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ビールの歴史

壁画に描かれた小さい人は、
子どもというわけではない

嘘はないという古代エジプトの壁画だが、イコール写実的というわけではない。大きい人と小さい人が描かれている壁画は、大人と子どもではなく、じつは…。

古代エジプトの壁画には嘘はない──とはいっても、なにも写実的な表現をしているわけではありません。

たとえば死者への供物のごちそうなどは、多少オーバーに描かれています。普段から、壁画に描かれていたようなぜいたくなものを食べていたわけではない。やっぱりお供えものと普段のおかずとは違いますから。

同様に、壁画に大きい人と小さい人が描かれているものがよくあります。これも、本当に小さい──背が低い子どもと大人を描いているわけではありません。実は小さく描かれているのは子どもではなく召し使いです。位が低いから小さく描かれているわけです。

それから女性の大きさも男性の半分に描かれます。ただし同じ大きさに描かれているものもあります。たぶん奥さんのほうが強い家なのだと思いますが。

基本的には、成人男性が1だとすると、女性または召使いは2分の1で、子どもは4分の1というサイズで描かれています。

by 吉村作治 早稲田大学名誉教授 エジプト考古学者