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ビールの歴史

キリンビールが川本幸民の
「化学新書」をもとに
150年前のビールを再現してみた

キリンビールでは、当時の史料に基づいて調査・研究を行い、現代の技術で復元に着手。豊かな香りと甘味があり、弱炭酸で少し白濁した復元ビールが完成した。

キリンビール 神戸工場 醸造担当
三木俊和(みき・としかず)(当時)
島田義啓(しまだ・よしたか)(当時)

復元にあたっていちばん大事なことは、幸民がつくったビールにできるだけ近づけることだと考え、キリンビール神戸工場の三木俊和と島田義啓は『化学新書』を何度も読み返す。そして書かれてある醸造法を正確に理解した。驚いたことに、約150年も前に書かれた『化学新書』には、すでに現在と同じ専門用語が使われ、しかも細かい理屈や原則までが分かっていたのだ。これを基に実際にビールを醸造した幸民は偉大な人物だと感じた、と島田はいう。

長年ビール醸造に携わってきた者にとっても、日本酒酵母の使用をはじめ、原料の調合、発酵の具合など、今回はすべてが未知の体験。発酵の段階では昼夜問わず見守り続けたほどの気の遣いようだったという。とはいえ、世界にひとつしかないビールをつくるのは初めてのことと、楽しみながら復元ビールづくりに取り組んだ。

完成した復元ビールは…。

・豊かな香り
・甘味が感じられる
・淡い白色で濁りがあり、炭酸が弱い
【原料】大麦麦芽、ホップ、日本酒酵母
【アルコール度数】約4.0%

試飲を終えて:
「予想通り、香り高くフルーティーな味わいですね」(三木)

復元を終えて:
「ミニプラントで復元に要した期間は約4週間。幸民さんも完成までに紆余曲折があったのだろうと思うと感慨深かったです」(島田)