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ビールの歴史

キリンビールが
古代エンマーコムギを再現してみた
~現代に蘇る!いにしえのエンマーコムギ~

古代エジプトのビール再現で使用したデュラム小麦。これは当時使われていたエンマーコムギにとても良く似た遺伝子配列を持つ現代の小麦である。しかし、古代エジプトのビールを再現するなら、小麦も当時のものを使いたい。こうしてキリンビールの、いにしえのエンマーコムギ再生への挑戦がはじまった。

エンマーコムギは、人類が栽培した小麦のなかでもっとも原始的な種のひとつだ。いまから約1万年前、チグリスユーフラテス地域で始まったといわれる農耕。作物を育てることで定住が実現し、獲物を追って転々と移動していた狩猟生活に終止符が打たれた。古代エジプトで栽培されていたエンマーコムギは、食料として、薬として、そしてビールの原料として、なくてはならない存在であった。

ところがエンマーコムギは、現在ほとんど栽培されていない。キリンビールは、入手できたたった100粒ほどのエンマーコムギを栽培、1トンを超える量を収穫することに成功した。このエンマーコムギを原料とすることで、より当時の味に近い「古代エジプトビール」を再現できたのだ。エンマーコムギ栽培に要した時間は約2年半。古代エジプトビール完成まで3年以上にわたる大プロジェクトである。

「現代に蘇る! いにしえのエンマーコムギ」は、古代エジプトのビールと麦の再現から始まり、麦と人類の歴史まで考察するにいたる、壮大なプロジェクトの研究発表である。