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[食領域]

細胞内へ移行する無毒性高分子粒子の合成法を開発

~プラス電荷を持った新しい重合開始剤※1を設計・開発~

  • 研究・技術

2018年5月25日

キリン株式会社

キリン株式会社(社長 磯崎功典)の基盤技術研究所(所長 出内桂二)は、東京大学大学院薬学系研究科、東北大学大学院薬学研究科、奈良先端科学技術大学院大学との共同研究で、混ぜるだけで細胞内へ移行し、その後も細胞分裂や細胞の分化を阻害することのない極めて低毒性の高分子粒子の合成法を開発しました。今回開発した高分子粒子の合成法は、新しい重合開始剤※1の設計・開発により実現したものです。今回の研究は、さまざまな高分子の合成にも活用できる可能性が考えられ、医療や創薬などを含めた幅広い分野での活用も期待されます。本研究成果は、2018年5月4日(金)に、Angewandte Chemie International Edition誌に掲載されました。

  • ※1 高分子の合成を開始する際に必要な化合物。重合反応の種類によって適切な開始剤の使い分けが必要となる。

一般的に、高分子が細胞内へ移行するには、その高分子表面がプラス電荷で覆われていることが有効とされています。さらに、水溶性の重合開始剤を使って合成した高分子粒子の多くは、表面構造が重合開始剤の性質を反映することも明らかになっています。本研究では、この2つの知見から、プラス電荷の部位を持った重合開始剤により、プラス電荷の部位で覆われた高分子粒子が合成できるのではないかと考えました。これまでプラス電荷の部位を持つ安定的な重合開始剤の報告はなく、今回、初めてプラス電荷の部位を持った重合開始剤の開発、その重合開始剤を使って表面がプラス電荷の高分子粒子の合成に成功しました。この技術を利用して合成した蛍光ナノゲルプローブ※2は、混ぜるだけで細胞に取り込まれ、細胞分裂や細胞の分化を阻害しない極めて毒性の低い高分子粒子であることから、これまで困難であった長期的でかつ細胞の分化を伴うような高度な培養などにも、本プローブは活用できる可能性があります。これまでも、キリンは、東京大学と共同で、細胞内温度を測定する蛍光高分子の開発を続けてきました※3が、今回開発した技術は、極めて低毒性という点で更なる価値があると言えます。

さらに、重合開始剤は高分子合成に必須の化合物であるため、今回新たに開発したプラス電荷の重合開始剤には、医薬や創薬はもちろん、それ以外の幅広い分野での活用可能性が期待されます。社会課題のひとつ「健康」に対してグループで取り組んでいるキリンは、本技術を活用いただけるパートナーも探索しながら、さらなる研究開発を進めていきます。

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