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研究員がやってみました

Vol.3 「芝の家」での1日スタッフ体験

参加したきっかけ

今回は、港区にある地域交流の場「芝の家」に行ってきました。慶應義塾大学前野隆司さんのインタビューの際にも一度見学に行きましたが、今回は参加者でなく運営スタッフとして「芝の家」を1日体験しました。「芝の家」ではどのようにして人と人とのつながりが生まれているのか、場づくりのためにどのようなことが行われているのか、実際に1日スタッフを体験した研究員の安井が報告します。

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地域をつなぐ!交流の場づくりプロジェクト

「芝の家」は、港区と慶應義塾大学が協働で運営する「地域をつなぐ!交流の場づくりプロジェクト」として立ち上がりました。現代社会で見失いがちな、あたたかい人と人とのつながり・支えあいを再生することを目的としています。家の作りもマンションの1階を古民家風に改装して、子供からお年寄りまで様々な年代の方々が気軽にふらっと立ち寄れる場にしています。スタッフも10代から70代まで幅広い世代の方がいます。元々立ち寄っていただけの人が、その後ボランティアスタッフになることも多いとのことです。

運営側も自然体でいることが大切

チェックインの様子。お互い本音を出し合います。

芝の家では毎日オープン前に、当日の運営スタッフで「チェックイン」と呼ばれるミーティングを行います。チェックインではその日担当のスタッフがそれぞれ、自分の体調とその日一日どのように過ごしたいかを話します。通常このようなミーティングを行うと、自分がどのような状況であれポジティブなことを言わざるを得ない空気になりがちですが、チェックインでは建前は使わず本音をさらけ出します。例えば体調が万全でなければ、「今日は体調がすぐれないからあまり動けないと思います」と言ってもOKですし、イライラしていたり落ち込んでいたりしたら「今日はあまり積極的に人と話したい気分じゃないんです」と言ってもOKです。私自身、チェックインで「どのように振る舞えばよいかわからず、実はちょっと緊張しております…」と正直に話したところ、スタッフの方に「気を遣わずに自然体でいていいんだよ」と言ってもらったことで、すっと肩の力が抜けたように感じました。芝の家では来場者だけでなくスタッフも自分の過ごしたいように過ごせる環境を作ることを重視しています。チェックインでスタッフ同士がお互いの状態やその背景を共有することは、無理せず自然体でいるために重要なことだと感じました。

"ウチ"と"ソト"のあいまいさ

縁側でのコミュニケーションが頻繁に行われていました。

芝の家には初めての人でも気軽に入れるような仕掛けがされています。家の作りからして、窓を開けっ放しにしている縁側があるためオープンな雰囲気なのですが、それに加えてスタッフの心遣いが人々の心を開きます。芝の家の前でちょっと立ち止まっている人がいれば、スタッフが「こんにちは!」と中から声を掛けてくれます。その声掛けもやらされ感がなく、非常に自然な感じで声を掛けてくれるのが魅力的です。初めて来た人にはスタッフが丁寧に芝の家についての案内をし、既にいる人たちの話の輪の中に自然に入れてくれます。入ってみると皆が自然体で過ごしていて、居心地がよく、ついつい長居をしてしまうのです。この心地よさが常連さんを産み出しているとも言えそうです。私自身も初めて芝の家を訪れた時、芝の家のスタッフの自然なあいさつや態度によって心が開かれた感じがしました。家の作りとスタッフの心遣いが作る"ウチ"と"ソト"のあいまいさが、多様な人が次々と気軽に立ち寄れる場であることに大きく影響していそうです。

その場で起こることを楽しむ

それぞれが自由に過ごしながら楽しんでいました

芝の家では事前に実施するイベントが決まっている日もありますが、その場で自然に起こることも大切にしています。スタッフが「○○しましょう!」と言うよりは、来場者が自発的にやることを決め、必要とあらばサポートしていくイメージです。私が体験した日も、常連の方が牛乳パックを使った椅子づくりを始めたり、小学生が工作を始めたりと、スタッフ側から特に働きかけなくても各々が好きなように時間を過ごしていました。スタッフも自分がやりたい活動に一緒に参加しながら、盛り上げていました。何かを起こそうとするのでなく、その場その場を大切にしていくことで、自然と何かが起こる。このようなあり方が、参加者が自由に過ごせる雰囲気を後押ししていました。

気持ちを出し切る振り返り

振り返りの様子

17時にクローズして後片付けが終わった後、スタッフでの振り返りを行います。振り返りではスタッフそれぞれがその日一日で感じたこと、気づいたことを共有します。芝の家の振り返りで特徴的なのは、チェックイン同様自分の本音を出すことです。来場者もスタッフも居心地よく過ごせるように努めていても、運営しているとトラブルが起きたり、判断に迷ったり、困惑することも起きたりとスタッフに負担がかかることもあります。負担がかかった時はその気持ちをそのままにしておかず、振り返りの場で気持ちを他のスタッフに共有するのです。他のスタッフに話を聞いてもらうことによって気持ちをリセットし、困惑した気持ちを引きずらずに次回に臨むことができます。私はその日初めての経験でしたが、楽しかった半面、子供たちと長い時間を過ごすという慣れない経験が少し負担にもなりました。しかし、そう感じていたことを他のスタッフに話して聞いてもらうことで、気持ちがリセットできたのを感じました。スタッフそれぞれが自分の気持ちを話し、出し切ったら振り返りは終了です。

芝の家で感じたこと

心地よいコミュニティとは、参加する人がその人らしくいられる、すなわち自然体でいられるコミュニティだと思います。そうあるためには、運営側は何かを計画的に作るのではなく、その場で起きることを受け止め、見守っていくことが大切なのです。受け止め、見守っていく、このような姿勢でいるためには、まずは自分自身を受け入れ、自然体でいる必要がある。そのために、芝の家ではチェックイン・振り返りを行っているのです。自分のことを話していく中で、これまで気づいていなかった新たな自分に気づくこともあります。その気づきが自分の学び・成長にもなっている。成長していくことで、さらに人や場を受け入れられるようになっていく、という良い循環が起きているのでしょう。
日常の中で忘れがちな「自然体でいる」こと。決して簡単ではありませんが、毎日意識して過ごすことで心地よい環境・人間関係を作り出すことができるでしょう。

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