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環境活動・トピックス

2016年8月30日

遠野の里地里山の景色の中でのホップ畑の価値について有識者の皆様と対談しました

遠野の里地里山の景色と有識者の皆様の様子

キリンは、2014年から遠野のホップ畑において生きもの調査を開始し、ホップ畑が遠野の里地里山の景色の中で果たしている役割を明らかにする取り組みを進めてきました。3年目を迎える2016年7月に、有識者を招いて現場を確認していただいた後、ホップ畑の生態系についての感想と今後の取り組みについて忌憚のないご意見をいただきました。

対談者
  • 盛岡大学
    齋藤 宗勝 名誉教授
  • 東北学院大学
    平吹 喜彦 教授
  • 株式会社生態計画研究所
    小河原 孝生 所長
  • キリン株式会社 CSV推進部
    藤原 啓一郎
視察風景
写真

ホップ畑(左)と下草(中)と
防風林(右)

藤原遠野のホップ畑の生きもの調査も今年で3年目となりますが、今までの調査では、ホップ畑を守るために管理された防風林や適度に刈り取った下草といった組み合わせが、豊かな生態系を形作っていることが分かってきました。現地をご覧になってのご意見を伺えますか。

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盛岡大学
齋藤 宗勝 名誉教授

齋藤遠野は北上高地の中に位置していますが、この辺りは原生林的な自然はなく、いわゆる里山地帯であり、人の手が加わったことで出来上がった自然だと言えます。現地をざっと見たところ、ホップの圃場(ほじょう)内でみられる植物の種類数は周りの森などと比べて3分の1程度でしたが、これは耕作している場所としては普通の状態です。それよりも、ホップ畑の周りを見るとクリ、コナラ、アカマツを中心とした20mを超すような成長した林もありますし、スギの植林地や綺麗な小川が流れているなど、ホップ畑周辺を含めた全体としては豊かな自然が形作られていると思いました。

写真

東北学院大学
平吹 喜彦 教授

平吹私も同じような感想を持ちました。繰り返しになりますが、北上山地はすごく古い地層を持つ、懐の深い山地として知られていますが、山上になだらかな高原が広がる景観も大切な特徴のひとつです。遠野もそうであるように、かつては畑作や馬・牛の飼育が盛んで、日々の暮らしに森の恵みが欠かせなかったと同時に、一部は火を放って草原として利用されていたようです。
今日はホップ畑をご案内いただいて、防風を目的として、人が意識的にホップ畑の周りに「ふるさとの森」を残している、創っていることを教えていただき、感銘を受けました。高さ20mを超える落葉広葉樹から、わずか数cmの草本まで、多様な植物が生育していること知り、さまざまな花や果実も目にしました。たくさんの昆虫や鳥の来訪、相互のかかわりあいがあることも容易に想像できましたし、実際のところ、昨年までの調査で実態が把握されているようですね。・・・遠野でのホップづくりが、「ふるさとの森」としての防風林、それに隣接するオープンスペースとしてのホップ畑、そして両者の境界としての「林縁」という「地域の生物多様性を支える3タイプのハビタット」を創出している点に着目して、評価を進めることが大切だと思います。また、防風林の配置、植栽・伐採時の樹種選択、下刈りなどを長年にわたって続けてこられた地元の皆さんから、自然と上手に付き合うための知恵や技法、自然観などを学びたいですね。

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株式会社生態計画研究所
小河原 孝生 所長

小河原私も2014年にホップ畑の調査を始めた時に、やはり周りとセットとしてみることが大事だろうと想定すると共に、その中でホップ畑をどう生きものが活用しているかを示したいと調査をしてきました。

平吹昆虫や鳥が、ホップ畑とその周りをどのように利用しているのか、是非とも「見える化」していただきたいと思います。また、こうした里地里山の優れた自然環境、景観、文化を将来に繋ぐためには、「暮らしてゆくために必要となるお金を、ホップづくりで得ることができる」という経済システムをきっちりと回すことが不可欠です。それがあって初めて、生物多様性も守ってゆけるのだと思います。

ホップ畑の下草周辺を観察する様子

齋藤キリンがその経済システムの中で果たしている役割も大切だと思います。その意味で、50年を超える契約農家との関係を作ってきたことは重要です。

平吹山裾に位置する現地では、ホップ畑の一画が石囲いになっていました。この畑を作る時に、先人が大変な苦労をなさったことが想像できます。こうしたさまざまな営みの積み重ねの上に、今の里山の暮らし、景観があるのだと実感しました。

雑木林内を観察する様子

藤原自然と言うと、一般の方は「手つかずの自然」を想像される方も多いのですが、遠野の場合は、人が苦労をして作ってきた自然と言うことですね。

齋藤その通りです。ただ、もう少し隣接した森を手入れすると、さらに豊かな場所にできると思います。例えば、周りにある植林は少し間伐した方が良いと思われるところがあります。倒れてしまった木が放置されているところもありました。それほど広い面積でもないし、簡単にノコギリ程度で切れるような木ばかりなので、従業員の皆さんでも実行可能だと思います。

藤原キリンは工場水源の森林活動を活発にやってきたのですが、こういうところでの取り組みは思いつきませんでした。

ホップ畑周辺の水路を観察する様子

齋藤圃場の周りに流れていない水路があるのですが、あの辺りも草を刈るなどして水面を広げると生きものが増えると思います。あと、意外な程に外来種の草が生えてないのも特徴ですね。実は岩手県は牧草地が多く、外来種がたくさんみられる地域なのですが、遠野のホップ畑周辺はそれがない。人が余り入ってこないことが理由なのかも知れませんが、これは良い環境ですね。

小河原私たちの調査でも外来の昆虫は少なかったですね。

齋藤外来種が入っていない自然を守っていくと言う観点も大切だと思います。

防風林を観察する様子

藤原今日見て頂いた圃場は少し山側にあって、周りに防風林があるのですが、まったくの平地で田んぼの中にあるようなホップ畑も存在します。そういうところへのサジェスションはありますか?

齋藤実のなる木を植えて、鳥を増やすというのはどうでしょうか。防風林にはなりませんが、鳥の種類が増えれば害虫を食べるので畑にとっても悪くないと思います。蜜源植物を生やすことで蜂が来るようにしても、同じような効果が期待できます。

藤原今日のお話で、ホップ畑の周辺を含めた全体のシステムとして、ホップ畑には里地里山の価値があると言えそうですね。

小河原加えてこれからこの環境を維持向上させるためには、まずは植生図のようなものを作ってから、里山全体をマネジメントしていくのも1つの方向性であるというのがご提案だったと思います。

藤原今日は色々と貴重なお話をありがとうございました。

2015年の遠野ホップ畑生きもの調査結果の詳細はこちらから
http://www.kirin.co.jp/csv/eco/topics/2015/material_1130_01.html

先生方の略歴

盛岡大学 齋藤 宗勝 名誉教授
  • 1967年 東京教育大学農学部 卒業
  • 1967年 弘前大学教育学部助手
  • 1969年 東京教育大学理学部植物科研究生
  • 1971年 山本海苔研究所研究員
  • 1978年 東北女子大学家政学部助教授
  • 1989年 生活学園短期大学(盛岡大学短期大学部)助教授
  • 1992年 盛岡大学短期大学部教授
  • 2004年 盛岡大学短期大学部長
  • 2010年 盛岡大学栄養科学部学部長
  • 2014年 盛岡大学名誉教授
  • 現在に至る
東北学院大学 平吹 喜彦 教授
  • 1980年 東北大学理学部生物学科 卒業
  • 1981年 東北大学大学院理学研究科生物学専攻修士課程 退学
  • 1981年 宮城教育大学教育学部 助手(以降、助教授・教授)
  • 2005年 東北学院大学教養学部地域構想学科 教授
  • 現在に至る
株式会社生態計画研究所 小河原 孝生 所長
  • 1973年 大阪府立大学農学部卒、同年 大阪市環境保健局勤務
  • 1976年 社団法人大阪自然環境保全協会設立、常務理事就任
  • 1978年 財団法人日本野鳥の会勤務、計画担当部長を経て
  • 1991年 株式会社生態計画研究所設立、代表取締役所長就任
  • 2002年 NPO法人生態教育センター設立、理事長就任
  • 現在に至る

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