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ビールと器

「陶器」と「磁器」、どこが違う?

一般的には、陶器と磁器、さらには土器や?器も含めた、焼き物全般を「陶磁器」と呼んでいます。実際、陶器も磁器も、「粘土」、「長石」、「珪石」の3成分を主原料としている点では同じ。しかし、使用する粘土の種類、成分の比率、焼成温度、そしてその歴史において、陶器と磁器は大きく異なっているのです。

 俗に陶器を「土物(つちもの)」と呼ぶように、陶器の主原料はあくまで粘土です。天然の粘土は至る所にあり、成形も容易。そのため太古の昔から、人々は粘土を成形して焼き上げ、陶器のもっとも素朴な形態である土器を作ってきました。土の質感を濃厚に伝える肉厚で温かな地肌は、陶器の大きな魅力です。しかし反面、衝撃を受けると脆く、吸水性があるため水にも弱い。また粘土に含まれる鉄分が焼成時に変色するため、陶器の地肌は常に土色を帯びます。そのため釉薬の研究が盛んにおこなわれてきました。オランダのデルフト焼きに代表される錫釉(すずゆう)陶器は、焼成することで白に変色する錫釉を使い、磁器と見紛うばかりの、なめらかな乳白色の陶器を生み出すことに成功しています。

 陶器が「土物」なら、磁器は「石物(いしもの)」です。陶器においては、粘土の質を高める混合剤として使用される長石や珪石が、磁器においては、主原料の約7割を占めています。これを1200~1400度という超高温(陶器は800~1000度)で焼成すると、長石と珪石が溶融(ようゆう)してガラス化します。すなわち、陶器では考えられなかった、肉薄にして強固、なおかつ透光性を持った、光り輝く磁器が完成するのです。もちろん吸水性はなく、叩くと冷たい金属音が響きます。

陶器の「デルフト」
磁器の「マイセン」

 磁器が陶器と異なるもうひとつの特徴は、ヨーロッパで「白い黄金」と称された純白の地肌です。それを生み出しているのが、陶石やカオリンといった鉄分の少ない白色粘土で、ともに「磁土」と呼ばれています。ただし天然の磁土は産地が限定されているうえ、成形と焼成も非常に難しいのです。そのため、純白の磁器「白磁」が完成をみるのは、中国で11世紀(景徳鎮窯)、日本では17世紀(有田焼き)、ヨーロッパにいたっては18世紀(マイセン窯)と、陶器に比べて驚くほど短い歴史しか持っていません。

 不可能を可能にした磁器の誕生。それは、古代から続く陶器の歴史において、画期的な事件であったと言えるでしょう。