ビールの歴史
中世ヨーロッパの
グルートビールを再現してみた

古文書や文献を手がかりに、当時の醸造設備を再現し、当時と同じ製法でグルートビールを再現することに挑戦。完成までの全7工程を手順を追って説明しよう。
1)糖化
- グルートビールの醸造は、現在のビールと同じく、麦芽を糖化させる工程から始まる。木製の糖化槽に、粉砕したエン麦・小麦・大麦の麦芽を入れる。
- 煮沸釜で沸かした湯を、ひしゃくで加え、混ぜ合わせながら、約65℃の温度で糖化を進めていく。
- 2時間ほどでデンプンが糖に分解される。
2)麦汁ろ過
- 糖化の終わった麦汁にヤナギの網籠を入れ、もろみをこす。
- こされたもろみをひしゃくで麦汁煮沸釜に移していく。
3)麦汁煮沸
- ろ過され煮沸釜に移された麦汁を加熱。
- 麦汁が煮沸したところで、あらかじめ細かく砕いておいたハーブを投入し、さらに1時間ほど煮沸を続ける。
- 煮沸の最終段階で、香りをつけるためヤチヤナギを投入。麦汁にハーブのエキスがまんべんなく行き渡り、ヤチヤナギの独特の香りが漂ってくる。
4)麦汁冷却
- 煮沸された麦汁のみをひしゃくで汲み出し、クールシップに麦汁を移す。
- クールシップと呼ばれる平坦な槽で、麦汁は一晩かけてゆっくり冷却。
5)冷麦汁ろ過
- 一晩かけて冷却した麦汁を布でこし、トリューブ(凝固したたんぱく質)を取り除く。
- ろ過した麦汁は、木製の発酵桶に入れる。
- 発酵桶に入れた後、空気を混ぜ合わせるため、麦汁をひしゃくですくっては上から落とす。
6)発酵と貯蔵
- 酵母を添加し、数時間経つと徐々に麦汁の表面が泡立ってくる。 浮き出してきた酵母を取り除きながら発酵を続ける。2,3日で発酵は完了。
- 発酵を終えたグルートビールを、木の樽に移し替える。
- 木の樽で静かに貯蔵する。
7)完成
「復元されたグルートビール、私は大変気に入りました。ビールを口に含むと、グルートの爽やかな風味が口の中に広がります。非常にまろやかでコクがあり、とてもおいしいと思います。今回の共同研究は、人間の好奇心を刺激する非常に価値のあるものだったと思います」
(元ベルリン工科大学醸造研究所 バッカーバウアー教授談)
ビール醸造学の世界的な権威であるバッカーバウアー教授には、中世グルートビールの復元にあたり、時代背景やハーブの種類、配合法等についてご指導いただきました。


















