水に「硬さ」があるということは知っていても、それがお料理にどんな影響を及ぼしているのかというのは意外に知らないもの。そこで今回は、水の硬さと、それに伴う調理法や味への影響について調べてみました。和食をおいしくする秘密は、実は「軟水」にあった!?
水は採水地、すなわち水源によって硬さが変わります。ミネラルの主成分であるカルシウムとマグネシウムの量を測定することで水の硬さを科学的に算出でき、この数値を「硬度」といいます。硬度は世界保健機構によってガイドラインが定められており、1リットル中120mg以下が軟水、120mg以上が硬水とされています。日本の水の場合はほとんどが120mg以下の軟水です。
水の硬さが場所によって変わるのは、水源の種類や土壌によるものと言われています。一般的には地下水のほうが河川水よりも硬度が高くなり、さらに欧米の水は石灰質(炭酸カルシウム)の土地を長時間通ることで硬度が高くなる傾向にあります。山がちで高低差の大きい日本では地中での滞留時間や河川延長が短いため、硬度が低くなることが多いようです(※)。 また、硬さだけでなくpH(下記参照)も採水地によって違います。これらは同じ県内でも異なることがあり、多くの水道局ではその数値が公表されています。ミネラルウォーターにも表記されていることがほとんどなので、使い方や好みに応じて選んでみてはいかがでしょうか。 ※「食を育む水」引田正博編・ドメス出版(2007)より
「pH」とは、水の酸性度、アルカリ性度を表す目安として用いられている指数のこと。0~14の数値で表され、7.0が中性、0に近くなるほど酸性が強く、14に近くなるほどアルカリ性が強いとされています。
これら酸性、アルカリ性は調理にも応用されている性質のひとつ。例えばこんにゃくや豆腐を作る際には、にがりやアクなどの「アルカリ性」の物質を凝固剤として用いて固めます。肉や魚の調理法として編み出された「マリネ」は、マリネ液(酢、アルコール、レモン汁など)の酸性が肉質を軟化させる働きを応用したもの(※)です。
※「今さら聞けない肉の常識」平野正男 著・食肉通信社(2000)より