ビールの歴史
中世ヨーロッパの王侯貴族の食卓は、
鮮やかな色彩や飾り付けなどの
視覚的要素を重視していた

鮮やかな色彩や飾り付けなどの視覚的要素を重視していた宴席の食卓。黄金を連想させる濃い黄色が特に好まれたという。それとともに独特な味付けも特徴で、スパイスも一種だけでなく、さまざまな種類を混ぜ合わせたものがよく使われた。
中世の食事の特徴は、鮮やかな色彩や飾り付けなどの視覚的要素を重視したこと、そして独特な味付けにある。
特にサフランを用いて、黄金を連想させる濃い黄色に料理を着色することが好まれた。しばしば好んで用いられたシナモン風味のカムリーヌ・ソースも、金色に似た黄褐色。また、パセリやオゼイユなどをすりつぶして作られた緑色のソースも人気があった。
王侯貴族の宴席などで重要だったのが飾り付け。豚の丸焼きを馬に、ローストした鶏を騎士に見立てるなど、寓話的な飾り付けもあったという。「王侯・貴族の食卓」で紹介している「3種3色の魚の料理」では、頭と胴体と尻尾の部位で、それぞれ「油で揚げる」「焼く」「ゆでる」と調理法が違うのだが、3色という色のコントラストも珍重された。
味覚も独特のものがあった。サフラン、シナモン、しょうが、胡椒、ナツメグ、カルダモン、丁子などのスパイス、ハーブが多く使われ、しかもそれらは混ぜ合わされて使われることが多かった。また酸っぱいぶどう果汁から作られたヴェルジュと呼ばれる汁やオゼイユ、レモンなどの果汁も好まれた。どの料理も、香辛料の風味や酸味などがかなり強かったようである。
宴席での食事は、いわゆるコース料理で、第1皿、第2皿、アントルメ、第3皿、デザートと続く。この中ではアントルメが中心で、一番豪華で凝った料理が出されることが多かった。様々な食材とスパイスで色鮮やかに彩られた食卓が、目に浮かぶ。