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第5回 のどが渇くと、冷たいビールを飲みたくなるのはなぜ? Paul A.S. Bresline

のどが渇いたとき、なぜ私たちは冷たいビールを飲みたくなるのでしょう。飲みものの温度や苦味が果たす役割について、モネル化学感覚研究所のポール・ブレズリン教授が興味深い考察を寄せてくださいました。

「のどが渇く」とはどういうことか

暑い夏の日、汗をかいてのどが渇くと、人々は爽快感を求めて冷たいビールを飲みます。なぜ、常温の水ではなく冷たいビールなのでしょう。水分補給によってのどの渇きがおさまるのなら、レタスをボウル一杯分食べてもよさそうです。しかし実際には、それではなかなかのどは潤いません。このことから、のどの渇きとは、「液体を飲みたい」という心理的な状態を示すと考えられます。
なお、ここで紹介する仮説は、私個人の観察にもとづく推論であることをご了承ください。いずれ、実験によって証明したいと考えています。

冷たいものを飲みたくなるのはなぜ?

たくさん汗をかいてのどが渇いたとき、コップ1杯のぬるい水と冷えた水のどちらかを選ぶとしたら、おそらくほとんどの人が冷水を選ぶでしょう。しかし、その理由を説明するのは意外に難しいのです。量も同じ、のどの渇きを癒やす点でも同じはずなのに、なぜ冷水が好まれるのでしょうか。

冷たい空気を吸うと、息が苦しくない

この問題を考えるために、まず、体感温度と息苦しさとの関係についてお話ししましょう。私たちは、水分が不足したときにのどの渇きを覚えるのと同様に、空気が不足すると息苦しさを感じます。呼吸を我慢するときも、空気を肺いっぱいに吸い込んでいるときの方が、半分しか吸っていないときよりも長く息を止められます。肺の中の空気が多ければ多いほど、長時間、血液に酸素を供給できるからです。
ここで興味深いことに、息を吸う時間が長いほど、流れ込む空気によって口の中が冷えるという事実があります。息を吸うたびに水分が蒸発し、口の奥から気道の入り口までの上皮の温度が顕著に低下するからです。さらに、人間は、同じ量の空気を肺いっぱいに吸ったとき、温かい空気よりも冷たい空気の方が、はるかに長く呼吸を我慢することができます。

のどで感じる温度が肺の空気の残存量のシグナルに

これはどうやら、咽頭部で感じる温度が、肺の空気量を知らせる間接的なシグナルの役目を果たしているからのようです。私たちが息苦しさを感じるのは、血中の酸素濃度や二酸化炭素濃度だけによるものではなく、肺があとどれだけ酸素を供給し続けられるかを無意識に推測していることも関係しているのです。
次のような実験結果もあります。同じ室温で、同じ量の空気を吸い込むとき、上気道にメントール蒸気を吸入させて処置すると、より長く息を止めていられるようになります。これは、息を吸ったとき、メントールによって空気が冷たく感じられ、より多くの空気が肺に残っているように身体が錯覚を起こすからだと考えられます。

水の温度と、のどの渇きとの関係

「飲むこと」についても同じことがいえるとしたら、水を飲んだときに渇きが癒やされるのは、水が口に入ることによって生じる「冷たさ」の感覚も関係していると考えられます。
水を飲んだときに感じる冷たさが、水分摂取を脳に伝える重要なシグナルになっている可能性があるのです。実際にはまだ水分が体に吸収されていないのに、飲んだ瞬間にのどの渇きがおさまるとすれば、冷たさの感覚によって必要な水分を摂取したことが推測され、脳に伝わったからでしょう。また、同じ量を飲んでも、常温の水よりも、冷たい水の方がたくさん飲んだように感じるとすれば、冷たい水は、渇きを癒やす効果がより高いといえそうです。病気などで水を飲めないとき、氷のかけらを口に含むと、ある程度渇きがおさまりますが、その理由も、これで説明がつきそうです。

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