試合詳細レポート

2006

キリンチャレンジカップサッカー2006
8月9日 日本代表×トリニダード・トバゴ代表

2010年への第一歩は、新たな希望に満ちたものだった。イビチャ・オシム監督の初陣となる『キリンチャレンジカップ2006』が8月9日に国立競技場で行われ、日本代表はトリニダード・トバゴを2-0で退けたのである。
新生日本代表への期待感の高さは、早々とチケットが売り切れたことが示していた。心配された台風7号の影響も回避され、試合は予定どおり19時20分にキックオフされることとなった。もちろん、スタジアムは新たな船出を見守る観客で埋まっている。
日本の選手たちは、キックオフの直前まで誰が先発するかを知らされていなかったという。しかし、「どんな状況でも対応できるように準備をしていた」という田中隼麿(横浜FM)の言葉どおり、スムーズに試合へと入っていく。開始3分には長谷部誠(浦和)のスルーパスから田中達也(浦和)が右サイドを抜け出し、両チームを通じて最初のシュートを放った。
ここから日本は攻撃のペースをあげていく。6分、右ショートコーナーから我那覇和樹(川崎F)がシュートを放つが、DFにブロックされる。11分には田中達が左サイドでファウルを誘い、山瀬功治(横浜FM)の直接FKに坪井慶介(浦和)が飛び込む。
つかみかけている試合のペースを、一気に引き寄せたのは17分だ。三都主アレサンドロ(浦和)が直接FKを叩き込んだのである。このFKを呼んだのが闘莉王(浦和)の攻撃参加であり、彼と田中達、我那覇による素早いパス交換だった。「少ないボールタッチでボールを回していけ」というオシム監督の指示が、得点に結びついた場面だった。
22分の追加点も三都主があげた。鈴木啓太(浦和)が中盤でボールをキープし、相手のチェックをかいくぐって左サイドバックの駒野友一(広島)へ展開する。このときすでに、中盤左サイドの三都主はフリーラングを始めていた。駒野のロングフィードが相手CBの頭上を越えたとき、走り込んだ三都主はまったくのフリーだった。
こうなれば、彼がやるべきことは少ない。GKの動きを見極めた三都主は、左足のループシュートでゆったりとゴールネットを揺すったのである。
その後は追加点をあげることができなかったが、トリニダード・トバゴにもチャンスを与えずに前半を終えた。
やや停滞したムードを打破するために、オシム監督は後半開始直後から交代選手を投入する。56分、山瀬に代わって小林大悟(大宮)が送り出される。「ボールに触ってリズムを作っていけ」という指示だ。直後の58分、小林-田中達とつなぎ、ボールは右サイドの田中隼へ。ゴールライン際から供給されたマイナスのクロスを田中達がフリーで合わせたが、シュートはDFにブロックされてしまった。
さらに佐藤寿人(広島)、中村直志(名古屋)、坂田大輔(横浜FM)らが次々と投入され、いくつかのチャンスを作り出したものの、国立競技場に3度目の歓喜を呼び込むことはできなかった。
だからといって、後半のパフォーマンスが悪かったわけではない。「前半は日本のペースについていけなかったが、後半は自分たちのサッカーをすることができた」というビム・レイズベルヘン監督の言葉どおり、トリニダード・トバゴのパフォーマンスが向上したのも、ゲームが拮抗した理由である。
試合後のオシム監督も、及第点の評価を与えた。「トレーニング期間が限られていたにもかかわらず、3日間ではできるとは思えないようなコンビネーションもあった」と、ダイレクトやワンタッチの連続による崩しを賞賛した。一方で、課題を指摘することも忘れなかった。
「日本人のサッカーというものを考えた場合、日本人は外国人に比べて筋骨隆々ではないし、長身でもない。1対1の勝負では不利が出てくる。だから、相手よりもどれだけ多く走れるかで勝負しなければならない」
それでも、考えて走るサッカーを提唱するオシム監督の意図は、選手たちに少しずつ伝わっている。3日間のトレーニングは身体だけでなく頭も疲れるものだったが、選手たちからは「楽しい」という声が何度も聞かれた。昨日の自分よりも進歩していることを、実感できているのだ。「メンバーが若くなって、やってやろうという前向きな姿勢が出ている」と話したのは、この試合でゲームキャプテンを務めた川口能活(磐田)である。
いまはまだ、南アフリカの大地を視野にとらえることはできない。それでも今回の『キリンチャレンジカップ2006』で、我々の前途が希望に満ちていることははっきりした。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■8月9日 東京・国立競技場
日本代表 [2ー0] トリニダード・トバゴ代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) MF 三都主アレサンドロ
 2) DF 田中マルクス闘莉王
 3) DF 坪井慶介
 4) FW 我那覇和樹
 5) MF 長谷部誠
 6) GK 川口能活
 7) MF 駒野友一
 8) FW 田中達也
 9) MF 鈴木啓太
10) MF 山瀬功治
11) MF 田中隼磨
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) MF 三都主アレサンドロ
     2) DF 田中マルクス闘莉王
     3) DF 坪井慶介
     4) FW 我那覇和樹
     5) MF 長谷部誠
     6) GK 川口能活
     7) MF 駒野友一
     8) FW 田中達也
     9) MF 鈴木啓太
    10) MF 山瀬功治
    11) MF 田中隼磨

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> オシム

<出場選手>

■8月9日/東京・国立競技場
日本代表 (1) 2 <三都主> <三都主>
トリニダード・トバゴ代表 (0) 0
日本    
GK 川口
DF 坪井(栗原) 田中マルクス闘莉王
MF 三都主(坂田)  駒野 田中隼磨 長谷部(中村) 鈴木 山瀬(小林)
FW 我那覇(佐藤) 田中達也
トリニダード・トバゴ    
GK ウィリアムズ
DF ジョン C・グレー  チャールズ トーマス レオン
MF ワイズ A・ウルフ(ジャグデオシン) デービッド(バプティステ)
FW ノエル グラスゴー

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

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