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人の「体臭」で何が分かる? Johan Lundstrom

食事が体臭に影響を与えることは知られていますが、好きな人の体臭は心地よく感じる一方で、知らない人の体臭は不快に感じる場合があります。なぜそのように感じるのか、体臭にはどんな役割があり、脳はどう処理しているのか。研究結果をもとに、モネル化学感覚研究所のヨハン・ランドストローム博士に書いていただきました。

実は重要な役割を果たしている「嗅覚」

バスで隣の席になった男性の汗のすえた臭い、刈り取ったばかりの芝生の瑞々しい香り、生ゴミの悪臭、通りすがりのベーカリーから漂うおいしそうな匂い。芳香から悪臭まで、私たちの暮らしの中にはさまざまなにおいがありますが、普段、そのことについて考える機会はあまりありません。長い間、科学者たちも、人間は「嗅覚不全動物」であり、嗅覚は他の感覚ほど重要ではないと考えていました。しかし近年の研究では、嗅覚による情報が日々の判断に非常に重要な役割を果たしていることが示唆されています。ここでは、人間の脳が体臭による情報をどのように処理しているか、体臭が私たちの暮らしやライフスタイルにどのような影響を及ぼしているかを考えてみましょう。

私たちの脇のにおい(体臭)に含まれる情報とは

体臭には、動物の個体に関する重要な情報の手がかりを伝える役割があります。長い間、人間もそうした動物の仲間だとは知られていませんでしたが、今では、人間も同種 (つまり他の人間) の体臭から生物学的あるいは社会的な情報の手がかりを得て、それによって行動が左右されていることが分かっています。
体臭は、その人自身の体質や食事、衛生状態などの情報を反映しています。私たちの研究では、人間は体臭によって個人を特定したり、自分に有利な体質を持つパートナーに魅力を感じたり、相手の健康状態を知る手がかりを得たりしていることが分かっています。

体臭は、約120種類の化学物質で構成されている

人間の体臭は、好き嫌いの感情を強く引き起こします。皆さんも、恋人の体臭は好ましく感じるけれど、バスで隣の席に座った他人の体臭には嫌悪感を覚えるといった経験があるのではないでしょうか。また、「体臭」という言葉を聞くと、多くの人は「不潔な臭い」を思い浮かべるかもしれません。しかし、このように意識的に感じるにおいの発生源は、人間の体臭を構成する約120種類の化学物質のごく一部にすぎません。その一方で、私たち人間は、社会的なシグナルとして作用する体臭の成分をほぼ無意識に知覚しています。

「体臭」と「一般的なにおい」では、脳の処理システムが異なる

私たちは近年の研究により、体臭が嗅覚の主要な処理センターである脳の大脳辺縁系(主に感情や認知に関わる脳の部分)で処理されていることを発見しました。そこから言えることは、まず、体臭は他の一般的なにおいとは異なり、より感情刺激に近い形で情報処理されているということです。そして、さらに重要な点は、体臭の意識的な知覚と、体臭に含まれる社会的なシグナルを、異なる情報処理によって区別しているのではないかということです。
私たちの研究では、この区別が自動的に行われることが示唆されました。人間の体臭ではなく、化学的に合成した「偽物の体臭」を使っても、脳の知覚システムはだまされず、偽物の体臭を「一般的なにおい」として処理しました。驚いたことに、被験者が「偽物の体臭」を本物の体臭と間違えて認知した場合も、脳はそれを一般的なにおいとして処理していたのです。これらの結果から、「なぜ脳は一般的な嗅覚知覚経路とは別に、特殊な処理ネットワークを発達させてきたのか。それによって人間の行動はどう影響されるのか」という疑問がわいてきます。

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