[ページの先頭です。]

ページ内を移動するためのリンクです。

[ここから本文です。]

研究・技術開発成果

熟成させたホップに体脂肪を低減させる効果を発見。熟成ホップエキスの量産方法も確立し、実用化に道を開く

研究・技術開発レポート

肥満は、生活習慣病を引き起こす原因でもあり、世界的な社会課題の一つです。キリンの健康技術研究所は、その課題解決につながる新たな研究成果を生み出しました。ビールの原料であるホップを熟成させ、その過程で生じる「熟成ホップ由来苦味酸」に体脂肪を低減させる効果があることを解明したのです。さらに、この熟成ホップ由来苦味酸をさまざまな飲料や食品に利用できる「熟成ホップエキス」の開発にも成功しました。この世界初の研究成果は2017年のヨーロッパ醸造学会で発表されたほか、国内の学会でも大きな注目を集めています。

ビールの原料であるホップを熟成させ、その過程で生じる「熟成ホップ由来苦味酸」に体脂肪を低減させる効果があることを解明したのです。さらに、この熟成ホップ由来苦味酸をさまざまな飲料や食品に利用できる「熟成ホップエキス」の開発にも成功しました。この世界初の研究成果は2017年のヨーロッパ醸造学会で発表されたほか、国内の学会でも大きな注目を集めています。

なぜ「熟成」なのか

ホップには、さまざまな成分が含まれています。キリンはこれまでにも、こうしたホップ成分の健康機能性に着目し、アルツハイマー病予防効果、発がん抑制効果、骨密度低下抑制効果などを解明してきました。そして今回、発見したのが「熟成させたホップの苦味成分」の存在と機能性です。ここでいう熟成とは、酸化を指します。ビール醸造では新鮮なホップを使うのが通例で、なるべく酸化しないように管理しますが、今回あえて熟成したホップに着目したのは次の理由からです。
図1のように、新鮮なホップには「α酸」という苦味成分が含まれており、ビール醸造の過程で「イソα酸」に変化します。キリンは、このイソα酸に認知症を予防する効果があることや、肥満によって起こる認知機能低下を改善する効果があることを世界に先駆けて解明してきました。しかし、機能性は明らかになったものの、イソα酸は苦味が非常に強いため、飲料や食品の開発には課題もあります。

「苦味を抑え、かつ健康機能性をもつホップ成分を見つけ出せないだろうか」
そう考えた研究チームが着目したのが熟成したホップでした。古くから、熟成して酸化したホップでつくったビールは苦味がまろやかになることが知られていました。そこで熟成ホップに含まれる成分を調べたところ、新鮮なホップにはない未知の成分を発見したのです。これを「熟成ホップ由来苦味酸」と名付け、機能性を探求。体脂肪を低減させる効果があることがわかりました。イソα酸より苦くないこともわかり、新素材として量産化を目指す道が開けたのです。

図1 ホップ中の苦味成分と熟成によるメリット

「熟成ホップ由来苦味酸」の働きで脂肪が燃焼

熟成ホップ由来苦味酸の健康機能性を確かめるにあたり、肥満研究の第一人者である九州大学の小川佳宏教授にアドバイザーとして協力していただきました。脂肪には、一般に知られている白色脂肪組織のほかに、活性化すると脂肪を燃焼させる褐色脂肪組織があります。実験の結果、熟成ホップ由来苦味酸には褐色脂肪組織を活性化させる働きがあることがわかりました。

さらに、後述する新技術を用いて、効率的にホップを熟成させることに成功。この熟成ホップを水で抽出した「熟成ホップエキス」に体脂肪を低減させる効果があることをヒトで確認しました。実験では、20代から60代までの男女200人を2つのグループに分け、一方には熟成ホップエキス含有飲料を、一方にはプラセボ飲料を12週間、毎日1本(350mL)摂取。CTスキャンで内臓脂肪面積を測定し、体脂肪率も測ったところ、図2のように、熟成ホップエキス含有飲料を飲んだグループは内臓脂肪面積と体脂肪率が有意に低下していました。このことから、熟成ホップエキスに含まれる熟成ホップ由来苦味酸が脂肪を燃焼させ、体脂肪が低減したことがわかります。

図2 熟成ホップの体脂肪低減効果

図2-1:内臓脂肪のCTスキャン画像(左)と内臓脂肪面積測定結果(右)

第36回ヨーロッパ醸造学会 2017

引用文献:Nutrition Journal 2016, Volume 15, No.25

図2-2:体脂肪率測定結果

引用文献:Nutrition Journal 2016, Volume 15, No.25

熟成ホップエキスの量産を可能にした新技術

今回、熟成ホップエキスを開発するために研究チームが確立した「効率的にホップを熟成させる新技術」を「加熱熟成技術」といいます。従来の方法では、新鮮なホップを熟成させるためには常温(20℃)で約10カ月間放置しなければならず、膨大な時間が必要でした。そこで、60℃で効率よく加熱する技術を開発。熟成期間を従来の約100分の1(数日間)に短縮することに成功したのです。そして、さまざまな飲料や食品に展開できるよう、熟成ホップを水で抽出してエキス化しました。こうして、熟成ホップ由来苦味酸を含む新素材「熟成ホップエキス」の量産が可能になりました。

抽出した熟成ホップエキス

図3 量産により、飲料や食品への展開が可能に

熟成ホップの健康機能性をさらに探求

図4のように、今回の研究成果は3つのステージから成り立っています。体脂肪低減効果のある新素材「熟成ホップエキス」を用いた飲料や食品が商品化され、世の中に流通する日も遠くはないでしょう。

熟成ホップ由来苦味酸がどのようにして褐色脂肪組織を活性化させ、脂肪を燃焼させるのか、さらに詳細なメカニズムの研究も進行中です。ホップの健康機能性には未解明な部分が多く残されています。肥満をはじめ、さまざまな社会課題の解決につながる成果を生み出せるよう、今後も一層、ホップの機能性探求に力を注いでいきます。

図4 今回の研究成果

研究担当者からひとこと

山崎雄大(やまざき・たかひろ)

キリン(株)R&D本部 健康技術研究所 研究員

一つの研究成果が世に出るまでには、多くの先輩方による長年の蓄積があります。それを受けて、しっかりとした成果を出そうという気持ちで研究に取り組んでいます。ホップにはさまざまな成分が含まれていますが、その一つである苦味成分にこれほどの健康機能性があるとは想像以上でした。また、「太る」というイメージの強いビールに体脂肪を低減させる成分が含まれていることも驚きでした。海外の学会でも質問や取材が多く寄せられ、注目度の高さを実感しています。今後も新しい機能性や新しい商品を幅広く国内外に展開し、世の中に驚きを届けていきたいです。

[ここからフッタです。]

先頭へジャンプ