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テーマ別解説

夏の風物詩となったビアガーデン

(2)屋上ビアガーデンの誕生
第二次世界大戦後、ビールが自由販売となり、都市部に高層ビルが建てられると、屋上ビアガーデンのブームが巻き起こった。屋上ビアガーデンの元祖は、1953(昭和28)年5月、本田技研が大阪で行ったオートバイの展示会とされる。本田技研は展示会の招待客に生ビールと食事をふるまおうと、前年竣工したばかりだった梅田の第一生命ビル地下のビアホール「ニユー・トーキヨー」にその会場になってほしいと打診した。しかし、「ニユー・トーキヨー」は、客の迷惑になるからと、同ビル屋上を会場にすることを提案。やってみると大人気となり、新聞にも取り上げられた。あまりにも人気が出たので、展示会後も年末まで屋上営業が延長されたほどである。そして翌1954(昭和29)年6月、「ビアガーデン」の名で正式に屋上店がオープンし、大阪の夏の蒸し暑さをしのぐ名所となった。

それより前にも屋上でビールを提供する店は東京・銀座に存在した。その事実を伝えるのが、1952(昭和27)年5月16日付『毎日新聞』朝刊の記事である。「初夏の序曲」という見出しがつけられた記事は、前日の最高気温が24度に達したことを伝えるもので、初夏の陽気を象徴するものとして、銀座の屋上ビアホールの写真を添えている。「夏のビヤホールもルーフガーデンと銘打って屋上に進出、一日の勤めを終えたサラリーマン氏があふれ、よしずに下った提灯がゆらゆら…」という記事のとおり、写真の中の「ビヤホール」は屋上に柱を立てて、よしずで屋根を張っている。壁はなく、眼下には東京の夜景が広がっていた。そのほかにも、同年には日本橋高島屋の「ビールの祭典 屋上庭園」、東京會舘の「屋上納涼園」といったように、ビルの屋上でビールを楽しむ店が現れた。

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