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加齢による、嗅覚と味覚の変化 Beverly Cowart

今回は、加齢によって嗅覚や味覚はどのように衰えていくのかをご紹介します。モネル化学感覚研究所(以下、モネル研)のベバリー・コワート教授に書いていただきました。

老化と化学感覚

加齢によって視覚や聴覚が衰えていくことは誰でも知っており、老眼鏡や補聴器の世話になるのは仕方がないことだと思われています。では、におい成分を構成する揮発分子や食べ物が口の中で唾液に溶け出す水溶性分子に対する化学感覚、すなわち嗅覚や味覚はどうでしょう。視覚や聴覚と同じように、高齢になれば明確な変化が現れるのでしょうか。

嗅覚と味覚の違い

この問題を考える前に、においを感じるシステムすなわち嗅覚と、味を感じるシステムすなわち味覚がかなり異なることを認識しておくことはとても重要です。嗅覚と味覚とでは、受容体のタイプや末梢神経の経路、反応する化学刺激の種類も一般的に異なります。にもかかわらず、脳は、嗅覚刺激と味覚刺激の多くを重複して受け取っています。たとえば、ものを食べたとき、口の中の味覚受容体を刺激する分子と、口から鼻を通って嗅覚受容体を刺激する分子が同時に放出されるので、食物から得られる風味のどの部分が味で、どの部分がにおいなのかを感覚的に区別するのは非常に困難です。
食べものの風味を構成する2つの要素である嗅覚と味覚が加齢によって受ける影響は、一様でありません。以下、モネル研をはじめとする複数の機関による研究結果をご紹介していきます。

においを感じるしくみ

まず、嗅覚についてです。においをキャッチするセンサーである嗅覚受容体の多くは、鼻腔の奥の嗅上皮の比較的小さな部分にある嗅覚受容神経(ORN。嗅神経ともいいます)上にあります。他の感覚器とは異なり、嗅覚受容神経は外界に露出しているため、有害な可能性のある物質や粒子に絶えずさらされ、病原菌による直接的な攻撃も受けやすい状態にあるといえます。
嗅覚受容神経には、生涯にわたって再生を繰り返すという特殊な性質もあるので、再生のプロセスは複雑です。というのは、嗅球(脳の一部で、嗅覚を担っている領域)と嗅覚受容神経の両方を再構成しなければならず、しばしば不完全な形で再構成することもあるからです。若い成人の中にも、嗅覚受容神経が変性したり、部分的に呼吸組織(呼吸を感じる神経)に置き換わったりするケースが見られ、この現象は加齢とともに増加する傾向があります。

嗅覚は、70代以降に衰えはじめる

においや味などを感知できる最小値の濃度(感知できるかどうかの境目となる値)を、閾値(いきち)といいます。嗅覚機能の評価には、においの閾値を調べる「閾値感度試験」や、バナナとミカンなど、より濃度の高いにおいを嗅ぎ分ける「においの嗅ぎ分け試験」が多く用いられます。一部では、閾値よりも上の濃度で、においの強度を嗅ぎ分ける「閾値上嗅覚試験」が行われることもあります。
これらの測定法を用いたほぼすべての研究で、加齢による顕著な能力低下が見られます。通常、70代から80代で嗅覚能力が低下しはじめ、徐々に進行していきますが、極めて高齢でない限り、嗅覚が完全に失われることはありません。
とはいえ、高齢者の場合、ガス漏れなどの化学的危険に対する嗅覚が弱くなったり、風味を感じる能力が大幅に減退したために食事を楽しむことへの興味がなくなることも珍しくありません。

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