未成年者飲酒の実態
お酒は、大人にとっては「百薬の長」と言われ、適量のお酒は有益なものですが、未成年者にとっては、「百害あって一利なし」。
心身共に発達段階にあり、アルコール分解能力も大人に比べて未熟なため、脳細胞への悪影響、性ホルモンを産出する臓器の機能抑制など、成長期にある十代の心身にとって飲酒はマイナス以外ありません。
最近の調査によると、中学生の17.5%、高校生の28.5%が「飲酒経験あり」とされており、未成年者の飲酒の広がりが問題となっています。
特に、「問題飲酒者」層(週1回以上飲酒)が大きく増えていることが、若年のアルコール依存症につながるとして、将来への危険性が指摘されています。

飲んではいけない理由
人格形成にゆがみが
人間の脳は、思春期の間に知性、理性、創造力などの重要な能力が形成されていきます。
また、思春期には物事の判断や意志決定が感情的に偏る傾向があります。
脳が形成されておらず、感情が高ぶりやすい時期に飲酒を続けると、神経細胞を壊してしまったり、理性的な行動ができなくなり、未成年者の人格形成に大きな影響を及ぼしてしまうのです。
アルコール依存症になりやすい!?
飲み始める年齢が早ければ早いほど、大酒飲みになったり、アルコール依存症になったりするリスクが高いことが証明されています。グラフは飲酒開始年齢とアルコール依存症の生涯有病率を表したものです。飲酒開始年齢が早いほど、アルコール依存症の生涯有病率が高くなっています。

記憶力が低下する
アルコールは、学習に悪影響を及ぼします。下のグラフは、短期的な記憶力へのアルコールの影響を比較したグラフで、若い人ほど記憶力が極端に悪くなるということが示されています。
また、思春期からアルコールを大量に飲み続けると、記憶を蓄える海馬が減ってしまい、記憶力が低下してしまうという取り返しのつかない結果を招くのです。


性機能の発達に影響が!?
子どもの身体は思春期の頃に急激に発達しますが、性的な機能はまだまだ発展途中で、この時期に飲酒をしてしまうと、性ホルモンの量が減ってしまい、男子では勃起障害が女子では生理の乱れといった悪影響を及ぼすおそれがあるのです。
法律でも絶対ダメ!
日本の法律では、未成年者だけでなく、親、そして酒類を扱うお店のそれぞれに対して、未成年者への飲酒を禁じています。
- 未成年者
「未成年者飲酒禁止法」によって、20歳未満の飲酒が禁じられています。 - 親
「親権者には未成年者の飲酒を抑止する義務と責任がある」としています。 - 酒類を扱うお店
酒類を扱う業者は、未成年者が飲むと知っていて、未成年者に酒類を売ったり、与えたりした場合、罰せられます。
さらに酒税法の規定により、酒類の販売免許が取り消されることもあります。
これらを記している「未成年者飲酒禁止法」の特徴は、飲酒した未成年者本人が罰せられるのではなく、周りの大人の責任とされていることです。
国ごとに異なる飲酒の法律
世界の国々を見ると各国の風土や文化、宗教などにより、飲酒に関する法律もさまざまですが、若年者の飲酒は多くの国々で禁止されています。その一方で、宗教によって大人の飲酒を禁止している国もあります。サウジアラビアなど国外からお酒を持ち込むだけでも罰せられる国もありますので、旅行の際は注意が必要です。また、アメリカでは、公道を酔って歩いているだけでも法律違反となる地域があります。
未成年者は大人が守ろう
未成年者飲酒の危険性を理解して、社会全体で防止の意識を高めましょう
未成年のうちから飲酒をすると、脳や身体に悪い影響を与えるだけでなく、飲酒によって現実逃避をするという回路が形成され、青年期に学習すべき正しい対人関係の作り方やストレスの対処方法が身に付かないままになることが多いこともわかっています。
健康な人生、そして豊かな人間関係をつくれるよう、未成年者の飲酒はなんとしても社会全体で防止する必要があるのです。

未成年者の飲酒は大人の責任
未成年者がお酒を飲む動機で最も多いのは“家族のすすめ”という調査結果もあります。
本人の自覚はもとより、大人が未成年者飲酒についてしっかりと学び、どうしてダメなのか未成年者にしっかりと納得させられるようになりましょう。

ライフスキル(お酒の上手な断り方)
友達や家族、大人がお酒を誘ってきたときは、ハッキリと断りましょう。
- 友達が誘ってきたとき
もし友達がお酒を誘ってきたときは、「お酒は身体によくないから、飲まないんだ。」などと、ハッキリと意思を伝えましょう。 - 家族が誘ってきたとき
お正月などに家族がお酒を誘ってきたときは、「大人(または20歳)になったら誘ってね!」などと、当たり前の事実を織り交ぜて伝えましょう。 - 大人が誘ってきたとき
街角などで大人がお酒を誘ってきたときは、「未成年者にお酒を勧めると罰せられるよ!」などと、法律を理由に伝えましょう。
いずれの場合も、断ってもしつこく勧められるときは、その場を立ち去るのもひとつの手段です。