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ビールの歴史

クラフトビールブームの今、
改めてビールの歴史を振り返る 後編
(封建社会の衰退から近世まで)

前編に引き続き、世界の歴史の動きとともに、
ダイナミックな展開を遂げる、

封建社会の衰退から近世までのビールの主要事項を学びます。

現代のビールに通ずるあらゆることがこの時代に起きました。

改めて、ビールの歴史を学ぶことで、
よりビールが愛着湧くものになりますように。

【紀元後】

世界の歴史ビールの歴史
900年

封建社会の形成(欧州)

⑫中世ヨーロッパでは大量にビールが作られた

教皇領(中部イタリア)とともにローマ教皇の権威拡大

イスラム諸王朝が乱立

ドイツ王国建国

北宋(中国)

フランス王国建国

1000年

⑬ビールの醸造権が領主から市民へ

1100年

教皇の権威が絶頂期を迎える→教皇インノケンティウス3世「教皇は太陽、皇帝は月」

鎌倉時代

⑭北ドイツのハンザ同盟がビール醸造業で繁栄

都市国家がハンザ同盟などで結びつき欧州経済圏を掌握

南宋(中国)

1300年

元(中国)→フビライ=ハン

オスマン帝国建国

英仏百年戦争勃発

室町時代

教皇権衰退へ

明(中国)

1400年

大航海時代

⑮ビール醸造業など職人たちの組合のツンフトが形成

戦国時代

1500年

宗教改革

⑯ビール純粋令が公布される→原料を「大麦」「ホップ」「水」に限る。
1551年改訂で「酵母」、「下面発酵」が明文化。

絶対王政の時代へ

オスマン帝国拡大

イギリスでテューダー朝がおこる

フランスでブルボン朝がおこる

安土桃山時代

1600年

清(中国)

江戸時代

1700年

フランス革命勃発

⑰産業革命を機に巨大なビール市場が誕生

イギリスで産業革命がおこる

1800年

清(中国)

⑱醸造所に蒸気機関が導入

江戸時代

フランスで第一帝政がはじまる→ナポレオン1世

⑲ピルスナー・ビールの誕生

⑳ガラス税の撤廃によるビヤグラスの登場

㉑低温殺菌法を確立→フランス人科学者ルイ・パスツール

明治時代

㉒アンモニア式冷蔵庫の開発→ドイツ人技術者カール・フォン・リンデ

㉓酵母の純粋培養法を確立→カールスバーグ社微生物部門エミール・クリスチャン・ハンセン

  • ⑫当時のビールはカロリー補給の手段であり食事の一部であった。北フランスの修道院が残した資料によれば、9世紀頃の一人あたりのビール消費量は年間500リットル。15世紀にはヨーク地方の大司教新就任時には、ビールが大樽で300樽用意されたという記録も残っている。講義No.20

    中世ヨーロッパのビール
  • ⑬「都市の空気は自由にする」という言葉にあるように、商業の復活と都市の誕生は中世ヨーロッパ後半の大きな転換期。以降、都市を中心にビール醸造業が発展し、大量生産の時代の到来となる。講義No.22

  • ⑭リューベック、ハンブルク、ブレーメンといったドイツ北部の都市が中心となって形成されたハンザ同盟。貿易の中継地として栄えたハンザ同盟の諸都市において、ビールは主要な取引商品で、14世紀後半の最盛期には、加盟都市が90を超え、勢力を拡大した。講義No.24

    ハンザ同盟
  • ⑮商業の復活とともに都市が誕生し、新興商工業者たちは共存共栄をめざし、同業組合の「ギルド」を形成した。しかし家内醸造の延長から始まったビール醸造業では、醸造の全てを任されていたのは「ブラウマイスター(醸造職人)」。15世紀半ばになるとギルドに対する職人組合の「ツンフト」が、ブラウマイスターたちの間でも形成されていった。講義No.25

    ツンフトが形成
  • ⑯領主や教会のグルート権が貴重な財源となっていたため、8世紀頃から欧州に伝来していたホップがビールに使われることはなかった。14世紀にはドイツ北部のアインベック、15世紀になるとミュンヘンなどの南部の都市でホップ入りビールが醸造された。そしてミュンヘンでは1516年、原料を「大麦」「ホップ」「水」に限るとしたビール純粋令が公布されることになる。講義No.26

    ビール純粋令
  • ⑰都市の労働者を中心としたビールの急激な需要拡大は、それまで小規模な経済活動にとどまっていたビール醸造業を否応なく自由競争へと駆り立て、瞬く間に一大産業へと押し上げた。工業化による大量生産と商業圏の拡大、技術革新による品質の向上と商品の多様化。それは今日にいたるビール文化のまぎれもない出発点であった。講義No.31

    巨大なビール市場
    人口1人当たりのビールの消費量(単位ガロン)
  • ⑱ロンドンを代表するウィットブレッド社は、蒸気機関をいち早く醸造所に導入し、水の汲み上げや麦芽の粉砕をおこなった。バートン地方のバス醸造所では、敷地内に鉄道の引込み線が延べ20キロにわたって張り巡らされ、11台の機関車が走り回っていた。講義No.32

    蒸留機関
    1736年にJ・ワットが開発した新式蒸留機関
  • ⑲1842年、現在は中央ヨーロッパのチェコ共和国に位置するボヘミア地方のピルゼン市で、近代ビールの象徴である「ピルスナー・ビール」が産声を上げた。講義No.35

    ピルスナー・ビール
    淡く透き通ったピルスナー・ビール
  • ⑳これまでの陶製ビヤマグに代わって透明のビヤグラスが出回り、人々はビールの「色」に触れることとなった。講義No.36

    ビヤグラス
  • ㉑パスツールは、1876年に「酵母という微生物」が活動することで発酵が起こることを発見。また醸造家たちがもっとも恐れるビールの酸化も、バクテリアや雑菌の働きが原因であるとし、「低温殺菌法(パスチャライゼーション)」と呼ばれる繁殖防止システムを考案。講義No.37

    パスツールの実験
    パスツールの実験の様子(再現)
  • ㉒1860年代の始め、ウィーンの醸造家アントン・ドレアーとミュンヘンの醸造家ガブリエル・ゼードルマイル2世が、最初の冷蔵設備を醸造所に設置。そして1873年には、ドイツの技術者カール・フォン・リンデが、24時間に6トンもの製氷をおこなう冷凍機を開発し、のちにアンモニア式に改良した。講義No.38

    冷凍機
    リンデが開発した冷凍機(初期)
  • ㉓パスツールの理論を応用し、ビールづくりに適した酵母のみを抽出・培養する「酵母の純粋培養法」を確立。よりよいビールをつくる酵母が、どこででも手に入るようになった。講義No.39

    酵母の純粋培養法