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[食領域]

<参考資料>「検出系一体型アプタマーアレイ技術」の開発による
パツリン検出のためのDNAアプタマー選抜への応用

~最先端技術を活用した食の安全安心の取り組み~

  • 研究・技術

2014年4月10日

キリン株式会社

キリン株式会社(社長 磯崎功典)の基盤技術研究所(所長 近藤恵二)は、「マイクロアレイ技術」※1と「アプタマー設計技術」※2の組み合わせにより容易にDNAアプタマー※3を選抜でき、簡易分析への応用が可能な「検出系一体型アプタマーアレイ技術」を開発しました。この技術を応用してヒトへ健康被害を与える危険性のあるカビ毒のひとつである「パツリン」※4の検出に用いられるDNAアプタマーの取得に世界で初めて成功しました。

  • ※1 基盤上にDNAの部分配列を高密度に配置し固定化したもので、一般的な用途として、数千から数万種類の遺伝子の発現量を一度に解析する技術。
  • ※2 情報処理技術を利用した立体構造予測により、あらかじめ決まった型を持つ候補配列を絞り込む技術。
  • ※3 特定の分子に対する結合能を持つDNA(デオキシリボ核酸)。
  • ※4 カビが産生する毒素の一種であり、りんご果汁を汚染することがあり国際的に規制の対象とされている。

「アプタマーアレイ技術」は、数万種類という多くのDNA断片を「アレイ化技術」により基板上に高密度に配置したチップを、検出したい分子に結合する核酸(アプタマー)を選抜する方法に応用した技術です。
当社では昨年、特定のカビによって産生され、ヒトへの健康被害を与える危険性のあるカビ毒のひとつである「パツリン」を、核酸を素材としたRNAアプタマーを用いて検出することに世界で初めて成功しました。※5しかし、そのアプタマーの選抜方法は、研究者個人の技術に依存するところが大きく、労力・時間がかかるものでした。
今回の「アプタマーアレイ技術」では、「マイクロアレイ化技術」と「アプタマー設計技術」を用い、あらかじめ決まった型を持つ候補配列を設計し、核酸を合成した上でチップ上に固定しておくことで、ターゲット分子を作用させるだけで結果をすぐに得られます。そのため、技術的、労力・時間的な制約が解消されます。また、一般的には、アプタマーを使った分析をするには、アプタマー配列にあわせた簡易検出方法を改めて構築する必要がありますが、「アプタマーアレイ技術」では、色により視覚的に判別が可能な簡易検出系が同じ原理で創出できます。以上のことから今回の「アプタマーアレイ技術」は、アプタマーを用いた簡易分析法を使用する事業への参入障壁を下げる技術と言えます。
さらに、この技術を応用することにより、飲料や食品中に含まれる特定の物質の検出系の創出や、有用物質生産などが可能となり、今後さまざまな分野への応用が期待されます。

  • ※5 2013年3月25日発表 「カビ毒「パツリン」の検出に有効なアプタマー取得に世界で初めて成功」

当社は食に携わる企業として、お客様に安全で安心していただける商品やサービスの提供に取り組んでおり、その一環として特定の物質の検出に関する研究を進めてきました。今後もこの研究成果を活用した簡易検出技術の開発に積極的に取り組んでいきます。

キリングループは、あたらしい飲料文化をお客様と共に創り、人と社会に、もっと元気と潤いをひろげていきます。

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