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KIRIN News Release

ノロウイルスをタンパク質存在下でも除去できる消毒剤の開発に成功
『ネコカリシウイルスをモデルとしたノロウイルスに対する消毒剤の開発』
〜 「日本食品工学会第10回(2009年度)年次大会」 にて発表 〜


 メルシャン株式会社(本社:東京、社長:植木 宏)は、ノロウイルスをタンパク質存在下でも除去できる消毒剤の開発に成功しました。この研究成果を、『ネコカリシウイルスをモデルとしたノロウイルスに対する消毒剤の開発』として「日本食品工学会第10回(2009年度)年次大会」(会期: 8月1日(土)、2日(日))で発表します。

▼研究の背景
 「ノロウイルス」の感染防止策として、患者からの吐物などのウイルスを含む汚染物の処理が重要であるとされていますが、ウイルス粒子の感染性を奪うには、次亜塩素酸ナトリウムで消毒するか、85℃以上の加熱が必要とされています。
 当社では既存の予防策よりもより安全さと使い易さを実現するため「エタノール」と食品添加物としても利用可能な「リン酸」の組み合わせによる新しい消毒剤の開発を行いました。
▼研究の概要
 一般に消毒剤のウイルス不活化効果の測定方法は、組織培養で純粋培養された、蛋白質をほとんど含まないウイルス液を用いて行われています。しかし、患者の吐物、下痢便などの蛋白質、炭水化物、粘液などに混在する大量のノロウイルスへの消毒効果を検証する為には、ウイルス液に蛋白質を加えて行うことが重要なため、蛋白質がおよぼす消毒効果への影響を、当社の開発した消毒剤と次亜塩素酸ナトリウムとで比較検討しました。
 今回「ノロウイルス」のモデルとして「ネコカリシウイルス(F9株)」を用い、感染価の測定はネコ腎臓細胞(CrFK)によるプラック法にて実施しました。試験サンプルと蛋白質(一般細菌用ブイヨン培地)を加えたウイルス液(蛋白質含量80mg/ml,40mg/ml,20mg/ml,0mg/ml)を等量混合し、1分間作用させた後、感染価の測定を行いました。
▼結果
1.0.02%のDEAE デキストランを加えたMEM寒天培地の細胞への重層法によりウイルス

グラフ
のプラックが形成され、2 日後に数えることができました。
2.20%〜80%濃度のエタノール単独では、ウイルス不活化効果が認められませんでした。
3.次亜塩素酸ナトリウムは200ppm以上の濃度でウイルス不活化効果が認められましたが、蛋白質の混入したウイルスに対 しては有効ではなく、高濃度の蛋白質を含むウイルスに対しては、1600ppm濃度の次亜塩素酸ナトリウムでも有効ではありませんでした。
4.当社の開発した消毒剤は、「エタノール」に「リン酸」を添加することで、60秒以内の短時間でウイルスを100万分の1以下に減少させる不活化効果を付与することができました。さらに、高濃度の蛋白質を加えたウイルスに対しても有効であり、1600ppm濃度の次亜塩素酸ナトリウムよりも高い不活化効果がありました。
▼考察
 単独では効果を有しない「エタノール」に「リン酸」を添加する事で強いウイルス不活化効果が得られた事は、安全で効力のある消毒剤として有用であると思われます。
さらに、高濃度の蛋白質存在下においてもその有効性に影響を受けることなく、ウイルスの消毒効果が認められました。
 また、「ネコカリシウイルス」の感染価の測定法は、現在公共試験機関、大学等ではTCID50(50%細胞変性効果)法で行われていますが、今回使用したプラック法は再現性に優れ、短期間に結果が得られることからTCID50 法より優れていると思われます。
▼商品化
 今回の開発結果を応用したサニテーション用アルコール製剤「エークイックPRO」を当社では8月24日(月)から全国で新発売します。

【発表の概要】
◆発表演題 『ネコカリシウイルスをモデルとしたノロウイルスに対する消毒剤の開発』
◆学会名 「日本食品工学会第10回(2009年度)年次大会」
◆発表日時 2009年8月1日(土)、2日(日)
◆発表場所 石川県立大学(石川県石川郡野々市町末松1丁目308番地)
◆演者名 メルシャン株式会社 小田秀樹、殿川隆志、石橋敦
NPO法人バイオメディカルサイエンス研究会(BMSA)中山幹男


以 上
2009年7月31日(リリースNO.09039)
 
【お問い合わせ先】
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