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ビール用語事典 Vol.2

難解なビールの専門用語をやさしく解説するビール用語辞典のVol.2。今回は「こ」から「て」までを紹介。

【こ】

酵母(こうぼ)

糖分をアルコールと炭酸ガスに分解するチマーゼという酵素を持つ1000分の5ミリほどの微生物です。イーストと呼ばれる「子のう菌」の仲間。ビールの場合、麦芽のデンプン質を糖分に変え、その糖分を酵母の作用で発酵させます。ビール1リットルを造るのに約600億もの酵母が働き、麦汁を発酵させて、アルコールと炭酸ガスが生成されます。

コク(こく)

味の濃さや深さ、豊かさを意味する言葉。原料である麦芽のエキスや糖分・旨みのもとのアミノ酸、さらにはホップやアルコールなどの量でコクが決まります。発酵過程では麦芽に含まれているエキスを全てアルコールに変えてしまうわけではなく、一部はデンプン質や糖分のまま残して、味を調整します。語源は「濃い」または「酷」といわれています。

ゴブレット(ごぶれっと)

飲み口が多少しぼられた聖杯型のグラス。香りがグラス内にとどまり、かつ逃げにくい。聖杯のように飲み口が広いものであれば、アゴを上げずに、飲むときには顔をわずかに傾斜させるだけで飲むことができるため、ビールの味わいをじっくり楽しめます。エール系のビールのように風味を楽しむようなビールに最適なグラス。

小麦ビール(こむぎびーる)

生の小麦、または小麦麦芽を使用したビール。ドイツではヴァイツェンビールあるいはヴァイスビールと呼ばれています。ヴァイツェンは小麦の意味。ヴァイスは白の意味。白ビールともいいます。外観は非常に淡い色で爽やかな口当たりが特徴。16世紀頃のビールつくりでは飢饉のために小麦はパンにのみ使用しビールには使用を禁止する法令が出されたこともあります。フルーティな香りとクリーミーな泡を楽しめるビールです。

【さ】

酒井田柿右衛門(さかいだかきえもん)

人間国宝の十四代酒井田柿右衛門。世界的人気の色絵磁器・柿右衛門様式の継承者。その美しさから、18世紀ヨーロッパ王侯貴族が競って収集し、写しが西洋各地の陶磁器窯で作られたほどの人気を誇る柿右衛門。十四代酒井田柿右衛門(1934-2013)は、400年近く続くその柿右衛門様式の伝統を守りつつ、現代生活に調和した色絵磁器として優れた作品を生み続けました。

酸化臭(さんかしゅう)

ビールの香味やその他の成分が酸化して発生するにおい。涼しところではゆっくりと変化するため影響はそれほど出ません。高温になればなるほど酸化は急速に進みます。ビールの中の空気と高温の相乗作用による。空気含有量よりも保存温度のほうが、ビールに与える影響ははるかに大きいといわれています。

三度注ぎ(さんどつぎ)

ドイツやチェコ伝来の注ぎ方。グラスを置き、なるべく高い位置から注ぎます。泡の量がグラスの半分程度になったら2回目をグラスの縁から泡を持ち上げるように注ぎます。最後にビールを注ぎ足して整えます。三度注ぎをすると香りが長く保てるだけでなく、飲みはじめたときと飲み終わるときとで味が異なり、飲みながら味の変化を楽しめます。ビールの醍醐味を味わえる注ぎ方です。

【し】

池順鐸(じすんたく)

韓国陶芸界の至宝。数千年の燦然たる歴史を有する韓国の陶芸文化の中でも、高麗青磁は、李朝白磁と並んで輝きを放つ芸術です。その悠久の美を、長年の試行錯誤の末に現代によみがえらせ、日本の人間国宝にあたる韓国京幾道第四号無形文化財に指定されました。清楚な翡翠色に白土を象嵌した、たいへん美しい作品です。

自然発酵(しぜんはっこう)

ビールをつくる過程において自然界に存在する天然の酵母を使用し発酵させること。ビールの発酵の際に使用される酵母は人工的に培養された酵母であること多い。ビールに対して独特の香りや酸味を与えるのがこの自然発酵のビールの大きな特徴です。代表的な自然発酵のビールはベルギーのランビックが有名です。

ジャグ(じゃぐ)

ビールを飲むためだけでなく、ときに注ぐことも用途に入れた器。口縁部に注ぎ口が付けられている。把手の形状の多くは、持ちあげるとボディの重心が、反対側の注ぎ口へと自然に傾くようにつり把手型になっています。サイズは1140ml(40オンス)です。オーストラリアでよく使用されており、日本で提供されるピッチャーのような器です。

シュバルツ(しゅばるつ)

シュバルツはドイツ語で「黒」という意味。その名の通り、外観は美しい黒色のビールです。ドイツのバイエルン地方で古くから造られており、ドイツの詩人・ゲーテも愛したといわれています。濃厚な味わいが特徴的な黒ビールですが、シュバルツは苦みが弱く、ラガーのシャープでクリアな味わい。焙煎した麦芽の、チョコレートやコーヒーのような香ばしさを感じながら、すっきりと飲むことができます。

醸造酒(じょうぞうしゅ)

発酵作用を利用して製造されたお酒。原料そのものに糖分が含まれており、酵母を加えるだけでできる醸造酒を単発酵種といいます。ぶどうを原料としたワインがあてはあります。ビールは、デンプンを糖化する工程、その糖分を酵母で発酵させる工程を別々に進行させるので複発酵酒といいます。糖化と発酵が同時に進行する醸造酒もあります。

上面発酵(じょうめんはっこう)

上面発酵酵母を使用して、比較的高温域の15~20℃程度でおこなわれる発酵のことです。発酵中に酵母が浮上して、液面に酵母の層ができるのでこの名が付けられています。低温を維持するための冷却装置がなかった時代のビールは上面発酵のビールでした。常温発酵のエールビールはその代表。豊かなコクやフルーティな香味が特徴的です。

ジョサイア・ウェッジウッド(じょさいあ・うぇっじうっど)

1759年に数々の名品を世に送り出してきた誇り高き名窯「WEDGWOOD(ウェッジウッド)」を創設した人物。イギリス出身。陶磁器芸術に革新をもたらした、イギリスの旗手。中でもクィーンズ・ウェアの命名を許されたクリーム・ウェア、ウェッジウッドの名を不滅のものにしたジャスパー・ウェア、そしてファイン・ボーンチャイナの完成は、当時黎明期にあったイギリス陶磁器にも、新しい歴史を切り開く画期的な成功でした。「イギリス陶工の父」と称されています。

浸漬(しんせき)

ビール製造工程の1つ。大量の麦に発芽に必要な水を吸わせる工程。ビール造りで重要な働きをする酵母は、麦そのままの状態では働かないため、まず麦を発芽させます。水分を吸収した麦は、発芽槽で約4日間、発芽に適した温度と水分を含んだ空気に触れさせます。発芽を促すことでビール造りに必要な酵素が生成されます。

【す】

スタイル(すたいる)

ビールづくりでは、原料や醸造方法を組み合わせることで、様々な味わいのビールがつくられます。スッキリしたのどごしのビールやフルーティーな香りのするビールなど、それらの種類は、ビアスタイルと呼ばれ、細かく100種類以上に分類されています。どんなビールでも、これらのビアスタイルに分類されるので、好きなビアスタイルを知っておくと、おいしく飲める銘柄の幅を広げることができます。

スタウト(すたうと)

スタウトは18世紀後半に誕生し、当時イギリスで人気だったポーターから進化したスタイル。麦芽化せずに焙煎した大麦を使用している点が、ポーターとの大きな違いです。また、ポーターよりアルコール分を強化しており、文字通り、強く濃厚でコクのあるスタイル。麦芽化されていない大麦を焙煎してつくられていますが、それが独特の苦みと香りを生み出しています。真っ黒になるまで大麦を焙煎しているため、ビールの見た目も真っ黒です。

【せ】

製麦(せいばく)

麦から麦芽をつくる工程。浸漬、発芽、乾燥の工程を経て、ビールの主原料となる麦芽をつくります。麦に十分な水を吸収させて、発芽槽で約4日間、発芽に適した温度と水分を含んだ空気に触れさせます。発芽を促すことでビール造りに必要な酵素が生成されます。麦は成長させすぎずに、発芽が一定まで進むと乾燥させて発芽を止めます。麦芽のなかにビール造りに必要な要素が凝縮されたタイミングで、成長を止めることが製麦の秘訣です。

セーブル(せーぶる)

セーブルは、ヨーロッパ最高級の磁器を生み出す窯として、マイセンと並び称されるフランスの国立窯です。その名声を築くのに大きく貢献したのは、ルイ15世の寵愛を受けたポンパドゥール夫人。当時王室御用達だったヴァンセンヌ窯を自城に近いセーブルに移設し、フランスの文化と美を伝える名窯に育てました。その誇り高き精神は1759年に国窯となってからも、ロクロを回して作る当時のままの丁寧な製法の中に守られています。

【た】

タンカート(たんかーと)

ビールを飲むためのコップの種類。ビアマグともいう。把手がついていてフタがついているものもあります。素材は金属製や陶器製など様々ありますが、現在ではガラス製が一般的です。口縁部の形状もビアマグごとに特徴があります。ビールを飲むためだけの器ではなく、注ぐためのの器の場合は口縁部に注ぎ口があったり把手がつり把手になっています。これらの器は、ビールのための器としてだけではなく、伝統的な工芸品としての価値があります。

【ち】

チューリップグラス(ちゅーりっぷぐらす)

ビールグラスの種類。チューリップグラスは縁が内側にカーブしているために、グラスの中に香りがこもりやすくなります。匂い立つフレーバーなどを長く楽しむことができます。また注いだビールが程よくかき混ぜられ、深いフレーバーがたちやすい形状をしています。ウイスキーのテイスティンググラスがこの形状をしているのはそのためです。香りと味わいを、じっくり堪能することができます。

チョコレートモルト(ちょこれーともると)

チョコレートビールとは、スタウトなど黒いビールを醸造する際に、「チョコレートモルト」を用いたり、カカオの豆やエキスを加えたりしたビールのことをいいます。風味はまるでビターチョコレートのようで、深い苦みや甘みが感じられます。ビール醸造に必要不可欠な麦芽。その麦芽を焙煎する際、温度を高くしてつくるのが特徴。高温の160℃で焙煎して、麦芽の色はまさしくチョコレートに近い色になります。

【つ】

ツンフト(つんふと)

15世紀ころに形成させれた職人組合。もともとは修道院内の建設技師たちから出発した組織であり、キリスト教的な社会奉仕、相互扶助の精神に基づく組織でした。その活動は、価格や品質の決定、労働時間の制限、福祉増進など多岐。慈善院や教会、学校への寄付も積極的におこない、町の祭典では人々にビールをふるまいました。とりわけマイスターの親方は人格者であることも求められ、醸造職人や徒弟たちの技術訓練から人間形成にいたるまでの責任を負っていました。

【て】

テイスティング(ていすてぃんぐ)

ビールの味を鑑定すること。テイスティングの大きな流れは、「外観」、「香り」、「味」の3つ。最初に水を口に含んでリセットします。とくに複数のビールをテイスティングする場合、水の補給は欠かせません。「外観」ではグラスを目線と水平にしてビールの色、泡立ちを見ます。「香り」は草木、フローラル(花)、フルーツが代表的な香りです。「味」はひとくち、口の中に入れて、舌で転がします。そのまま3秒間数えて、アゴを突き上げ、ビールを直接喉に当てるようにします。