ビールの歴史
古代エジプト社会に
男女差別はなかった
.


遺産相続の権利は男女平等で家督権も女性が持っていたという古代エジプト社会。「家事をするために嫁にきたのではない」といって怒る女性の物語があるほどだった。
壁画のサイズでは、成人男性が1に対して女性または召使いは2分の1で、子どもは4分の1で描かれています。このことから古代エジプト社会は女性差別の社会だと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
たとえば遺産相続の権利は男女平等でした。兄と妹がいれば、それぞれ半分ずつという意味です。ちなみに今のイスラム社会の多くでは、男子が2、女子が1です。
それから女性が家督権──跡を継ぐ権利──を持ってます。家督権を持っている人が一番偉いわけですから、女性にはとても力がある。
ただ、基本的に女性は家の外では働かない。専業主婦です。
専業主婦以外の女性の職業としては、神様──それも女神につかえる神官や、女性を診る医者、それから女性に祈祷する祈祷師ぐらいでしょうか。
女性を診る医者は女性に限られていました。つまり女性が就く職業というのは女性を相手にする仕事だけで、それ以外の職業──とくに公的なものは全部男性が就いていたわけです。
一方、家事は全部女性がやる。といいますか、家の中のことは全部女性が仕切るということです。役割分担がきわめてハッキリしていたんですね。
ついでに申し上げますと、実は当時すでに、「私は家事をするために嫁に来たんじゃない」と怒っている女性の物語があります。だから、今も昔も同じような感覚があるんだなあと思います。
もっとも貴族などの場合には、家事は使用人が──つまり男がやっていたのではないかといわれていますけども。
by 吉村作治 早稲田大学名誉教授 エジプト考古学者