーロッパ貴族に絶大な人気を博しました。その艶やかでエキゾチックな色使いや、精緻で優雅な細工は、ひとつひとつが丹念な手作りで生み出されている証拠です。英国のヴィクトリア女王、オーストリアのヨーゼフ皇帝をはじめ、世界の王侯貴族や名家に愛用された数々のエピソードを持っている磁器製のテーブルウェアです。

ヘンドリック・ドゥーフ(へんどりっく・どぅーふ)

1777-1835。オランダ出身。江戸時代後期、西洋との唯一の貿易窓口だった長崎・出島のオランダ商館で、14年間にわたり商館長を務めた人物で、日本で初めてビールを醸造したといわれる人物。日本人との交流が深く信頼も厚かったといわれています。彼の在任中、祖国オランダはナポレオン戦争の影響でフランスが占領。通常毎年のようにあったオランダ本国からの船は途絶え、出島のオランダ商館は孤立。しかし、この状況下でも、世界中で出島のオランダ商館だけがオランダ国旗を掲げ、独立を維持しました。その功績が認められ、オランダ国王から勲章が与えられています。

【ほ】

ポーター(ぽーたー)

酸味の出たブラウンエールに若いブラウンエール、そしてペールエールをブレンドしたものがポーターの起源。このポーターが前身となっているのがスタウトです。ポーターは20世紀に廃れてしまいますが、近年復活した古くて新しいビールです。名前の由来には諸説ありますが、港の荷運び人「ポーター(Porter)」が滋養に良いとして好んで飲んでいたから、という説が有力です。18世紀のイギリスで爆発的な人気を博し、ビール醸造業を一大産業へと躍進させる原動力となったビールです。芳醇でコクがあるのが特徴で、あまり冷やさずにちびちびと味わうようにして飲む飲み方が合います。

ボック(ぼっく)

モルトアロマが特徴的で、いっぽうホップのフレーバーは弱めであるボック。アルコール度数は高い。ボックの中でも有名なビールがドイツ発祥のドッペルボック。香ばしい風味が漂う、透き通った外観が特徴です。「ドッペル」とは、ドイツ語で「ダブル」という意味。モルトの甘みや香りが強く濃厚です。修道士たちによって造られたビールで、断食中の栄養源として、「液体のパン」と呼ばれた重宝されました。

ホップ(ほっぷ)

ホップはアサ科のつる性多年草。和名はセイヨウカラハナソウ。ビールの原料の一つで、苦味、香り、泡に重要であり、また雑菌の繁殖を抑え、ビールの保存性を高める働きがあります。ビールに使うホップは未受精の花(雌株)の部分のみで、根元の部分にはルプリンという粒があります。ルプリンにはフムロンという物質が含まれており、醸造の工程で煮沸によって苦味や泡のもとになるイソフムロンという物質に変化します。

【ま】

マイセン(まいせん)

ヨーロッパを代表する磁器メーカー。底に描かれた交差する剣がシンボルマーク。マイセンとは北部ドイツにある街。1709年、ヨーロッパで初めて白磁の焼成に成功。当時この地を治めたザクセン公国選帝侯アウグスト2世によって窯はマイセンと名付けられました。ティーカップや磁器人形で有名ですが、ドイツのメーカーだけあって古くから白磁のビアジョッキが作られています。磁器製のビアジョッキはガラス同様、口当たりがシャープなのが特徴です。また純白の磁肌は美しい彩色染付で飾ることができ、内側はビール本来の色合いを楽しむことができます。

【み】

三浦小平二(みうらこへいじ)

1933-2006。佐渡の無名異焼窯元の五代目。人間国宝・加藤土師萌に師事し青磁の技法を学び、後に、アジア各国を巡り、南宋官窯風の青磁を現代に甦らせることに力を注ぎます。佐渡の金鉱脈近くから取れる赤土に青磁釉をかけた独自の技法による、どこかユーモラスな作風は世界的にも高い評価を受け、1997年に人間国宝に認定されました。

【め】

メラノイジン(めらのいじん)

メラノイジンはビールの色合いを決める主な物質です。他にはカラメルもあります。麦芽を乾燥、焙煎する時、そして麦汁をつくる過程で発生する褐色色素がメラノイジンです。メラノイジンは糖やアミノ酸を加熱すると起こ化学反応(メイラード反応)によって生じます。

【も】

モーゼル(もーぜる)

精緻なグラヴィールというガラス器の表面に、すり模様や彫り模様を施す技法で知られる、ボヘミアンガラス発祥の地で始まったガラス工房。1857年の創業当初から腕のいいグラヴィール作家を擁し、その卓越した技法で不動の地位を築きました。天然水晶のような透明感を誇るカリ・クリスタルに繊細な文様が施されています。

モニュマン・ブルー(もにゅまん・ぶるー)

「ブリューの記念碑」と呼ばれるメソポタミア文明の頃の石版。農耕の神ニンハラに捧げるビールづくりの様子が楔形文字で刻まれ、中央には杵を使って麦の皮むきをしている人物が描かれています。紀元前4000~3000年頃のイラク北部、チグリスとユーフラテス両河川に挟まれたメソポタミアの地では、シュメール人が人類最初の高度な文明を築いていました。穀物を原料とするパンとビールは、シュメール人にとって神聖にして毎日を生き抜く栄養の糧でした。

モルト(もると)

麦芽のこと。ビールに欠かせない原料の一つ。大麦を発芽させたもの。大麦に水分と空気をあげると2日から5日程で発芽します。ある程度成長した段階で、乾燥させて根っこを取り除くと、ビールの源、麦芽が完成します。ビール作りでは、畑で収穫した大麦をそのまま使うのではなく、麦芽にしてから使います。この一手間を加える事で大麦の旨味成分を引き立てることができます。麦芽はビールのうまみ、香り、色味、泡に大きな影響を与える欠かせない原料です。

【や】

山田常山(やまだじょうざん)

1924-2005。現代の常滑陶工を代表する名工。彼が手掛けたビヤマグは、一見素朴ながら、実に洗練されたものになっています。朱泥や紫泥の急須をすべて轆轤で引き上げる美しく鮮やかな技と、使うほどに滋味を増していくのが常滑焼の特長です。

【ら】

ラガー(らがー)

ラガーとはドイツ語の「貯蔵する・熟成する」という意味の言葉です。ビール製造工程で、約5℃に冷やされた麦汁に下面発酵酵母加えて発酵タンクで発酵。麦汁中の糖分はアルコールと炭酸ガスに分解され約1週間で生成された「若ビール」を貯蔵タンクで0℃の低温で1〜2カ月の間にしっかりと熟成させ、完成したビールをラガービールと呼びます。

【り】

リチャード・ジノリ(りちゃーど・じのり)

イタリアで最古の名窯。1735年にフィレンツェ郊外の村が起源。創始者であるカルロ・ジノリ侯爵は、鉱物学に造詣が深く、自ら磁土や顔料、彩色を研究し、イタリアで初めての磁器を完成させました。1700年代の後半には、更に改良を重ねた白磁を開発します。その輝くような白さは、“トスカーナの白い肌”と絶賛され、今も世界中の憧憬を集めています。

【る】

ルイ・パスツール(るい・ぱすつーる)

1822-1895。フランスの科学者で細菌学者。近代細菌学の祖。1876年、彼は「酵母という微生物」が活動することで発酵が起こることを発見。以降、ビール製造工程の発酵について明確に認識されるようになりました。また、醸造家たちが恐れるビールの酸化も、バクテリアや雑菌の働きが原因であるとし、「低温殺菌法」と呼ばれる繁殖防止システムを考案。パスツールの研究は、低温のままじっくり発酵させる「下面発酵」の優位性、そして、常温でおこなう「上面発酵」の脆弱性を、白日の下に晒し、ビールの本流がエールからラガーへと移る時代の趨勢に、拍車をかけることになりました。

【れ】

レノックス(れのっくす)

アメリカの名窯"レノックス Lenox"。レノックス社は、1889年、ニュージャージー州の陶工、ウォルター・スコット・レノックスによって設立。1916年、発表したばかりの“レノックス・チャイナ”が、ニューヨーク5番街のティファニーの店頭に飾られて、艶やかな象牙色の陶器は瞬く間に話題となり、全米中の注目を集めました。当時の大統領ウィルソンが、レノックス社のテーブルウエアをホワイトハウスの正餐用の食器に指名したのは、その2年後のことです。アメリカの陶器メーカーに初めて与えられた名誉でした。

【ろ】

ロイヤル・ウースター(ろいやる・うーすたー)

1751年に創立されたロイヤル・ウースターは、イギリスに現存する中で、最も古い窯とされています。しかもその長い歴史は、国王自らが一代限りとして与えるロイヤル・ウォラント(英国王室御用達の勅許状)を、1789年の国王ジョージ三世以来、現エリザベス二世まで、途切れることなく授かるという栄誉に満ちたものです。代表作の“ペインテッド・フルーツ”が、イギリスが誇る最高の工芸品のひとつであることは、誰もが認めるところです。

ロイヤルコペンハーゲン(ろいやるこぺんはーげん)

ロイヤルコペンハーゲンは、デンマーク王室がその威信をかけて育てあげた名窯です。王立磁器窯となった1779年から経営が民間に委ねられる1868年までは、この窯の磁器は王室だけが手にできるものでした。「王冠と3本の波」のマークと商品番号、手描きの絵付けを施したペインターのサインから成るバックスタンプは、一つひとつが一点ものである証です。「唯一最高のものしか求めない」という王室伝統の精神は、ロイヤルコペンハーゲンの作品の中に、今なお受け継がれています。

ロイヤルデルフト(ろいやるでるふと)

デルフト焼きの伝統を330年間守り続けているオランダのボースレン・フレス社が、深く鮮やかな“デルフトブルー”を使った絵付けを完成させ、後に王室から、唯一名乗ることを許された名称。17世紀、磁器の原料になる土がないオランダの陶工たちは、デルフト郊外の陶土で独自の陶器を開発しました。それが、デルフト焼きです。染付など、東洋の磁器を模したデザインが特徴。現在もロイヤルデルフトの絵付けは、画工による総手書きを貫いています。

ローゼンタール(ろーぜんたーる)

ローゼンタールは、1879年、バイエルン州ゼルブで興った工房です。王侯文化漂う豪奢な食器づくりを踏襲しつつ、機能性と芸術性を併せ持つ現代的な作品づくりが特徴です。モーツァルトのオペラをイメージしたヴィヨン・ヴィンブラドによる『魔笛』シリーズはその代表作。他にも数多くの国際的デザイナーが参加しています。

ロールストランド(ろーるすとらんど)

1726年、スウェーデン王室御用達の窯として設立されたロースストランドは、北欧では最古、全ヨーロッパでも2番目に古い歴史を誇る陶器メーカーです。その品質の高さや美しさは折り紙付で、毎年のノーベル賞の晩餐会でその食器が使われることでも知られています。また第二次世界大戦以降には、「芸術家を産業現場へ」という政策の下で多くの芸術家を招き入れ、新たな作風も完成させています。その機能性と芸術性が融合したシンプルなデザインは“スカンジナビア・デザイン”と呼ばれ、こちらも世界中で高い評価を得ています。

ろ過(ろか)

熟成を終えたビールから酵母やにごりの原因となる不要なたんぱく質を取り除くための工程。熟成工程を終えたビールは貯蔵タンクからろ過機に移され、ビール製造工程の最終仕上げを迎えます。この製造工程で作られたビールは「生ビール」です。一方で熱処理製法によって酵母を熱で死滅させる方法があり、これは「生ビール」ではありません。