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飲みものからくらしを考える

Vol.17 心の成長とは視座を高めること
~西村勇哉さんに聞く〜

京都にある共創のプラットフォーム「ミラツク」の代表理事 西村勇哉さんにインタビューをしました。

創造的なコミュニティづくり

2008年、この活動を始めた時、彼は日本生産性本部にいました。彼の興味は企業の中でどうしたらよりよい仕事ができるのかということでした。企業の中で本領を発揮できない人たちが、自分の力を出し切ってよりよい仕事をしていくためにはどうしたらよいのか、そのことを企業の枠組みを外して実験してみたいと考えたそうです。そのために活動を始めるのですが会社から出された条件は3つ。会社の名前を使わないこと、広報宣伝をしないこと、利益を出さないことでした。このことが功を奏します。
まずダイアローグBARと名付けたイベントを定期的に行いました。内容は、ゲストスピーカーからその人の歩んできた道を聞いたあとで食事をするという、シンプルなものでした。イベントは徐々に盛り上がり多くの人が参加するようになったそうです。毎回30から100人、3年間で述べ1,500人の人が参加し、今では30,000人のネットワークに成長しました。ダイアローグBARで生まれたネットワークの中から、自然発生的なコラボレーションが起きるということも経験します。このような経験から、コラボレーションが起きやすいコミュニティには質の高いコミュニケーションが生まれる仕組みが必要で、そのためには多様な人がいること、特に構想を形にまたは具体的に表現するイノベーターがいることが大事だと気付き始めます。
そこで2011年7月、この取り組みをNPOとして法人化し、コラボレーションが起きる仕組みを本格的に研究し始めました。どのようにすれば創発的なコミュニケーションが起きる確率を上げられるかを調べるために、ディスカションの仕方やメンバーの構成を変えてみたり、イベントの頻度や時間を変えてみたり、実験を繰り返していきました。そうしていく中で、メンバーの数を100名に限定して濃密な関係を生み出すコミュニティづくりや、コミュニティの多様性を保つために毎年20名前後の人が入れ替わるシステムなど、現在のミラツクの運営方式が生まれてきました。こうしてミラツクは創造的なコミュニティのプラットフォームとして進化していったのです。

企業との取り組み

ミラツクの活動は創造的なコミュニティのプラットフォーム作りが大きな目的ですが、もうひとつ大事な活動があります。それは企業のプロジェクトについて共にフィールド調査を行う、リサーチ&イノベーションという活動です。リサーチ&イノベーションではミラツクのプラットフォームを活用し、企業の新しい事業やサービス、商品開発などの具体的なプロジェクトに取り組みます。常駐5名を含む12名のスタッフがおり、ミラツクを事業として成り立たせる生業ともなっています。

取り組みでは築いてきたコミュニティの人脈を使い、既にこれから行いたい事業領域にいる人からより正確な情報を聞いたり、イノベーターと呼ばれる人がどのように考えるかを聞いたりします。インタビューはメンバーを中心に、各領域のハブとなる人から様々な人を紹介してもらうことで実現しています。

企業のプロジェクトメンバーはインタビューに同席することも出来ます。インタビューによって浮かび上がる新たな視点や知識は、プロジェクトの完成度を高めます。そして知らないという領域への理解を高めていくことで、より大きな視点でプロジェクトを見渡せます。またインタビューをされる側も聞かれることで新たな気づきや創造的な行為に繋がることもあります。

人々の成長の仕組みを考える

もともとの課題意識であった、どのようしたら人々は能力を発揮し、よい成果を生み出していくのか、またその環境はどのように生まれていくのかということに、西村さんはミラツクの活動を通して答えを出しつつあります。
西村さんは大学院時代の研究から、人が成長するとは「心の成長の仕組み」を作ることと考えてきました。心の成長とは視座が高まることだとわかってきたのだそうです。そのためには知らないことを知っていくということや、価値観の異なる様々な人を受け入れていくことが重要です。居心地のよいコミュニティもイノベーションがおきる創発のコミュニティも、そこに心の視座が高まる仕組みがあったのです。パネルディスカッションなどで、これまで意識しなかった社会課題を深く知ることや、身近にプロジェクトを立ち上げて成功している人の姿をみることも刺激になります。さらにメンバーだけでなく業務を依頼する企業の人たちにもそのようなことが起きます。
メンバーと企業の双方におきる成長の仕組みを今強く実感しているのだそうです。リーダーの意識はスタッフの成長をいかに促せるかが大事なのです。そうすれば自然と高い成果を生み出すのです。
西村さんはこうした「成長の仕組み」をもっと広く展開したいと考えています。さらに、今までミラツクでやってきた創発をテーマとしたアプローチだけでなく、学びの仕組みや空間のあり方など他のアプローチでも考えているとも言います。壮大な構想はまだまだ発展しそうです。
今回の取材を通して感じることは、多くの組織は目的を新たな事業の創造におきがちですが、「心の成長」を目的にすることで、自然に創造的な成果が生まれるということです。そしてそのような場が居心地のよい場所になっていくということなのだという、西村さんの言葉が腑に落ちたような気がします。人々は誰もがよりよいものを生み出したいと思っているのです。ただそのための仕組みがうまく働いていないのです。西村さんの研究がより多くの人に伝わることで、社会全体が「人を成長」させていく環境になっていくでしょう。皆さんのご意見もお寄せください。

プロフィール

西村勇哉(にしむら・ゆうや)
1981年生まれ、NPO法人ミラツク代表理事
大阪大学大学院にて人間科学(Human Science)の修士を取得。人材育成企業、財団法人日本生産性本部を経て、2008年より開始したダイアログBARの活動を前身に2011年にNPO法人ミラツクを設立

ミラツクの紹介
ミラツクは、"既にある未来の可能性を実現する"をテーマに、異なるセクター、異なる地域、異なる職種など領域を超えた協力を生み出し、イノベーションを通じて社会進化が加速することに取り組みます。
ミラツクは、既にある未来の可能性を実践する国内外のネットワーク、コミュニティの協力を得ながら、現場のリアリティと俯瞰する目を行き来するリサーチ・分析を行うことで未来の潮流を掴み、共有し、共にアイデアを生み出し共に実行することを通じて、創造的で平和な社会の実現を目指します。
(サイトから転載)

画像提供:PHOTO BY MIKI CHISHAKI

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