[ページの先頭です。]

ページ内を移動するためのリンクです。

[ここから本文です。]

飲みものからくらしを考える

Vol.20 ユニークな時代を生きている幸せ
~山名清隆さんに聞く~

山名さんはPRを専門としており、国土交通省など行政の企画をとてもユニークな方法でPRをしています。どの企画にも人々が参加したくなるような様々な仕掛けがあり、人々は自然に巻き込まれ、知らず知らずのうちに大きな広がりとなっていきます。広がり大きくなっていくことで社会から注目され、メディアにも自然に取り上げられるようになるのです。まさに広告とPRの違いがここにあるように思います。このユニークな仕掛けを山名さんはどのように生み出していくのか、今回の取材ではそのことを伺ってみました。

日本愛妻家協会

彼の原点とも言える活動が日本愛妻家協会です。この活動は2004年に始まった、嬬恋のキャベツ畑で奥さんに愛を叫ぶというイベントです。このユニークな活動に多くの人が共感し、遠方からの参加者が増えただけでなく、東京の日比谷公園を始め全国各地の38箇所で行われるほどになりました。

妻に愛を叫ぶという突拍子もないように見えるこの企画、そこにはまず自分の「見栄、照れ、建前、世間体」を捨てることで今までの生き方を見直してみようという考えがあったそうです。日本人は愛情表現が下手だとも言われます。そこで主催者として考えた名前が「日本愛妻家協会」。本当に協会という組織があったわけではないそうですがこうしたユニークな名前をつけることもPR効果を生み出す工夫の一つです。今では毎年来る方も多く、中には三世代一緒にそろってくる方もいるとか。多くの人は自然と涙を流し、この日の出来事は忘れられない1日になるそうです。愛情表現が下手な日本人が大声で愛を叫ぶというこのイベントは、世界のニュースにも取り上げられています。海外からも取材されるほど有名になったこのイベント、日本中の様々な場所にどんどん増殖していきました。

日本愛妻家協会ホームページより
とてもユニークな宣言文

http://www.aisaika.org/index2.html

サブカル化する・ポップ化する・リズム化する

こうした企画を考える時、企画が世の中にどう登場するのか、登場の仕方に人一倍気を配るそうです。嬬恋のキャベツ畑で始めたとき、問い合わせ先が嬬恋村役場では面白みがありません。愛妻家協会と名付けることで企画の価値が変わります。さらに聞いただけで思わず顔がほころぶような「キャベツ畑で愛を叫ぶ」というような名コピーを生み出します。その結果、話題になりまさに「ネタ」になります。
活動を広げていくために、サブカル化する・ポップ化する・リズム化する、これら3つのポイントを重視しているとのことでした。自分の妻に愛していると照れなく言える社会にしていこうという真面目で、しかも大切なことを、こうした発想で楽しくイベント化していったのです。

山名さんが経営する株式会社スコップのホームページより

http://s-cop.jp/

それぞれの紹介の仕方にも山名さんらしい言い回しが感じられる

勝手に広がる

「東京スマートドライバー」という首都高速の安全運転キャンペーンについても聞いてみました。これは一年に一度安全運転をしようという呼びかけるイベントなのですが、このことを山名さんは、首都高速で安全に走れているのはドライバーのおかげである、こんなに難しい高速を事故なく走れているのはドライバーの運転意識の高さだと考えました。ドライバーに安全を訴えるのでなく、逆にドライバーを讃える日にしようと考えたのです。そこで、ロゴやシールを作り、安全運転をするドライバーを「東京スマートドライバー」と名付けました。褒めることでやさしいドライバーが増えるというこの発想。この活動も今では全国32箇所に広がり、○○スマートドライバーという名前で、全国同じロゴを使ってこのキャンペーンが行われるようになったのです。愛妻家協会もそうですが、自分で広げていったのでなく、勝手に広がっていったと表現される山名さん。山名さんが非凡な構想力の持ち主と言われる所以です。

東京スマートドライバーのホームページより

https://mdjack.maildealer.jp/f.php?c=4&s=8db2

行政がコミュニティデザインを考える

行政が主催する勉強会にもよく呼ばれるそうですが、そこでのテーマはコミュニティデザインです。行政が法律や制度で社会を整備するのでなく、対話の中で市民と一緒に様々なことを考えていく時代になったのだと感じるそうです。たしかに行政と市民、そこに企業も加わり自分たちの社会のあり方や公共空間をみんなで一緒に考えるという状況は今までにはなかったことでしょう。
国土交通省が推進する、水辺空間をもっと魅力的にしようという「ミズベリング」という活動があります。これも今では全国60を超える場所で展開するほどになっています。世界のどの都市でも人が集まる都市は、必ず公共空間が魅力的です。今、日本に必要なのは公共空間が美しく楽しいこと。その中でも特に水辺の使い道をもっと活発に考えることで、日本の風景は変わると考えました。このプロジェクトは規制緩和により水辺の空間を市民や民間が使えるようになったことを受けて始まった活動です。官僚と企業、市民というそれぞれの距離やヒエラルキーをどのようになくしていくかを考えた結果、「リバーサイドライフドリンクス」という、行政主導でなく堅苦しくないコミュニティをつくることから始めたと言います。この活動に様々な立場の人が参加しながら盛り上がったところで「ミズベリング」という正式な活動に変わっていきます。このように企画の登場の仕方は、その後の広がり方や行政と市民との距離を近づけていくためにも大切な要素になります。

ミズベリングのホームページより

https://mizbering.jp/

偶然を計画的につくる

紹介したいくつかのプロジェクト、一体どうしてこんなに人の心を掴むのでしょうか。人々のモチベーションを生み出すには、すべてを計画して決めてしまうのでなく、その時々で起こる変化を許容するような余地を作っていなければいけないそうです。逆説的ですが、偶然が生まれるために、あたかも計画していないかのように、緻密に計画をするのです。想像を超えるようなすばらしい偶然がおこるような仕掛けや、人々がそこに参加しているだけで気持ちよくなるような空気を丁寧に作っていきます。そして何より参加していることが時代の最先端の出来事であるような空気感も大事なのです。

最後に山名さんは今の時代を、「とても自由な、幸せな、ユニークな時代」だと言います。目の前には様々な社会課題はあるので短期的にみると不安になりがちですが、もう少し長い時間軸で見ればこれだけ創造性を期待された楽しい時代はいまだかつてなかったのです。新しいことを考え、今までと違う社会になるための活動を、皆が認めてくれる時代です。講演会では「ユニークな時代に生きているのだからもっとユニークなことをやっていい」と伝えるそうです。確かにそう思うだけで肩の荷がおりて幸せになります。
今回の山名さんの取材には、私たち企業の活動の中でも考えなければならない多くのヒントがあります。活動がどんどん広がっていく仕組み、参加する人が自分ごととしてプロジェクトを推進していくようになる組織の作り方、一見自由で無計画に見えるその裏側にある緻密な構想力による計画。卓越したPRを作る人の仕事の仕方の一端を見せていただいた取材でした。終始笑いの中で取材に協力してくれた山名さん。話しているだけで人の気持ちを楽しくさせていく包容力に多くの人が巻き込まれていくに違いありません。

プロフィール

プロフィール 山名清隆(やまな きよたか)
(株)スコップ代表取締役社長 / ソーシャルコンテンツプロデューサー
1960年静岡県菊川市生まれ。EXPO85日本政府館ディレクター、米国フードトレンド情報誌U.S.FOOD JOURNAL編集長、テレビ朝日「東京ソフトウォーズ」番組キャスターなどを経て、広報企画プロデュース会社(株)スコップを起業。公共広報・ソーシャルコンンテンツ領域で独自のプロジェクトを推進。愛妻の日を提唱する夫婦環境保全運動「日本愛妻家協会」やホメて首都高の事故を減らす「東京スマートドライバー計画」などユニークなソーシャルムーブメントを進めている。

画像提供:PHOTO BY MIKI CHISHAKI

[ここからフッタです。]

先頭へジャンプ