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KIRIN News Release

〜「第239回 American Chemical Society(アメリカ化学会)」で発表〜
ワインと魚介の組み合わせで発生する
生臭い「におい」への「鉄」の関与を解明


 メルシャン株式会社(本社:東京、社長:植木 宏)は、ワインと魚介の組み合わせにおける「生臭み」は「におい」であり、ワイン中の「鉄」が関与することを解明しました。
 なお、この研究成果「第239回 American Chemical Society Meeting (アメリカ化学会)」に採択され、同学会にて3月23日(火)に発表します。
  同時に、各部門から選択された演題だけが発表を行う「Sci-Mix」というセッションへも食品化学部門代表の一つとして選出され(98題の発表から28題が選出)、3月22日(月)にも発表する機会が与えられました。

▼研究の背景
 ワインと料理の組み合わせは、ワイン用語で「マリアージュ(結婚)」といわれ、ワインを楽しむための重要な要素といわれています。しかし、ワインと魚介料理を別々に口にしたときにはそれぞれがおいしく感じられるにもかかわらず、同時に口にした際にまれに不快な「生臭み」を感じることがあります。そのような組み合わせは、ワインと料理を楽しむことを避けてしまうひとつの原因であり課題とされています。
 当社は既に「生臭み」に影響を与えるワイン中の成分が「鉄」であることを特定し、2008年に発表(2008年9月10日ニュースリリースNO.08053参照)していますが、これまでの研究において官能評価は、実際に食べながら評価する方法で実施していました。この方法の特徴は、「味」と「におい」を同時に感じ、評価するものです。そのため「生臭い」知覚が、「味」に由来するのか「におい」に由来するのかは明らかではありませんでした。
 今回の研究では、これを明らかにするため、純粋な意味での「味」、つまり「味覚」により知覚されるもののみを評価する方法で官能評価を実施しました。

▼結果
 今回の研究では、純粋な意味での「味」、つまり「味覚」により知覚されるもののみを評価するため、ノーズクリップ(鼻をつまむ道具)を使用し、「におい」を遮断しながら、官能評価を実施しました。

 実際の実験では、生臭みを発生しやすい「ホタテ干物」と鉄を含有する「モデルワイン(水にアルコールと酒石酸を加えワインに見立てた試験用サンプル)」の組み合わせを、ノーズクリップを装着した状態としない状態の両方で官能評価を実施しました。
その結果、ノーズクリップで鼻腔を遮断し「におい」の影響をなくし、「味」だけで評価すると「生臭み」を感じなくなることがわかりました。一方で、鼻腔を開放し「におい」と「味」の両方で評価すると「生臭み」を感じることがわかりました。

図.「生臭み」は鼻を通って感

図.「生臭み」は鼻を通って感じる


 この結果により、ワイン中の「鉄」が魚介料理に作用して発生する「生臭み」は、鼻で感じている、つまり「におい」に起因していることが明らかになりました。
 またこの発見は、魚介料理に油脂を使用すると、「生臭み」成分が口中で拡散するのを抑制するため「生臭み」を感じなくなるという、2009年に発表した研究結果(2009年8月26日ニュースリリースNO.09044参照)を裏付けるものともなりました。

 2001年に開始した「ワインと魚介の組み合わせで発生する生臭み」に関する研究は、現在もメカニズムの解明に向けて継続していますが、これまで発表した研究成果は、業界や国を越えて注目を集めています。
 研究内容の一部をまとめ2009年に発表した論文「Iron is an essential cause of fishy aftertaste formation in wine and seafood pairing」は、「American Chemical Society(アメリカ化学会)」が発行する学会誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に掲載、さらに同学会が発行する34の学術誌などの中で、インパクトのある研究が毎週紹介され、2000部発行されているニュースリリース「ACS Press Pac(2009年10月21日号)」でも取り上げられました。
さらに分野を越えて、イギリスの経済誌「The Economist」(2009年10月31日-11月6日号)にも紹介されました。
 国内においても、研究の一部を2009年「日本ブドウ・ワイン学会」にて発表し、「大会発表賞」を受賞(2009年11月26日ニュースリリースNO.09055参照)しています。

 また、「甲州」ブドウからつくられるワインには統計的に「鉄」が少ないという調査報告があり、刺身や寿司など素材を活かす「和食と甲州ワイン」との相性の提案にも活かしたいと考えています。
 当社は、今後もこの研究をさらに進化させ、科学的根拠に基づいた、より明確で具体的な「ワインと料理のマリアージュ」の提案に活用し、お客様に“ワインのある豊かで潤いのある幸せな時間”を紹介していくことで、ワイン市場、食文化発展に貢献していきます。

【発表の概要】

◆発表演題名

 

「ワインと魚介料理の組み合わせにおける生臭い知覚発生の
一因としての鉄」
(Iron as an essential cause of fishy sensation in wine and seafood pairings)

◆学会名

「第239回アメリカ化学会」
(ACS (American Chemical Society) 239th National Meeting and Exposition)

◆学会開催期間

3月21日(日)〜25日(木)

◆発表日

3月23日(火)
※「Sci-Mix」セッション発表は3月22日(月)

◆発表場所

「モスコーニセンター」(米国 カリフォルニア州サンフランシスコ)
※同学会は、近隣の複数会場で開催

◆発表者

メルシャン株式会社 商品開発研究所
田村隆幸、谷口潔、鈴木由美子、大久保敏幸、高田良二、金野知典



以 上
2010年3月15日(リリースNO.10012)
 
【お問い合わせ先】
メルシャン お客様相談室 フリーダイヤル:0120-676-757
【キリンホームページ】
https://www.kirin.co.jp/