試合詳細レポート

2003

キリンチャレンジカップ2003
11月19日 日本代表×カメルーン代表

 12月上旬に開催される東アジア選手権への海外組招集が困難なため、ジーコ監督はこのカメルーン戦を「ベストメンバーで戦う今年最後の試合」と位置づけた。さらに「カメルーンはアフリカでナンバー1のチームだと思っているが、前の試合以上に進化を感じさせるゲームをして勝ちたい」と、勝利への意欲を見せていた。
 カメルーンは得点源のエトーが体調不良で来日せず、キャプテンでCBのソングもコンディションを崩して出場できなかった。しかし、プレミアリーグの強豪チェルシーに所属するジェレミや、東京ヴェルディの得点源エムボマらのビッグネームが攻守の軸となり、01年9月からチームを率いるビニー・シェーファー監督のもとできっちりと組織されていた。 その実力は、9月に0-1で敗れたセネガルに匹敵する。
 それでも日本は、開始早々から攻めの糸口を見つけていく。キックオフ直後の2分、小野のロングフィードから藤田がゴール前に飛び出し、相手守備陣を慌てさせる。中村の負傷でおよそ4年ぶりにスタメン出場の機会を得た藤田の積極性が、いきなり表れた場面だった。

11分にはビッグチャンスが訪れる。中田英とのワンツーで左サイド深くまで切り込んだ柳沢が、ゴール前で待ち構える高原へラストパスを供給する。フリーの高原はワントラップから左足を振り抜くが、相手GKの攻守に阻まれた。
 27分には藤田が魅せる。中盤でパスカットし、そのままゴール前へ迫る。右足を振り下ろしたところで背後からタックルを受け、シュートに持ち込むことはできなかったが、2列目からゴール前へ出ていく彼の持ち味がカメルーンを脅かした。試合後のジーコ監督も「あの場面はあわやPKというものだったし、彼の良さは十分に出ていた。豊富な運動量が生きていた」と、高く評価している。
 その後も日本は試合のイニシアチブを譲らない。カメルーンに一度の決定機も許さずに、ハーフタイムを迎えた。

 後半も立ち上がりからスタンドを沸かせる。47分、中田英のスルーパスから高原が右サイドで仕掛ける。51分、ゴール中央から突進した高原が、ペナルティエリア直前で相手DFのファウルを誘う。
 最終ラインも安定していた。左MFアトゥベのパワフルな突破から、日本のゴールに迫ってきた。しかし、「スピードを警戒して、いつもよりラインを深めにした」という宮本の言葉どおり、日本のDF陣はカメルーンに危険なスペースを与えない。稲本と小野のダブルボランチも、ディフェンスの意識を高く持つことで最終ラインをサポートした。ジェレミの直接FKなどから3度許した決定的なピンチは、楢崎が冷静に対処した。
 ディフェンス重視でカウンター狙いの相手守備陣をこじあけるために、ジーコ監督は69分に柳沢に代えて大久保を投入。前線の活性化を図る。80分には藤田を下げて遠藤を送り出し、小野、稲本との3ボランチにした。「カウンターをケアして、少しディフェンシブにした」とジーコ監督は説明しているが、攻撃的な姿勢は最後まで失われなかった。高原が、大久保が、飽くなき闘志でゴールを目ざした。
「拮抗したせめぎあいだった。カメルーンは失点が非常に少ないチームで、相手の中盤は強くしつこく当たってきたが、攻撃は何度か形が作れていた。サイドを封じられても、中央から突破しようとしていた。そのアクションの速さと決断力に進化を感じる。非常に満足している」

 試合後の記者会見で、ジーコ監督ははっきりとした手応えを口にした。「勝てなくて残念です」と話したキャプテンの中田英も、その言葉に自信を滲ませている。
「チャンスを作りながら得点できなかったのは、みんなできっちり反省すべぎ。多少強引にでも、シュートを狙ったりしたほうがいい。ただ、0点に抑えたのは相手の強さを考えても自信になる」
 残念ながら0−0のスコアレスドローに終わったが、チームがつかんだ自信と手応えは大きかった。「点を取るところで決めていればという試合だった。でも、あれだけの相手にいい形を作って、チャンスも多かった」という稲本の言葉は、チーム全体に共通するものだっただろう。

 03年に<キリンカップサッカー2003 >と<キリンチャレンジカップ2003>で来日したチームは、アルゼンチン、パラグアイ、ナイジェリア、セネガル、カメルーンといった世界のトップクラスばかり。 こうした強豪相手にテストマッチを積み重ねることで、日本代表は確実に力をつけていった。ドイツ・ワールドカップの予選が幕を開ける2004年も、ジーコ監督と日本代表選手への期待は尽きない。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■11月19日 大分スポーツ公園総合競技場
日本代表 [0ー0] カメルーン代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) DF 宮本恒靖
 2) FW 柳沢敦
 3) DF 坪井慶介
 4) DF 三都主アレサンドロ
 5) DF 山田暢久
 6) GK 楢崎正剛
 7) MF 小野伸二
 8) MF 稲本潤一
 9) FW 高原直泰
10) MF 中田英寿
11) MF 藤田俊哉
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) DF 宮本恒靖
     2) FW 柳沢敦
     3) DF 坪井慶介
     4) DF 三都主アレサンドロ
     5) DF 山田暢久
     6) GK 楢崎正剛
     7) MF 小野伸二
     8) MF 稲本潤一
     9) FW 高原直泰
    10) MF 中田英寿
    11) MF 藤田俊哉

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> ジーコ

<出場選手>

■11月19日/大分スポーツ公園総合競技場
日本代表 (0) 0
カメルーン代表 (0) 0
日本    
GK 楢崎正
DF 山田 坪井 宮本 三都主
MF 稲本 小野 中田英 藤田(遠藤)
FW 高原 柳沢(大久保)
カメルーン    
GK カメニ
DF ヌジャンカ(ファレミ) チャト(バホケン) メトモ ジェレミ アトゥバ
MF ドゥンベ モカケ(エパレ)
FW ジェンバ(ウェボ) マクン エムボマ(ヌゴム)

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

<ポスター・パンフレット>

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  • 試合パンフレット
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