強い信頼関係が企業を前に押し進める。だからまず、「信じること」から始めたい。【#わたしとキリン vol.9 松田憲】

キリン公式noteより(公開日2022年9月26日)

キリングループでは、「よろこびがつなぐ世界へ」というコーポレートスローガンを掲げています。そのために社員が大切にしているのが、「熱意、誠意、多様性」という3つの価値観。

これらをベースに、各自が大切にしている第4の価値観をミックスすることで、社内では新たな取り組みがたくさん生まれてきました。

そんな社員たちの取り組みから、多様な働き方を考えていく企画が「#わたしとキリン新しいウインドウで開きます ~第4の価値観~」です。

第9回目に登場してもらうのは、キリンホールディングス株式会社のコーポレートコミュニケーション部IR室で主務をつとめる松田憲。IRとは“インベスターリレーションズ”の略で、企業の戦略を株主・投資家の方に伝える重要なポジションです。

KIRINという企業を代表して、株主・投資家と向き合っている松田。彼が大切にする第4の価値観には、さまざまな経験をしてきたからこそ確信した、人間関係の基礎が詰まっていました。

【プロフィール】松田 憲

2006年キリンビール入社。IT子会社であるキリンビジネスシステムで生産・物流関連のシステム開発・運用を担当したあと、2010年より飲食店・酒販店向けの業務用営業を担当。2014年より総合商社に出向。香港の食品系ディストリビューターで企画・営業支援を担当した後、英国の食品メーカーで経営企画、広報CSRを担当。2017年にキリンホールディングスに復帰し、IR室に配属。

株主・投資家と会社をつなぐIR室の仕事

―松田さんが所属されている「コーポレートコミュニケーション部 IR室」とは、どのような部署なのでしょうか?

松田:コーポレートコミュニケーション部は、一般的にいう広報部のようなもので、そのなかでも株主・投資家を専門にするチームがIR室です。

ミッションは、企業の決算情報や戦略を株主・投資家の皆さまに正しく、タイムリーに伝えること。同時に、株主・投資家の方々が考えていることを社内にフィードバックして、ステークホルダーの声を経営に活かしていく。その間に立っている組織ですね。

―株主・投資家の方と会社をつなぐ役割なんですね。その部署で松田さんは、どんな業務を担当されているのですか?

松田:私はIR室に来て4年半になります。一番長く担当してきたのが決算開示に関する業務です。企業では、四半期に一回のペースで決算発表を行い、業績を資料にまとめてプレゼンテーションします。

その内容についてトップマネジメントや事業会社と協議し、「今回はどういうコミュニケーションをしていくのか」という構成を組み立てて、資料を作り、発信していく業務をしてきました。

決算開示の担当は既に後任に引き継ぎましたが、今年は中期経営計画の発表年でしたので、その開示資料の作成を担当しました。その他、事業会社の窓口や、コーポレート・ガバナンスなども担当しています。

松田さんが担当した中期経営計画の資料

―松田さんは、IR室のどんなところに面白さを感じていますか?

松田:我々はグループ全体を俯瞰して、事業の現状を把握します。その情報を単に数字として伝えるのではなく、戦略ストーリーと合わせて伝えていきます。そして、株主や投資家からのご意見という、経営判断に重要な影響を与える情報を会社に提供する役割も担っています。まさに生きた経営を体感できるのが、この仕事の魅力だと思いますね。

経営に携わる部署は他にもありますが、IR室が面白いのはコミュニケーションの部門というところです。つまり、決算情報を読んでわかったつもりになっていてはダメで、実際に会社の状況を自分たちで咀嚼して、内容や不明点を確認して、それが価値向上につながるように対外的なコミュニケーションをしていきます。

そういう意味では、私が以前やっていた営業職にも似た部分があると思います。営業の仕事は、商品やサービスをお勧めしてお客様に納得していただければ購入につながります。

IR室は商品を扱っているわけではないですが、会社の経営戦略を伝え、それが魅力的と感じてもらえれば投資していただくことにつながります。会社全体の営業のようなものですね。経営の現場として、社内と社外の両方のダイナミズムを感じられるのが、IR室の仕事なんですよね。

配属になるまでは、IR室がどんな部署なのか知らなかったんですけど、今となっては、あらゆる人に勧めたいほど魅力的な仕事だと思っています。

―取り扱う商品の知識が必要な営業職に対して、IR室では会社組織を総合的に把握できる知識が求められるんですね。

松田:そのために時間をかけて、各社のことを理解していく必要があります。ファイナンスの知識はもちろんですが、それ以上に各事業会社の状況を把握することが重要なので。

IR室に配属されると、事業会社の担当を受け持つことになります。その事業の企画部門や営業部門の人たちと打ち合わせをして、必要な資料等をまとめながら自分も学んでいくという感じですね。

具体的には、各事業の概況を決算に関するプレゼンテーションスライドなどにわかりやすくまとめるなど、必要なツールを揃えながら市場との対話を行っていきます。

担当は一定期間で交代し、いろんな事業会社の知識を得ることで、IRパーソンとして、どの企業のことを聞かれても答えられるようになっていくわけです。当然、良いことばかりではなく、リスクになり得ることも誠実に伝えることで、信頼を獲得することが不可欠です。

海外で痛感した主体的なチャレンジの重要性

―松田さんがキリンに入社しようと思ったのは、どんなきっかけだったんですか?

松田:アメリカへインターン留学していたときに、現地のいろんなお店で日本の『一番搾り』が売られているのを見て、ちょっと誇らしい気持ちになったんです。それで商品の製造・販売に興味を持ち、メーカーに入りたいと考えるようになりました。グローバルに商品を提供できるような仕事に就きたいと思ったんです。

―入社後はどんな仕事をされていたんですか?

松田:てっきり営業をするものだと思って入ったんですけど、最初はキリンビジネスシステムという情報システムを扱う会社への配属でした。

生産系、物流系のシステムを開発したり、運用する部署で、プロジェクトマネジメントに近い仕事をしていました。ビールを売る気満々で入社しましたが、まったく違う仕事をしていたんですよね。だけど、仕事は楽しくて、とても充実した時間でした。

ただ、やはり営業をやりたい気持ちもあり、しばらくして、キリンビールの埼玉営業部に配属になりました。そこで酒販店さん、飲食店さん向けの営業担当として、3年半ほど仕事をしていました。

―営業職時代のお仕事はどうでしたか?

松田:やってみたかった仕事だったので、とにかく楽しかったですね。我々が扱っている1本数百円の商品の積み重ねが、会社の大きな利益につながっているという実感も得られました。

―松田さんは、海外で仕事をされていた時期もあるそうですね。

松田:はい。私は就活をしていた頃から、海外への橋渡しに関わりたいという気持ちがあり、既にグローバルに展開している企業ではなく、今からグローバルに打って出る企業に入りたいと思っていました。

当時のキリンは「キリン・グループ・ビジョン2015(KV2015)」という長期戦略を掲げていて、その内容がまさに“海外に打って出る”というものだったんです。

そういう気持ちがずっとあったので、20代後半の頃、今後のキャリアを考えるタイミングで、グローバルな方向にキャリアを進めるよう舵を切りたいと思いました。

ちょうどその頃に、総合商社との人材交流が始まったんです。その第1弾として、私が香港とイギリスの会社に出向させてもらうことになりました。

―香港では、どんな仕事をされていたんですか?

松田:海外メーカーの商品を香港で販売するための業務を請け負う、ディストリビューターの仕事ですね。キリンビールで培った経験をもとに、営業支援活動やマーケティング企画などに携わらせてもらいました。

―学生の頃に思い描いていた、グローバルに商品を提供する仕事を体験できる職場だったんですね。

松田:そうですね。企業がどんなふうに海外戦略を進めているのかを学ぶ機会になりました。

あとは、自分と同年代の駐在員の方が、現地の責任者としてバリバリ仕事をこなす姿を間近で見て、自分のキャリアも考えさせられました。

―実際に香港で働いてみて、仕事に対する意識の変化はありましたか?

松田:まだまだ伝え切れていない日本の価値や、キリングループの商品・サービスの価値があって、もっと拡大していける余地があると思いましたね。自分がこんなことをしていきたいという仕事のイメージがよりクリアになりました。

香港で1年間働いたあとはイギリスの会社へ行ったんですけど、そこで大きな壁にぶつかったんです。今までの経験がまったく役に立たず、求められるクオリティは高いうえに、自分の実力も足りていなくて、会社に何も貢献できていないと感じたんですよね。

今まではずっと仕事が楽しかったのに、初めて挫折を味わい、自信も失いました。何を提案してもうまくいかず、自分の考えが現地のスタッフに伝わらないことも続いていたので、“とにかくミスをしないようにする”という消極的な姿勢になっていました。

―そうした状況から抜け出すことはできたんですか?

松田:現地の駐在員の方々が背中を押してくれたことが大きかったです。そして、イギリスで働くという願ってもないチャンスだったので、このままの状態で残りの時間を過ごすのは悔しいという気持ちも強かったですね。

なので、守りに入っていた状態から一気に攻めの姿勢へ変えることにしました。上司に指摘されても、現地の従業員に呆れられてもいいから、とにかく主体的にチャレンジしていこうと思って。“誰よりも考えて、前向きに提案をする”という当たり前のことなんですけど、そういう姿勢で仕事に臨むようになったら、いろんなことが好転していったんですよね。

そのときに思ったんです。自分に足りていなかったのは、覚悟や思いきり、そして本当に会社のことを考える気持ちだったんだなって。

松田さんがイギリスの同僚からもらったという送別品のマグカップ。「落ち着いて、Ken Matsudaに任せれば大丈夫」というメッセージが書かれている。

松田:日本でも香港でもイギリスでも、働き方に違いはありますけど、仕事で評価されるのは一生懸命に会社やお客様のことを考えている人なんですよ。何かの役に立ちたいという想いがあって、それが人や会社を動かす原動力になっている。

それはきっと、日本でも海外でも、どんな職種であっても一緒なんだろうなと思うようになりました。修羅場をくぐり抜けた経験として、私にとって大きな財産となりました。

個々の視点と徹底した議論によって築かれる組織の多様性

―海外での経験は、IR室の仕事にどのような影響を与えていると思いますか?

松田:IR室には、財務経理やマーケティング、法務の出身者、営業一筋だった人など、様々な人がいます。そうやって部署を超えたメンバーで構成されているんです。

なぜかと言うと、その数人で企業の声を代表して外に伝えないといけないから。そのためには、いろんな視点や経験を持った人たちの集合体であることが必要なんです。

小さなチームでも多様性の塊でなければいけない。海外で広い視点を得られた経験は、こういった組織の多様性を大事にすることにもつながっているかなと思います。

―意見が偏らないために、たくさんの視点を持っているのがIR室という部署なんですね。

松田:多様な視点を持つ組織であるために、IR室ではよく議論をします。相手が上司であったとしても、違うと思ったことははっきり伝えるんです。そうしないと、意見が偏ったり、世間の感覚からずれてしまったりするので。

だから、「きっと投資家は、こう思ってるよね」と簡単に決めつけずに、「こういう考えの人たちもいるんじゃないですか?」という議論を活発に行なっています。

そういう意見って、個々のバックグラウンドや価値観から出てくるものじゃないですか。私の場合だと、海外に出てキリンを客観的に見たり、システムの部署で会社を内側から見たり、営業でお客さまと接する仕事もしていたので、あらゆる角度から想像力を働かせて、世の中のことを言葉にしていくことを心がけています。みんなが自分の意見に誇りを持ちつつ、客観性をもって議論をしているのがIR室という組織なんですよね。

入社した2006年からずっと使っている手帳。

―それだけいろんなバックボーンを持った人たちが集まって、さまざまな意見が出てくる議論では、どのようにして合意形成が行われるのでしょうか?

松田:それはやはりすごく難しいです(笑)。なかなか結論に至らないこともあります。ただ、どこかに落としどころは必要なので、「こういうリスクもあるけれど、この方法で行こう」という話になっていきますね。

我々が強いところは、議論を経て方向性が決まれば全員がそっちに向かえることです。もし想定外のことが起きたとしても、そこは全員で対処していくので、決して後腐れはありません。それなりの経験を積んできた人たちが集まっているから、一度決めたことに対して後悔することはありません。

―いろんな意見を出し合って徹底的に議論することで、みんなが納得して前に進めるんですね。一つの意見に辿り着くためというよりも、あらゆる可能性を考え尽くすことで、納得のいく方向性を定めるための議論というか。

松田:ディベートに近いのかもしれないです。そこでさまざまなリスクについても考え議論することが、想定外のことが起きたときのシミュレーションに繋がります。そうすることで、対処のスピードも違ってきますから。

だから、どんな結論になっても、そこに至るまでの議論は無駄にならないんですよね。それらはすべて模擬的なコミュニケーションになっているので。

“人を信じること”を大切に、相手の立場に立って考えられる人間でありたい

―『わたしとキリン』という企画では、キリンが掲げている3つの価値観(熱意、誠意、多様性)に加えて、社員の方それぞれが大切にしている第4の価値観について伺っています。松田さんが仕事をする上で大切にされている、第4の価値観を教えてください。

松田:私が大切にしているのは“人を信じること”ですね。

IR室における議論の話もそうなんですけれども、メンバーのバックボーンってそれぞれですし、自分とまったく同じ考えの人なんて世の中にはいないと思うんです。それくらい多様な世の中ですから、常に相手の立場に立って考えられる人間でありたいと思っています。

そのための一つとして、「罪を憎んで人を憎まず」という言葉をビジネスに置き換えた「プロセス憎んで人を憎まず」という姿勢でいることを大事にしています。

議論をしていると、ついイラッとしてしまうこともあると思いますが、その感情が人に向かうと話がこじれてしまいます。そうではなくて、その考えに至った価値観やプロセスに目を向ける必要があると思っていて。そこに考え方の違いがあるかもしれないということを常に問うようにしています。

―意見の対立は、その人自身との対立ではないということですね。

松田:これだけ複雑な感情を持っている人間同士ですから、一つの意見だけで単純にラベル付けすることはできません。自分の経験上、人と歩み寄るためにはまず相手を信じることが必要です。

そうして、お互いに信頼関係が築ければ、物事がスムーズに進みやすいと思うんです。だから私は、“人を信じること“を大切にしています。

―相手のことを信じるためには、自分の判断も信じないと意見を言うことができないと思います。自分の判断を信じることと、相手を客観視することのバランスは、どのように保っているのでしょうか?

松田:それはすごく難しいんですけど、私はあまり自分を過信しないようにしています。今までたくさんの経験をさせてもらったので、自分の仕事に対する自信やプライドはあります。だけど、それって結局は、たくさんの人たちの経験の掛け算には敵わないんですよ。

―なるほど。いくら自分がたくさんの経験を積んできたとしても、チームメンバーの経験の総量には敵わないと。

松田:絶対に敵わないと思います。だから、あまり自分自身の考えに固執したり、過信しすぎないようには気をつけています。

ただ、自分が専門とする分野で、他の人より正しい判断ができる可能性が高い場合には、これまでに培ってきた能力や経験を総動員して、適切なコミュニケーションをすることで相手にも納得してもらえるように努力はしています。そうやってたくさんの議論や判断が積み重なっていくのが、本来の多様性だと思うんですよね。

一人ひとりが持っている経験ってとても大きいので、それを企業として活かしていくのは大変だし、時間もかかります。だから、会社として“多様性”という価値観を掲げていることには、キリンの覚悟が表れていると思うし、そこに私は共感しています。

―“人を信じる”という価値観を大切にしながら、今後はどんな仕事をしていきたいですか?

松田:入社時から持っている、キリンの商品やサービスを世界中の人たちに広めたいという気持ちは変わらないので、そういう仕事をしていきたいですね。

どの部署に行きたいというよりは、幅広い世代、世界を含めたいろんな事業会社の従業員と共に、世の中と接点を持てる働き方ができたらいいなと思っています。

―その結果として、キリンがどんな会社になっていってほしいと思っていますか?

松田:本当に人で成り立っている会社なので、主体性を持って働いている人にとっては、これ以上ないフィールドだと思っています。

キリンは、CSVを掲げていて、世の中に点在する社会課題に向き合っている会社です。社会課題と自分たちが持っている強みをつなげられるならどんなことにでも取り組めるんです。こんなに自由で、面白い環境はないですよね。従業員それぞれがこの環境を最大限に活かせる企業になっていってほしいなと思っています。

文:阿部光平新しいウインドウで開きます
写真:上野裕二新しいウインドウで開きます

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