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ビールの歴史

麦の栽培によって、人類の
生活スタイルが画期的に変化した

麦の栽培は、人類の生活を大きく変えた。麦は人類と共に歩んできた穀物といえる。森直樹・京都大学大学院准教授の記録から、エンマーコムギが果たした役割を歴史の中で見てみることにしよう。

麦

いまから約1万年前、人類は農耕を始める。場所はチグリス、ユーフラテス川流域のいわゆる「肥沃な三日月地帯」。栽培されたのは麦類が中心であった。この麦栽培は、後のヒツジなど家畜飼育とともに、人々の生活スタイルを画期的に変えた。チグリス、ユーフラテス川流域に文明が誕生したのも、農耕が深く関わりあっていると考えられている。

栽培された小麦は、野生の小麦を私たちの遠い祖先が徐々に飼いならすことで誕生した。なかでも最初期に栽培化されたのがエンマーコムギ。以降数千年にわたり人々の食生活を支えた立役者だ。エンマーコムギは栽培地域を広げ、カスピ海の南にまで達する。ここで別の野生小麦と掛け合わされて生まれたのが、いま世界でもっとも多く栽培されている普通系小麦である。
エンマーコムギは人々の生活を変えただけでなく、小麦の進化にも重要な遺伝子を提供したのだった。

(プロフィール)
森直樹
京都大学/神戸大学 農学研究科 准教授

1961年大阪生まれ、神戸大学農学部、京都大学大学院農学研究科卒。農学博士。平成6年7月から平成7年11月まで文部省在外研究員としてミネソタ州立大学 College of Agriculture, Dept. Agronomy and Pland Geneticsにて研究。

森直樹