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酒・飲料の歴史 飲みものの歴史 酒・飲料の歴史 飲みものの歴史

酒と飲料の文化史

明治19年〜明治45年(1886〜1912)

現代日本人の食生活に欠かせない牛乳
今日、家庭や学校などで広く飲まれている牛乳。日本では、いつ頃から普及したのだろうか。実は奈良時代には既に滋養薬として飲用されており、平安時代には税の一部として納められることもあったという。以降、牛乳は長らく、武家や貴族など一部の上流階級の間で薬用として利用された。

この状況が大きく変わったのは明治時代である。維新以降、日本人は貪欲に海外の文物を生活にとり入れていった。食も例外ではなく、国内に居留していた外国人が好んで飲んだ牛乳も、高い栄養価を含む飲料として次第に注目を集める。明治20年代になると、都市部には好んで牛乳を飲む日本人も現れ、明治天皇も日に2回、健康のため牛乳を飲んでいたといわれる。

また、明治政府が母乳の代替飲料として普及を積極的に図ったことから、牛乳は広く一般に販売されるようになる。当初は車に牛乳を積み、一軒ずつまわる量り売りをしていたが、1905(明治38)年頃にはガラスびんでの配達販売が行われるようになった。

当時の配達を担当したのは多くが苦学生で、買い取り式で販売をしていた。しかし、配達の途中で牛乳が腐敗したり、飲み逃げをされたりと、実質の利益は一升あたり5、6銭ほど。一ヵ月の収入は、公務員の月給が50円程度であったのに対し3円50銭ほどであったという。

早朝の仕入れや配達にはじまり、びんの回収、洗浄など、その仕事量は大変なものであったらしい。その過酷さを裏付ける次のようなエピソードがある。

1920(大正9)年に開催されたアントワープオリンピックの代表選手選考会では、牛乳配達をしている学生は走りのプロとして扱われ、オリンピック出場資格を与えられなかったのだ。牛乳の配達業務に、長距離を走り回る体力と相当なスピードが求められていたことがよく分かる。

また、牛乳をより身近にしたものとして、ミルクホールと呼ばれる軽飲食店の存在が挙げられる。一杯4銭程度のミルクに、パンや手軽な洋食をとりながら、備えられた新聞や雑誌を読めるミルクホールは、明治30年代頃から学生を中心に流行した。

ミルクホールが普及していったさまは、大正期を中心に活躍した喜劇役者・曽我廼家五郎が記した脚本『成金』(『曽我の家五郎喜劇全集 第十篇』所収)からもうかがい知ることができる。それによると、ホールではアルコールも販売されるようになり、客層も学生に限らず芸者や成金の紳士など多様であったようだ。こうしたミルクホールは、その後も親しまれ、牛乳はより身近な飲料となっていった。
明治時代の牛乳販売所の「引札」

明治時代の牛乳販売所の「引札」。引札とは現在でいうチラシのこと。当時の牛乳購入は、びんではなく土鍋などに缶から直接注いでもらうかたちであった。その後、衛生面からびんでの販売となる。(河内長野市 所蔵、河内長野市文化資産デジタルアーカイブ)

健康飲料として注目されたワイン
一方で、やはり高い栄養価を含む健康飲料として注目されたのがワインである。明治初期には需要が伸び悩んでいたが、1877(明治10)年、明治天皇が西南戦争の負傷兵に見舞い品としてワインを送ったことから大衆の注目を集めた。あわせて国内でのワイン生産が盛んになるが、明治10年代半ばにはいまだ外国からの輸入に頼っており、1883(明治16)年の国内生産量は93石(約17KL)にすぎず、総消費量の約96%を輸入品が占めていた。

1886(明治19)年、日本中でコレラが流行し10万人以上の犠牲者が出た。すると洋酒の輸入販売店は、鉄分やキニーネ(キナの樹木からとれる抽出物で、当時コレラ治療に用いられていた)を含んだワインを、病気予防や健康維持をうたい販売する。翌年ワインの需要は約3倍に跳ね上がり、その消費量は、国産品で1,462石(約263KL)、輸入品は5,666石(約1020KL)ほどで、輸入量に対する国内生産量の比率は約26%であった。需要の拡大に伴い、国内での生産量も急激に増大したことが分かる。

1890年代にはその傾向はさらに強まり、ワインは「仏国大博覧会ニ於テ第一等金賞牌」「病院において最も多く薬用に採用」などと宣伝され、徐々に庶民にも飲まれるようになった。

現在、産地や銘柄ごとの多様な味わいで親しまれるワインだが、明治時代には、健康飲料としての側面があったのである。
1904年に建てられた、現存する日本最古の木造ワイン醸造所「旧宮崎第二醸造所」

1904年に建てられた、現存する日本最古の木造ワイン醸造所「旧宮崎第二醸造所」。現在はシャトー・メルシャンのワイン資料館となっている。


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