キリングループ環境ビジョン2050

ポジティブインパクトで、豊かな地球を

実現するための取り組み

気候危機、生物多様性の喪失の進行、プラスチックによる海洋汚染など地球規模の環境問題の深刻化を背景に、社会は大きな転換点を迎えています。キリングループのように水や農産物など自然の恵みに依存する産業は気候変動の影響を受けやすく、この課題の克服にいち早く着手する必要があります。
キリングループが2017年から行っているTCFD最終報告書に基づくシナリオ分析で、気候変動がもたらす農産物や水資源への影響の甚大さを把握し、自然資本への影響を抑えて持続可能な地球を次世代に渡すには、ネガティブインパクトを最小化し、ニュートラル化するだけでは足りないことが明らかとなりました。また、企業の環境施策も、自社で完結するものから、社会全体へポジティブな影響を与えられるものへと進化することが期待されてきています。
このような社会の要請に応えるために、今までの環境に関する統合的(holistic)な考え方をさらに発展させたのが、2020年に取締役会で審議・決議し、刷新した「キリングループ環境ビジョン2050」と、新たに加えた「ポジティブインパクト」アプローチです。
再生可能エネルギー電源については、世の中に追加し増やしていくことで社会の脱炭素化に貢献する「追加性」を重視しています。自らケミカルリサイクルの商業化技術開発に取り組むことで、「プラスチックが循環し続ける社会」の構築を目指します。自然資本については、事業の拡大が生態系の回復につながる「ネイチャー・ポジティブ」を目指します。
私たちはこの新しいビジョンの下、これからを担う若者と共に、こころ豊かな地球を次世代につなげていきます。

パフォーマンス・ハイライト(2022年に創出した環境価値)

キリングループは、2022年にTNFDフレームワークβ版v0.1で提唱されたLEAPアプローチによる試行的開示を世界に先駆けて行いました。23年3月には全世界から選ばれた4社の1社として、TNFDメンバーとともにシナリオ分析手法をテストするなど、自然資本の非財務情報開示では世界をリードしています。またGPIFの国内株式運用機関が選ぶ「優れたTCFD開示」において2年連続で最多得票数を獲得するなど、TCFDに準拠した開示でも継続的に高い評価をいただいています。
3年間を超える新型コロナウイルス感染拡大は、キリングループの環境課題解決の進捗にも大きな影響を与えました。スリランカでは厳しい外出規制が続き、トレーナーが農園に出向くことがほとんどできない状態が続きました。そんな中、唐突に政府から化学肥料や農薬の使用禁止が宣言され、また、その後に続くスリランカの経済破綻により、持続可能な農園認証取得支援や、農園内水源地保全活動は長い停滞を余儀なくされました。この困難な状況下でも、キリングループは認証取得支援を継続し、農園の茶葉栽培継続のためにレインフォレスト・アライアンスと現地のトレーナーたちは最大限の活動をしてくれました。WHOから新型コロナウイルス感染症の世界的な緊急事態の終了宣言を受けて活動を本格的に再開するとともに、小農園への新たな支援施策をレインフォレスト・アライアンスと協議し、今年中に発表する予定です。
2014年から継続している生態系調査により、長野県上田市のシャトー・メルシャン椀子ヴィンヤードが、遊休荒廃地から垣根・草生栽培に移行することで「ネイチャー・ポジティブ」を実現していることを科学的に示し、2022年のCOP15でも成果を発表しました。
新たな世界目標である「30by30」※1のOECMs※2に貢献するための手続きにも入っています。
容器包装におけるPETボトルへの再生樹脂使用比率は、2022年度には前年度に比べて約1.7倍となりました。ケミカルリサイクルの実用化計画も進捗しており、2027年50%の目標は十分達成できると考えています。既に日本国内の飲料事業で使用している紙容器はFSC認証紙100%となっており、PETボトルと併せて循環型社会の構築に貢献していきます。
2021年から23年前半にかけて、キリングループは工場への大規模太陽光発電の設置や工場での購入電力の再生可能エネルギー100%化施策を加速しています。2023年末までには、キリンビールの使用電力における再生可能エネルギー比率は43%になり、協和キリンではCO2排出量が2019年比53%削減となる見込みです。
新型コロナウイルス感染拡大からの経済回復によるエネルギー需要の増加、昨年2月からの地政学的な影響によるエネルギー価格高騰というリスクを機会に転換し、脱炭素社会をリードしていきます。

  1. 2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させるというゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標。2022年12月に開催された生物多様性条約締約国会議(CO P15)で新たな世界目標として採択。
  2. Other Effective A rea- ba se d Conservation Measures(その他の効果的な地域をベースとする手段)の頭文字をとったもので、国立公園などの保護地区ではない地域のうち、生物多様性を効果的にかつ長期的に保全しうる地域。30by30目標の数値目標達成に含むことができる。
  3. それぞれのパフォーマンスデータの集計範囲などについては、環境報告書2023年版のP4、P41~P75、およびESG Data Bookをご覧ください。https://www.kirinholdings.com/jp/investors/library/env_report/

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