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未来のヒント

自分のできることで、社会が少しでもよくなるように。~田口一成さんに聞く~

ボーダレス・ジャパンは2007年に創業、13年を経て代表の田口さんは社会起業家が起業できるプラットフォームづくりに邁進しています。ボランティア団体でなく、それぞれがビジネスとして成り立つように、10年で1,000社の企業のプラットフォームをつくりたいといいます。現在はまだ35社ですが、ここ数年の躍進は凄まじい勢いで世界各地へと広がっています。それぞれの企業は田口さん自身が起業するのではなく、社内、そして社外からやりたい人が提案をしていきます。ボーダレス・ジャパンはそれを支援していくプラットフォームです。田口さんは社会起業家を応援する仕組みづくりを完成させたいそうです。今回はそうした田口さんの考えを伺って見たいと思います。

現在35の企業が世界で企業されている。企業の案内だけでなくイベントなどの告知もあり興味のある人たちが参加しやすいサイトになっている。

社会の課題を解決したい

田口さんは学生時代に飢餓からお腹を膨らませた子供をドキュメンタリーで目にし、衝撃を受けNGOに入り途上国で活動したいと思い至ります。そこで出会った組織の代表の方から、「君が本当に貧困問題を解決したいのなら、NGOにはこないほうがいい」と言われます。NGOは資金面で厳しく、本当に貧困問題を解決したいのなら寄付する側になってほしといわれたのです。田口さんはその代表の言葉に応えて25歳で起業、最初は社会問題とは関係ない不動産のポータルサイトをつくります。しかし結果は思ったようにはならず、これではNGOを応援できないと感じていた頃に転機が訪れます。外国人が日本での住まいを借りるのに保証人がいなくて困っていることを知り、外国人向けのシェアハウスをつくりはじめるのです。いまでこそシェアハウスという言葉は知られていますがその当時はまだまだ一般的なものではありませんでした。目の前に困っている外国人がいて、かつそれをビジネスで解決できるという事を発見したとき、彼は、ビジネスがお金を稼ぐ手段だけでなく、社会の課題をも解決できるという事に気付きます。こうして田口さんは"ソーシャルビジネス"を展開していくのですが、自分一人では一つのビジネスを成功させるのには数年かかってしまうということが気になり始めます。社会には様々な課題が山積みされていて、一人では間に合わないと考えたのです。そこで一人でやるのでなく志を同じくする仲間たちが一緒にチャレンジできる仕組みを模索し始めました。自分自身で会社を経営するのではなく、志のある人のチャレンジを応援して、そのことでより多くの人が活躍できる場をつくっていきたいと考えるようになったのです。

スキルより志

現在、田口さんのもとには毎週のように将来起業したいと、具体的な案件をもってくる若者がくるそうですが、その中で審査する視点は、スキルより志だといいます。ビジネススキルはグループでサポートしていくことができますし、経営者がこれから学んでいくことができます。しかし、志はそうはいきません。志を持っている人は、そこに自身が考える課題に対する独特で、切実な切り口を持っていると田口さんは言います。志を持って、具体的に活動しているからこそわかる切り口で、社会問題にしっかり向きあえているかが最も大切なのです。審査に通れば運転資金が1,500万円手渡され、起業することができます。実際にすぐにやらせてみるのです。これも彼の様々な経験を通していきついた経営者を育てる教育の早道です。自分でやってみないと力はついてこないのだと言います。人は実際に自分で経営することで生き残る本能のようなものが呼び覚まされてくるのだそうです。将来多くの社会起業家を作り出すためには、「やらせてみる」、そこに尽きるそうです。このことを「人を育てるには、放っておくのが一番だ」と笑いながら言っていたのが印象的でした。田口さんのこの教育方法は社外から案件を持ってきた人だけでなく、新入社員にも応用しています。将来の起業家を育てるための実践がその日から始まるのです。仮に失敗したら、そこから再度プランを練り直し再度チャレンジします。失敗の中から成長して自分自身の道を切り開くのです。何度もチャレンジすれば人は絶対に成功する、そしてそれが社会に貢献しているのであればその意義はあるのです。これはかつてNGOを目指していた頃の自分への答えなのかもしれません。

田口さん自ら立ち上げに関わっている課題

ソーシャルビジネスという意味

田口さんがあえて"ソーシャルビジネス"(=社会的企業)と呼ぶにはわけがあります。そもそも企業というのは、創業の時はなにかしらの社会課題に向かって事業を始めています。しかし会社が大きくなるにつれて利益の最大化と資金回収の最速化という金融資本主義の枠組みの中に組み込まれていきます。田口さんはソーシャルビジネスである以上、その事業が"どのように社会に役になっているのか"を計測する指標を組み込みます。たとえば貧困問題であればどれだけ雇用したか、またはどれだけの子どもが通学可能となったか、ゴミ問題であればどれだけの人がリユースショップを利用しはじめたか、フードロス問題であれば規格外野菜の流通量というような指標です。たとえ利益がでたとしてもその課題を解決していなければその事業が成功したとはいえません。利益よりも"社会の課題の"方に重きを置いているのです。田口さんがソーシャルビジネスにこだわる理由はここにあります。
社会の中での会社がどのように社会の課題を解決しているのか、事業プランを策定するときや成果を図るときに、収益以外の指標を持っている会社は多くないかもしれません。

ホームページに掲載されている彼らの考え方

お互いが高め合っていく仕組み

ソーシャルビジネスが黒字化するまでは田口さんはメンターとして伴奏するそうですが、黒字化した後はそれぞれの社長が自由に経営をしていきます。社長は、月一回、グループの社長達が4人1組で組織する経営会議に参加します。ひとつの企業の課題に対して3社がサポートし知恵をだしあい、みんなで難局を乗り切っていくのだそうです。しかし、それでも本当に困った時、難局が訪れた時に手を差し伸べ、勇気付け、次のチャンスを一緒にみつけていくのが自分の役割だと田口さんは言います。何度でもチャレンジすればいい、起業の厳しさを通して力をつけて欲しいのだと言い切ります。多くの社会活動企業が資金の上で苦労をしているのは確かなことでしょう。しかし田口さんはビジネスを通して、そして次につづく後輩のためにチャレンジできる仕組みを作ろうとしているのです。それが社会の問題をひとつでも解決できるのならば、そこには大きな価値があるのだと考えています。

未来に残したいもの

田口さんは「何を得たいのかでなく、なにを残したいのかが大事なのだ」とも言います。田口さんにとって残したいものは、この社会起業家を応援する仕組みだと言います。そしてその仕組みをつかって多くの志をともにする仲間を応援できる仕組みをつくっていくことだと考えています。田口さんがいなくなっても運営できるしくみづくりこそが田口さんが目指す姿です。世界の同じ思いの仲間が、田口さんのつくるこの仕組みを利用して活躍できるように、そして社会が少しでもよくなったといわれるようにしたいと言います。

取材を通して

現在のコロナ禍は大変な事態ではあるけれども、これは世界がアップデートし、なにかを取り合うのでなく、誰も取り残さない世界に近づくチャンスと田口さんはいいます。目に見えるわかりやすいものだけでなく、見えないものや本質へと目を向けてみるのです。 今回の取材で、企業の存在意義は何かということを深く考えさせられました。それぞれの会社には社会にどのように貢献したいかという理念は掲げられているでしょう。しかし実際のビジネスの上で、収益面以外の具体的な指標をもち、どのように社会へ貢献しているのか、何のために私たちは存在しているのか、そのことを真剣に議論する場面を持つ必要がありそうです。

みなさんのご意見をお寄せください。

プロフィール

田口 一成(たぐち かずなり)
株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長
https://www.borderless-japan.com/

1980年生まれ 福岡県出身
大学2年時に栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て「これぞ自分が人生をかける価値がある」と決意。早稲田大学在学中にワシントン大学へビジネス留学。株式会社ミスミにて入社後25歳で独立し、ボーダレス・ジャパンを創業。世界13ヵ国で35社のソーシャルビジネスを展開し、2019年度の売上は54億円。
2018年10月には「社会起業家の数だけ社会課題が解決される」という考えのもと、社会起業家養成所ボーダレスアカデミーを開校し、1年半で250名以上が受講。次々とソーシャルベンチャーを生み出すボーダレスグループの仕組みは、2019年グッドデザイン賞を受賞。2019年日経ビジネス「世界を動かす日本人50」,Forbes JAPAN「日本のインパクト・アントレプレナー35」に選出。

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