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研究・技術開発成果

不可能を可能にした「おいしさ」との両立。世界初*のカフェインゼロ緑茶が誕生するまで
~「キリン やさしさ生茶 カフェインゼロ」~

*ペットボトル緑茶史上初(100ml当たりカフェイン含有量0.001g未満のPET容器詰め緑茶飲料、2014年2月SVPジャパン調べ)

研究・技術開発インタビュー

カフェインを含まない飲料へのニーズが高まるなか、カフェインを除去したおいしい緑茶飲料は、世の中にあるようでありませんでした。「おいしさ」と「カフェイン除去」を両立するのは技術的に困難だといわれてきたからです。
キリンR&D本部 飲料技術研究所の塩野貴史主任研究員をはじめとする研究チームは、その不可能に挑戦し、新たな製法を開発しました。そして、「世界初」となる商品化を実現したのです。着想から実に4年がかり。そこには、様々な紆余曲折のドラマがありました。

塩野貴史(しおの・たかし)

キリン(株)R&D本部 飲料技術研究所 主任研究員

大学院で化学工学を専攻し、微生物を使った廃水処理を研究。修了後の2003年、お客様の笑顔につながるモノづくりを志し、キリンビールに入社。麹菌を利用した健康食品の開発、キリンビバレッジでの「やわらか生茶」商品開発、焙煎米麹の開発などに携わり、2010年よりカフェイン除去技術の開発・実用化に取り組んでいる。技術士(生物工学部門)、日本茶インストラクター、チーズプロフェッショナルの資格も持つ。

「家庭ではつくれないお茶」に着目

入社以来、麹菌などの微生物や酵素を活用した新規素材開発や、新商品の開発に取り組んできた塩野研究員が、初めて飲料の開発に携わったのは2008年のことです。カフェイン50%オフの「キリンやわらか生茶」を2009年に世に出した後、さらに進化したお茶づくりを目指しました。そこで出てきたのが、「カフェインゼロのおいしい緑茶飲料」というアイデアです。
「当時、他の緑茶飲料の多くが、家庭の急須でいれた緑茶の味を再現することに力を入れていました。そこで我々は、他社とは一線を画し、『家庭ではつくれないお茶をつくろう』と考えたのです」

味や香りを残したままカフェインを取り除く方法を試行錯誤

当時、カフェインオフを訴求したコーヒーや紅茶などの飲料は次々に商品化が進んでいました。しかし、緑茶飲料に限っては、カフェイン70%以上オフの商品がほとんどなかったのです。その背景にあるのは、技術的なハードルの高さでした。

「カフェインを除去するには、熱湯などで茶葉そのものからカフェインを洗い流す方法が一般的ですが、緑茶の場合、それではカフェイン以外の味わいや香りの成分も失われてしまい、どうしてもおいしいものができないのです。私たちは、そこに挑戦しようと考えました。誰も実現したことのない『おいしくてカフェインゼロの緑茶』をつくりたい。その方法を見つけるために、試行錯誤の日々が始まりました。2010年のことです」

緑茶の抽出液を分析する塩野研究員。

100種類以上もの吸着剤を試し、ついに発見!

緑茶に関する情報を多方面から集め、あらゆる可能性を検討する中から塩野研究員が挑戦したのは「茶葉ではなく、緑茶の抽出液からカフェインを除去する」という方法でした。カフェインを選択的に吸着する物質(吸着剤)を見つけ出し、これを緑茶の抽出液に混ぜて、味わいや香りはそのままにカフェインを除去しようというものです。

とはいえ、吸着剤には数多くの種類があります。どの吸着剤をどのような条件で使えばおいしさとカフェイン除去を両立できるのか、一つひとつ実験してみなければ分かりません。1年がかりで100種類以上もの吸着剤を試した末に見つけ出したのは、思いもよらないものでした。

「詳細は明かせませんが、当初はまったく期待していなかった物質なのです。食品に使われてきた天然の吸着剤で、分析結果を見て『まさか』と思いました。この天然吸着剤を使うと、味わいや香りはそのままに、カフェインが選択的に吸着除去されるのです。こうした予期せぬことが起こるから研究開発は面白いですね。まさに自然科学の神秘を感じます」
この技術が基になって、キリン独自の「カフェインクリア製法」(下記の図)が後に完成し、世界初の商品を世に出す原動力になりました。

カフェインだけを除去できているか機械で測定します。100種類以上の吸着剤を試し、結果を比較しました。

キリン独自の新技術「カフェインクリア製法」(特許出願中)

緑茶の抽出液に天然吸着剤を添加し、カフェインを選択的に取り除く技術です。
味わい成分や香りはそのまま残るので、「おいしさ」と「カフェインゼロ」を両立することができます。

実用化に向け、次々と試練が襲いかかる。
社内外の力を結集して乗り越えた

カフェインを選択的に吸着する物質を見つけたことで、研究は大きく前進しました。次なる課題は、上の図で示した製法の「天然吸着剤の分離工程」の部分です。緑茶の抽出液と、カフェインを吸着した吸着剤とを分離するのですが、高度な技術や機器が必要となり、「研究所の実験室では可能でも、実際に商品をつくる工場の規模では無理だ」との声が社内外から多く寄せられたのです。

「そんな中、ある機器メーカーの方が『できるはずだ』と手を挙げてくださり、道が開けました。あきらめずに共同で研究を重ね、緑茶の抽出液と吸着剤を分離するための条件や機器の部品変更を繰り返し試した結果、工場にも適用できる分離工程を確立することができました。この技術の確立までに1年以上かかりましたが、製法を完成させたときはホッとしました」

カフェインを除去した緑茶を試飲し、味や香りを徹底的に評価します。「おいしさ」の追求にゴールはありません。

「必ずうまくいく」という強い信念のもとに

2012年、いよいよ実用化に向けて飲料工場の製造ラインを用いて検証する段階に入りました。ところがここでも、アクシデントに見舞われます。世界初の製法だけに、一筋縄ではいかず、当初はトラブルの連続でした。

「詳しくはお話しできませんが、一時はプロジェクト中止の声が出るほどの難題にもぶつかりました。こうした数々の危機を救ったのは、『技術者として解決してみせよう!』という研究所長の力強い一言と支援、『この商品を世に出したい』と願う研究所メンバーの強い思い、商品開発部門の粘り強い協力、そして、通常の商品の生産体制を維持しながら新製法の製造テストを24時間態勢で続けてくれた工場のメンバーの頑張りです。私自身、この技術を開発した者として、途中であきらめるわけにはいきませんでした。できないと思われたことに挑戦し、全員の力でやり遂げたことで、また一つ、自分たちが大きくなれた気がします。『キリンでしかつくれない飲料をつくるんだ!』という思いで、より一層団結し、挑戦しようとする気風が高まったように感じます」

  • 塩野研究員(中央)と飲料技術研究所のメンバー。後列左から2人目が出内所長。

  • 飲料工場での検証に取り組んだメンバー。プロジェクト中止の危機にも果敢に立ち向かい、懸命に課題解決に取り組みました。

  • 実用化に向けて、苦労をともにした工場のメンバー。一人ひとりの頑張りが「世界初」の商品を生み出しました。

キリンR&Dならではの自由な環境で、さらなる進化を目指す

2014年4月、これまでの4年以上にわたる努力が実を結び、「おいしさ」と「カフェインゼロ」を両立させた画期的な商品「キリン やさしさ生茶 カフェインゼロ」が発売されました。
「世界初という言葉も嬉しいですが、それ以上に、たくさんのお客様に喜んでいただける商品を生み出せたことが嬉しい」という塩野主任研究員は、キリンならではの仕事のやりがいを次のように語ります。

「キリンの研究開発は、一言でいえば『自由』です。新しい飲料カテゴリーをつくっていくという目標を達成するための意欲があれば、リーダーはバックアップしてくれますし、研究テーマも任せてもらえます。今回の研究を振り返っても、この技術が実用化できるか分からない段階で、本部長はテストプラントへの投資を認めてくれました。これほどの挑戦をさせてくれる会社は多くないと思うのです。それだけに責任も感じますが、存分に研究に打ち込めるのがうれしいですね。R&D本部や各事業会社には多様な人材が集まっていますから、キリングループ全体での連携も深めて、これからもお客様の日常を変えられるような技術や素材を開発していきたいです」

研究開発は、世の中の誰も知らないことをするから面白い。そう話す塩野主任研究員の目には、すでに次の目標が見えているようです。

記者会見で、完成した「キリン やさしさ生茶 カフェインゼロ」の商品を手に(2014年3月)

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